ガンジー_1982年


 『ガンジー』(Gandhi)は、1982年公開のイギリスとインドとの合作映画。製作会社はコロンビア映画で、監督はリチャード・アッテンボロー。脚本はジョン・ブライリー。第55回アカデミー賞作品賞受賞作品。上映時間188分。




    概要

 弁護士で宗教家であり、イギリス領インド帝国の独立運動を率いた1人であり、「インド独立の父」として知られるマハトマ・ガンディーの青年時代から暗殺までを描いた歴史映画。
 初めて映画に出演したインド人の血を引くイギリス人俳優のベン・キングズレーが、極限までガンディーの外見と仕草を模倣し、アカデミー主演男優賞を初め、数多くの映画賞を受賞したことが大きな話題を呼んだ。
 また、動員したエキストラは30万人を超え、1つの映画作品に動員したエキストラの最多記録としてギネス・ワールド・レコーズに認定された。



         あらすじ

 1983年のイギリス領南アフリカ。列車の一等車に乗っていたイギリス領インド人の青年弁護士ガンジーは、被差別人種である有色人種であるがゆえに三等車に移るように白人の係員に指示されたものの、それを拒否したために列車から放り出されてしまう。イギリス連邦の一員でありながら不当な差別を行う白人政府に憤ったガンジーは、有力者のカーンたちと協力して抗議活動を行い、有色人種が所有を義務付けられていた身分証を焼却して逮捕される。逮捕されたものの、無抵抗だったガンジーに対して警察が暴力を振るったことに抗議の声が挙がり、ガンジーは釈放される。釈放後、ガンジーは人種・宗教の垣根を超えたアーシュラム共同農園を作り、イギリスの人種政策に対抗する。ガンジーの元には牧師のアンドリューや記者のウォーカーが集まり、運動は拡大していく。ガンジーは南アフリカ政府が新たに制定した人種政策を拒否するための集会を開き、有色人種を不当に酷使する農場で抗議デモを実施するが、暴動を起こした罪で再び逮捕されてしまう。しかし、ガンジーの活動に注目が集まり抗議の声も高まっていたため、人種政策を制定したスマッツ将軍は政策を撤回し、ガンジーを釈放する。釈放されたガンジーは故郷インドに帰国して民衆から歓迎され、インド独立を目指すインド国民会議に迎え入れられる。
 ガンジーは知見を広めるためインド全土を旅し、やがてイギリスの暴力に対抗するために非暴力を掲げて抵抗を開始する。イギリス政府はガンジーを数度に渡り逮捕するが、その都度民衆や新聞の猛抗議を受け彼を釈放する。勢い付いた民衆は各地で集会を開き非暴力運動を呼びかけるが、イギリス軍のダイヤー将軍は集会を排除するために民衆を虐殺し、アムリットサル事件を引き起こす。ガンジーたち国民会議のメンバーは総督と会談してイギリスからの独立を目指す考えを伝えるが、インド政府高官たちは彼らの宣言を真に受けようとはしなかった。ガンジーはウッド新総督就任を狙いインド全土でゼネストを呼びかけ、インド政府を混乱させる。ウッドは抵抗運動を弾圧し、怒り狂った民衆が暴動を起こして警官を殺害する事件が発生する。ショックを受けたガンジーは抵抗運動を止めるように訴え、断食を実施する。衰弱するガンジーを見たネルーたち国民会議のメンバーは抵抗運動の中止を指示し、ゼネストは終結した。
 1930年、ガンジーは十数年振りにウォーカーと再会し、新たな抵抗運動として塩の行進を決行する。ガンジーは塩の専売権をイギリスから取り戻し、インドの独立を訴える。直後にガンジーは逮捕されるが、残された民衆は塩を作り続け、再び非暴力運動を展開していく。第二次世界大戦が勃発すると、ガンジーは反英運動を理由に逮捕され、収監先の刑務所で妻カストゥルバと死別する。戦争の終結後、イギリスはインドの独立を承認し、最後の総督としてマウントバッテンが赴任する。国民会議のメンバーはマウントバッテンと独立に向けた交渉を始めるが、インドでは少数派であるムスリムの権利が侵されることを危惧したジンナーは、インドとは別のムスリム国家の樹立を模索する。宗教対立を望まないガンジーは、ジンナーを独立インドの初代首相としたムスリム内閣を提案するが物別れに終わり、イギリス領インドは「インド」と「パキスタン」それぞれ別の国家として独立した。
 インドが分裂したことを嘆くガンジーは、それぞれの国家に取り残されたヒンドゥー教徒、ムスリムが迫害を受け、その報復として互いが殺し合う姿を見てさらに衝撃を受ける。宗教対立を止めるように訴えたものの、民衆は怒りからガンジーの言葉を聞き入れようとせず、彼を裏切者として弾劾する。ガンジーは対立を止めようと再び断食を行うが、老齢の彼は次第に衰弱していく。首相となったネルーはガンジーを助けるため奔走し、民衆もガンジーの姿を見て我に返り、暴動は鎮静化する。インドが落ち着きを取り戻した頃、ガンジーは夕べの祈りに出かけ民衆と触れ合うが、彼を敵視するヒンドゥー原理主義者ゴードセーに射殺される。ガンジーの国葬が執り行われ、インド全土から民衆が駆け付け、各国の要人も弔意を示す中、ガンジーの遺体は火葬され、遺灰はガンジス川にまかれた。



