アルマゲドン




 『アルマゲドン』(Armageddon)は、1998年のアメリカ映画。タッチストーン・ピクチャーズ製作。

 あらすじ[編集]
20世紀末、宇宙空間で人工衛星を修理中のスペースシャトル「アトランティス」との交信が、唐突に途絶える。直前の映像を解析した結果、流星雨(Meteor shower)の直撃を受けたと判明。この流星雨は地球の大気圏を突破して、アメリカ東海岸からフィンランドに至る範囲に降り注ぎ、ニューヨークなどの都市に壊滅的打撃を与えた。さらなる調査によって、これはテキサス州の大きさに匹敵する小惑星が小惑星帯(Asteroid belt)へ衝突したことに伴うもので、しかも問題の小惑星は約18日後に地球へ直撃すると判明した。
NASA(アメリカ航空宇宙局)が立案した衝突を回避する唯一の手段は、小惑星の深部まで穴を掘り、内部で核爆弾を炸裂させて真っ二つに割り、軌道を変えるというものだった。この作戦を遂行するために「穴掘りのプロ」――すなわち石油採掘のスペシャリスト達が召集される。それは、大男のベアー、ギャンブル狂のチック、女狂いの天才ロックハウンド、大食漢のマックス、カウボーイ風の地質学者オスカー、ガールフレンドが2人いるフレディ、腕は立つが命令無視が多いA.J.、そして、彼らをまとめるハリーら、石油会社「スタンパー・オイル」の8人の社員たちである。そこに、ウィリアム・シャープ、ジェニファー・ワッツを始めとするNASAのクルー6人を加えた14人が計画に参加した。
NASAの計画は、新型スペースシャトル「フリーダム」「インディペンデンス」の2機を打ち上げ、途中ロシア宇宙庁の宇宙ステーション「ミール(Mir)」で液体酸素を補給、月の軌道で重力アシストを掛け、小惑星の後ろから接近するというものである。掘削用車両「アルマジロ」を用意し、ハリーたちはそれらを扱うための辛い訓練を乗り越えた後、チームを半分に分けて新型スペースシャトル2機に分乗し、小惑星へと向かうために飛び立った。
離陸こそ無事にできたものの、立ち寄った「ミール」が老朽化のせいで燃料漏れを起こし火災が発生、チームは危うく爆発に巻き込まれそうになりつつも脱出。「ミール」で単身勤務していたロシア人宇宙飛行士のレヴも加わり、手筈通りに月の軌道を通って小惑星の裏側へ回り込んで、着陸を試みる2機。ところが、小惑星を取り巻く大小の岩石が「インディペンデンス」に直撃して操縦不能に陥り、小惑星へ墜落。乗っていたNASAのクルーや、フレディ、オスカーたちを喪うも、A.J.とレヴ、ベアーは生き残り、「アルマジロ」を駆ってハリーたちの元へと急いだ。
一方、一応は着陸に成功した「フリーダム」だったが、そこは当初の予定とは異なる硬い酸化鉄の地盤の上であり、掘削作業は難航。掘削ドリルも1本を残しすべて破損してしまう。途中、アメリカ大統領が作戦に見切りをつけて核爆弾の時限起爆装置を起動させるも、地上にいたNASAのスタッフやハリーたちの抵抗[4]によって地表での爆発を阻止できた。
最後のドリルを用いて掘削を進める「フリーダム」搭載の「アルマジロ」。されど、小惑星の地殻変動によるガス噴出で吹き飛ばされ、操縦席にいたマックス諸共爆発炎上してしまう。万事休すと思われたその時、A.J.たちの乗った「インディペンデンス」搭載の「アルマジロ」が合流し、作業を再開。掘削の穴はどうにか小惑星の中心にまで達し、核爆弾を設置。後は遠隔操作で起爆させるだけという段階まで来たのだが、地殻変動によって岩石が降り注ぎ、リモコンが壊れてしまう。
遠隔操作ができなくなった今、誰かが手動で起爆させなければならない。くじ引きの結果A.J.がその役を担うこととなるも、「フリーダム」から出る直前、見送りに来たハリーがA.J.の宇宙服に傷を負わせて無理矢理役目を代わり、彼を船内へ戻させた。起爆の準備を進めるハリーを尻目に小惑星からの離陸を試みる「フリーダム」だが、硬着陸や地殻変動の影響によるものかエンジンが起動しなくなっていた。それでも、レヴが「ロシア式の修理」と称して機械を叩いて直し、辛くも離脱に成功。そして、「フリーダム」が小惑星から無事離れたことを確認したハリーは、愛娘グレースに思いを馳せながら起爆スイッチを押す。斯くして、小惑星は大気圏突入前に割られて軌道が変わり、地球滅亡の危機は寸前で回避された。




