借りぐらしのアリエッチィ





 『借りぐらしのアリエッティ』(かりぐらしのアリエッティ、英:The Borrower Arrietty、北米:The Secret World of Arrietty[2])は、スタジオジブリ制作の日本のアニメーション映画。監督は本作が初監督作品となる米林宏昌が務める。2010年7月17日公開。
 キャッチコピーは『人間に見られてはいけない。』『それが床下の小人たちの掟だった。』

 メアリー・ノートンのファンタジー小説『床下の小人たち』(en:The Borrowers)が原作となっている[3]。この作品は1952年に出版され、この年のカーネギー賞を受賞している。
 元々は、約40年前にアニメーション監督の宮崎駿と高畑勲によって考えられた企画であり、2008年初夏になって宮崎駿によって改めて企画された。当初は『小さなアリエッティ』という題であった[4]。監督に米林宏昌が起用されたのはプロデューサーの鈴木敏夫の提案である[4]。
 翔の声は、キャラクターデザインの段階から神木隆之介に依頼する予定であった。そのため、作画スタッフは作画ルームにも神木のポスター等を貼り、動作・表情の研究をしたとされ、神木は翔の声だけでなく、翔のキャラクター自体のモデルとなっている。
 本作に登場する和洋折衷の屋敷や庭園は、2008年11月12日にスタジオジブリの社員旅行[5]で訪問した青森県平川市の盛美園がモデルとなった[6]。宮崎駿によれば屋敷の所在地は東京都小金井市の辺りという設定である[4]。




       あらすじ

 14歳の小人の少女・アリエッティは両親と3人、人間に見られてはいけないという掟の下、郊外にある古い屋敷の床下で人間の生活品を「借り」ながら密かに慎ましく暮らしていた。
 彼女が初めての「借り」を夜に控えたある日、人間の少年・翔が療養のため静かなこの屋敷へやってきた。その夜の借りで翔に見つかり、戦利品の角砂糖も逃げる時にうっかり取り落としてしまう。一度、翔の出方をみることにした父・ポッドと彼女だったが、母と大叔母から小人の話をよく聞かされていた翔は3人との接触を試みるようになる。
 これに対しアリエッティは独断で動き網戸越しに気取られてしまうが、家族の安全のため、自分達小人と関わらないよう頼む。そこへイタズラ者のカラスが乱入して、この騒動で家政婦のハルは翔を怪しむようになる。その夜、翔は部屋の寝室にあるドールハウスは翔の曽祖父がこの屋敷に住んでいる小人達への贈り物として造らせた物だと知る。
 一方引越し先を探しに行っていたポッドはスピラーの助けにより無事帰り、スピラーから引越し先のアテやアリエッティ達以外にも小人達が無事でいるとの報せを得る。ポッドは、生き延びるために家人に見つかったこの家から去る決意を語る。その時彼女らの家は揺れ、歪み、見慣れたキッチンは剥がれ、換わりにドールハウスのキッチンが降って来た。全て翔の善意によるものだったが結果として引越しは確定的となってしまう。
 別れを告げるため、庭で休む翔の前に隠れることなく現れたアリエッティ。そんな彼女に憎まれ口を叩いてしまう翔だったが、守りたかったがための自分の行いが結果として彼女の住処を壊してしまったことを詫びる。さらに自分は心臓の病で手術を受けるのだが、きっと死ぬのだろうと彼女に告げる。その時、翔の動向を窺っていたハルはついに小人の住処を発見し、アリエッティの母・ホミリーを誘拐すると、瓶の中に閉じ込めてしまう。部屋に戻った翔はハルによって知らぬ間に閉じ込められてしまうが、そこへ現れたアリエッティにホミリーがいなくなったことを告げられる。悲しむアリエッティに、翔は共にホミリーを探すことを提案する。部屋から脱出して台所へ来た2人は、ホミリーを救出することに成功する。
 その日の夜、アリエッティと両親はスピラーとの待ち合わせ場所である川へ向かう。明け方、飼い猫のニーヤの知らせでアリエッティが川にいることを知った翔は、川へと急ぐ。一方、ようやく川に到着したアリエッティ達は、スピラーと共に船代わりのやかんに荷物を積み始める。そしてアリエッティは、そこへ現れた翔に別れを告げると、引っ越し先を目指して川を下っていった。




    登場人物

  小人たち

 アリエッティ
 声 - 志田未来(英 - シアーシャ・ローナン / 北米 - ブリジット・メンドラー)
 本作の主人公。貞子達が暮らす屋敷の床下で様々な生活品を借りながら、両親と密かに暮らしている小人の少女。14歳。基本的には明朗快活で人間や家猫、虫に対して物怖じしない性格。冒頭、母親の誕生日のためにローリエと紫蘇の葉、そして自分の部屋に飾る花を採りに出たところを翔に目撃されてしまう。最初は翔を警戒していたが、彼の暖かさと優しさに触れた事で少しずつ心を通わせていき、母のホミリーが捕まった時は迷わず翔に助けを求める。
別れの際は励ましの言葉と、角砂糖と交換する形で髪留めにしていた洗濯バサミを渡した。

 ホミリー
 声 - 大竹しのぶ(英 - Olivia Colman / 北米 - エイミー・ポーラー)
アリエッティの母親。52歳。豊かな表情とやや大げさな身振り手振りが多い。借り物を工夫して家庭を切り盛りしている。衣服などサイズの合う既製品が無い場合洋裁等で作成している模様。長年の工夫を重ねた結果である現在の住処での生活を気に入っている。虫は苦手の様子。本物の海を見るのが夢で、ガラス窓を模した物の背景の海の絵は3年間も取り替えていない。ドールハウスのキッチン用品に憧れていたが、物が無くなったらすぐ分かってしまうと夫に言われているため我慢している。