    スタッフ

 監督・製作:リチャード・アッテンボロー
 製作総指揮:マイケル・スタンレー・エヴァンス
 脚本:ジョン・ブライリー
 撮影:ビリー・ウィリアムズ、ロニー・テイラー
 SFX:デヴィッド・ハサウェイ
 音楽:ラヴィ・シャンカール
 編曲:ジョージ・フェントン
 美術:スチュアート・クレイグ





    キャスト

 マハトマ・ガンジー  ベン・キングズレー 井上倫宏 寺田農
 カストゥルバ・ガンジー(英語版)  ロヒニ・ハタンガディ
 ジャワハルラール・ネルー  ロシャン・セス 水野龍司 津嘉山正種
 パテル  サイード・ジャフリー 楠見尚己 富田耕生
 ムハンマド・アリー・ジンナー  アリク・パダムゼ 津田英三 小林勝彦
 マーガレット・バーク=ホワイト  キャンディス・バーゲン 泉裕子 鈴木弘子
 レジナルド・ダイヤー(英語版) エドワード・フォックス 稲葉実 麦人
 アーウィン卿エドワード・ウッド総督ン・ギールグッド 大木民夫 中庸助
 ブルームフィールド判事  トレヴァー・ハワード 有本欽隆 上田敏也
 フレデリック・セシジャー総督  ジョン・ミルズ 浦山迅 石森達幸
 ヴィンス・ウォーカー  マーティン・シーン 堀内賢雄 西村知道
 アンドリュー牧師(英語版)  イアン・チャールソン 小川真司
 コリンズ  リチャード・グリフィス
 コリン  ダニエル・デイ=ルイス 大久保利洋

 役不明又はその他
 屋良有作
 幸田直子
 有馬瑞香
 小林清志
 池田勝
 松村彦次郎
 峰恵研
 玄田哲章
 村松康雄
 柳沢紀男
 藤本譲
 伊井篤史
 竹口安芸子
 大滝進矢
 小室正幸

 翻訳  高間俊子 宇津木道子
 演出  安江誠 小林守夫
 調整  丹波晴道
 効果  遠藤堯雄
     桜井俊哉
 制作  東北新社



 受賞・ノミネート

 第55回アカデミー賞
 受賞:作品賞、監督賞、主演男優賞、脚本賞、撮影賞、美術監督・装置賞、衣装デザイン賞、編集賞
 ノミネート:作曲賞、メイクアップ賞、音響賞
 第40回ゴールデングローブ賞 外国映画賞、監督賞、ドラマ部門男優賞、脚本賞、新人賞
 第36回英国アカデミー賞
 受賞:作品賞、監督賞、主演男優賞、助演女優賞、新人賞
 ノミネート:助演男優賞、脚本賞、撮影賞、作曲賞
 第48回ニューヨーク映画批評家協会賞 作品賞、男優賞
 第8回ロサンゼルス映画批評家協会賞 主演男優賞