      登場人物
 主要人物

 ハリー・スタンパー
 石油会社「スタンパー・オイル」の三代目社長。12歳の頃から石油採掘の現場で働き続け、その道では超一流の腕前を持つ。採掘の腕もさることながら、高い統率力とカリスマ性でチームを引っ張るリーダー的存在だが、A.J.が娘と交際していると気づいた時には激昂してショットガンで追いかけ回すなど、無茶苦茶な一面がある。「掘削は科学であり芸術だ」という考えを持っており、世界最高の石油採掘人と呼ばれているが、「自分は未熟であり自分が生きているのは腕のいい部下に恵まれているからだ」という謙虚さも併せ持つ。
チックによれば、昔はA.J.のようだったという。
A.J.フロスト
ハリーの部下。若さ故の自信過剰から、自分の勘だけを頼りに行動しスタンドプレイに走ることもあるが、誰もが認めるほどの素質と才能を持つ。ことあるごとにハリーに反発していたが、内心では彼を深く尊敬している。
ハリーには内緒で、彼の娘グレースと交際しているが、ばれてしまい、散弾銃で撃たれながら追い回された。
A.J.はファーストネームとミドルネームの略だと思われる[5]が、何の略かは公表されておらず、劇中でも「A.J.」の名で呼ばれている。

 グレース・スタンパー
 ハリーの娘でA.J.の恋人。ハリーからは結婚を反対されている。両親の離婚によって幼少期から母親を知らずに育ち、回りが屈強な男だらけという環境で育ったことに対する反感からか、父親のハリーを「パパ」とは呼ばず、「ハリー」と呼び捨てている。


 石油掘削員[編集]
 “チック”チャールズ・チャップル
 ハリーの右腕的存在で、20年の付き合いになる優秀なエンジニア。6年間、空軍の特殊部隊に所属していた経験がある。
 ギャンブルが趣味で、それが災いしたのか妻や息子と別居しており、息子はチックの顔を知らずに育っている。

 ロックハウンド
 女たらしのキザな男。天才を自称するほどの頭脳を持つ地質学者。12歳でウェスティングハウス賞を受賞しており、19歳で論文を出版、22歳の時にはMIT(マサチューセッツ工科大学)で地質学と化学で博士号を取得という輝かしい実績を持つ。大学教授職にも就けたのだが、自分の頭脳を現場で活かしたかったことと、爆発物を扱えるという理由から石油採掘業に携わっているという。だがそれだけに、キレて常軌を逸した行動をする危険性も秘めている。

 ジャイティス・カーリーン
 通称「ベアー」。サウスダコタ州で大型バイクを走らせるのが趣味の屈強で大柄な黒人。非常に涙もろい。ハリーとの付き合いは10年。
身体検査の際、中性脂肪とコレステロール値が共に異常なほど高いために医者から注意を受けた。

 オスカー・チョイ
 カウボーイを気取る陽気なテキサス男。エル・パソの郊外に牧場を所有している。浮世離れした風貌だが、地質学に豊富な知識を持つ。小惑星破壊計画を聞いた際には、一同の中で「こいつは男の仕事だ」と誰よりも乗り気だった。「インディペンデンス」墜落時に死亡する。

 マックス・レンナート
 通称「ドリラーマックス」。肥満気味な青年。マザコンの気があるのか、登場時には腕に「愛しいママ」というタトゥーを彫っていた。ドーナッツと、スコットランドの伝統料理ハギスが大好物。
 「フリーダム」搭載の「アルマジロ」で掘削を行っていたが、地殻変動によってガスが噴出する際に逃げ遅れ、爆死してしまう。

 フレディ・ヌーナン
 採掘メンバーの一人。喧嘩っ早い性格の人物として描かれている。登場場面が少ないため、詳細は不明だが、「インディペンデンス」墜落時にオスカーと共に死亡。ラストの結婚式のシーンでは左端に殉職者として写真が掲げられている。
NASA関係者[編集]

 ダン・トルーマン
 NASA総指揮官。強い意志の持ち主で、大統領命令や軍の圧力に屈することなくハリーたちをサポートする。若い頃は宇宙飛行士の候補生を目指していたが、足に障害があったため技術部に行くしかなかったという過去があり、飛行士への憧れは現在でも薄れていない。

 ロナルド・クインシー
 NASAに属する宇宙物理学の天才。小惑星対策会議の席で「小惑星に穴を掘り、核爆弾を埋め込んで爆破する」という案を出した張本人。大統領科学顧問とは同じ学校(MIT)の同期生という間柄だが、本人曰く「宇宙物理学に関しては自分が優等生で、顧問は劣等生」とのこと。

 ウォルター・クラーク
 NASA幹部職員で、トルーマンの部下。
 キムジーらの手で時限起爆装置が起動させられた際には、コンソールを介してカウントダウンの一時停止コマンドを送り、妨害する。結局は発覚と共に席を外され、コマンドも取り消されたが、時間稼ぎにはなった。


 アメリカ合衆国政府[編集]
 アメリカ合衆国大統領
 クインシー曰く「宇宙物理学の劣等生」である大統領科学顧問の案を鵜呑みにし、トルーマンら現場の反対を押し切ってキムジーに核爆弾の起爆を命じるなど、頑迷な人物として描かれている。