 ポッド
 声 - 三浦友和(英 - マーク・ストロング / 北米 - ウィル・アーネット)
アリエッティの父親。61歳。危険な「借り」に出て一家を支える大黒柱。この先自分達に何かあったときのためにアリエッティに初めての「借り」を教える。手先は器用な様で劇中借物を用いて半田付け補修・藁カゴ編み等の工作や華麗なロッククライム術を披露した。

 スピラー
 声 - 藤原竜也(英 - Luke Allen-Gale / 北米 - モイセス・アリアス)
小人の少年。12歳。家族は居らず、蓑を纏って赤い弓を持ち歩いて1人で野性的な生活を送る。屋外を活発に動いている所為か劇中ではモモンガのように滑空し移動する描写も見られた。脚を怪我したポッドを助け家まで送り届けた。初対面のアリエッティ一家に対しぶっきらぼうな物言いで、多少片言気味に喋る。携帯食としてコオロギの脚を獲ってきていて「食う?」とアリエッティとホミリーに見せたが、2人は気味悪がっていた。
アリエッティと別れの挨拶を交わしている翔を勘違いから弓で射とうとしたり、その後、少し落ち込んでいた彼女を励ます為にラズベリーを渡すなど、アリエッティに気があるらしい描写が随所に見られる。


   人間

 翔(しょう)
 声 - 神木隆之介(英 - トム・ホランド Tom Holland / 北米 - デヴィッド・ヘンリー)
 12歳。両親は離婚して父親とは別居している。また、外交官の母親・奈津美も仕事柄海外赴任することが多く、家族との交流は薄い。生まれつき心臓が弱く、過度に運動出来ない体である。母から屋敷の小人について聞いたことがある。
 屋敷へ手術直前の療養のため1週間のみ訪れた初日、家猫のニーヤに絡まれ掛けていたアリエッティを目撃する。年齢の割には落ち着いていて大人びた感性の持ち主だが、手術に対して悲観的になっており、別れを告げに来た彼女に対し(多少自棄気味になりつつ)小人は滅び行く運命だと発言した後、「死ぬのは僕の方だ」とも発言している。しかし基本は穏やかで心優しい少年の様で、小人を見たことは秘密にし、彼女が落とした角砂糖を届けに行ったり、 病身を押してアリエッティの母親救出に協力している。小人の掟を知らなかったとはいえ、ドールハウスのキッチンの件は亡き曽祖父の願いを叶え、かつ、アリエッティ達のためになると信じての行動だった。最後には餞別として再び角砂糖を渡し、アリエッティから生きる勇気を得て2日後の手術を「頑張る」と約束して終幕する(冒頭の台詞からその後も存命している事は濃厚)。その時、彼女からいつもつけていた髪留めの洗濯バサミを託される。少なくとも劇中で小人を見た(とされる)人間は翔の曽祖父、ハル、翔の3人(翔の母や大叔母は話に聞く程度)。苗字は不明。

 牧 貞子(まき さだこ)
 声 - 竹下景子(英 - フィリダ・ロー Phyllida Law / 北米 - グレイシー・ポレッティ Gracie Poletti)
 アリエッティの家族が暮らす屋敷の主人。68歳。翔の祖母の妹で、いわゆる大叔母にあたる[7]。病身の身である翔のことを案じ、手術前にも拘らず仕事で外国に出張している翔の母・奈津美を批判する発言をするなど、良心的な人物である。
 屋敷の主人だが、表札には「藪」と表記されている。ポッドによると、貞子たちが住み始める前に2件の家族がこの屋敷に住んでいたことが判明しており、「藪」と名乗る一家は貞子たちが住み始める前の家族の姓である可能性がある。
 彼女の屋敷にはニーヤという猫がいる。
 愛車は劇中の特徴から、多摩ナンバー・シルバーのベンツ190E(メルセデス・ベンツ W201)。
 翔に宛てがわれた部屋にあるドールハウスは、『いつか小人が現れた時にプレゼントするため父(翔の曽祖父)がイギリスの職人に作らせたもの』である事を翔に話した。自分も父の願いを叶えたかったが自分では見たことが無く、この家にはもう小人は居ないのかもしれないと半分諦めかけた発言をしている。だが、翔がこっそり戻しておいたドールハウスのキッチンストーブに忘れ置かれていたハーブ入りのティーポットを見つけ、小人が本当にいたのだと分かり喜んでいた。

 ハル
 声 - 樹木希林(英 - ジェラルディン・マキューアン Geraldine McEwan / 北米 - キャロル・バーネット)
 長年住み込みで働いている貞子の屋敷の家政婦。65歳。愛車の赤い軽自動車の駐車マナーを主人の貞子に度々注意されている模様。小人を捕まえようと試みるが、捕獲を一般の鼠捕り業者に依頼しようとするなど思慮の浅い点も見られる。老眼で少々目が悪い。『ロマンアルバム 借りぐらしのアリエッティ』によると、彼女が小人を捕まえることに執着する理由は、金や名声のためではなく「かつて小人を見たが、それを誰にも信じてもらえなかった悔しさを晴らすため」であるらしい。苗字は不明。