 キムジー将軍
 アメリカ空軍総司令官。トルーマン達に大統領顧問が出した小惑星に対する核ミサイル攻撃案を提出するが、却下される。ハリー達をゴロツキ扱いしており、当初から好感を持ってはいなかった。楽観的な考えはしない人物だが、軍人故か大統領に対して忠実すぎる一面もある。


 スペースシャトルX-71型「フリーダム」乗組員[編集]

 ウィリアム・シャープ大佐
 機長。宇宙飛行のプロだが掘削には疎く、空軍が作成した「掘削予定カード」を鵜呑みにするような部分もある。また、アメリカ空軍所属であるからか少々ドライな一面もあり、それらのことから当初はハリーとしばしば対立していたが、徐々に彼を信頼し、協力するようになる。娘が2人いる。

 ジェニファー・ワッツ
 副操縦士。ロックハウンドやベアーの認める「いい女」だが、男勝りな性格。

 グルーバー
 乗組員。小惑星に埋め込んで遠隔操作により爆発させる核爆弾の担当要員。


スペースシャトルX-71型「インディペンデンス」乗組員[編集]

 デイビス

 機長。
 タッカー
 副操縦士。
 ハルジー
 乗組員。核爆弾担当要員。
 ロシア宇宙庁[編集]

 レヴ・アンドロボフ大佐
 ロシアの宇宙ステーション「ミール」に単独で18カ月滞在中のロシア人宇宙飛行士。爆発事故に際して「インディペンデンス」へ避難し、以後は他の乗組員たちと行動を共にする。
 自分の一族きっての天才である叔父を尊敬しており、それ故彼の写真に他人が手を触れることすら嫌がる。ちなみに本人曰く、叔父の功績は「核ミサイルの弾頭にある、ニューヨークやワシントンを探知する装置を開発した」とのこと。

その他[編集]

 グラップ・スタンパー
 ハリーの父親。ハリーの先代の社長だったが、現在は現役を退き療養生活を送っている。しかし、本人は自分はいつでも現場に戻れると語っている。
劇場公開の際には登場シーンがカットされたが、後に2002年6月15日フジテレビ系『ゴールデンシアター』にて未公開シーンとして放送された。小説版にも同様の形で登場している。

 カール
 地球に衝突する小惑星の第一発見者。元海軍という経歴の天体観測マニアで、妻ドティに対しては亭主関白気味。
NASAに小惑星について通報した折、小惑星の発見者権限で名前を妻と同じく「ドティ」と命名する。その理由として「最低のクソ女だ。誰も逃げられない」と続けて本人に呆れられたが、本当に採用された模様(小惑星のことは当初トップシークレットになっていたが、機密扱いが解かれ公表されたことを知らせるダン・トルーマン宛ての携帯メールに「ドティが公になった(Dottie has gone public)」と書かれていた)。




 スタッフ

  監督:マイケル・ベイ
  製作総指揮:ジョナサン・ヘンズリー、ジム・ヴァン・ウィック、チャド・オーマン
  製作:ジェリー・ブラッカイマー、ゲイル・アン・ハード、マイケル・ベイ
  原案:ロバート・ロイ・プール、ジョナサン・ヘンズリー
  脚本:ジョナサン・ヘンズリー、J・J・エイブラムス
  編集:マーク・ゴールドブラット、クリス・レベンゾン、グレン・スキャントルベリー
  衣装:マイケル・カプラン、マガーリ・ギダッシ
  主題歌:Aerosmith「I DON'T WANT TO MISS A THING」
  音楽:トレヴァー・ラビン
  ミキシング:ジョージ・マッセンバーグ
  視覚効果:フレームストアCFC
  視覚効果:ティペット・スタジオ

 『ツイスター』(1996年)で、久々にパニック映画がヒットした事を受けて、企画された映画の一つ。このため、設定の似た映画『ディープ・インパクト』が、2カ月前に全米公開されている。この2作品の設定・物語の一致は、アメリカの映画作りのシステムに原因がある。アメリカ映画では、1つの映画作品に20〜30人の脚本家が関わるという制作方法をとるため、同じアイデアをもとにして別々の映画会社でそれぞれが製作が開始された。他の仕事を抱える中、本作の制作を任されたベイ監督は16週間という短期間で撮影を行い作品を完成させた。慌ただしい中、限られた期間で制作を行わざるをえなかった事について、映画ファンに弁明を述べている。撮影では、NASAからの直接的な支援を受けている。[9]
 『ディープ・インパクト』は彗星衝突という「シチュエーション」を前面に出した作品となっているが、それと比較すると本作はショットの切り替わりの頻繁なカメラワークなどに見られるように「キャラクター」を前面に押し出したアクション中心の作品と言え、科学的考証は二の次にされている(例えば、質量がせいぜい地球の千分の一程度の天体なのに地球と同じような重力下の歩行、その割には人間が持ち運べる程度の核爆弾で分裂破壊できる、着陸に失敗して破壊したスペースシャトルの残骸から炎が出ている、地球と同じ程度の太陽からの距離なのに極めて暗い、など)。