イマージュ




 『イマージュ』(仏: L'Image)は、カトリーヌ・ロブ=グリエがジャン・ド・ベールの筆名で1956年に発表した小説。

 概要

 パリを舞台に、主人公ジャンと、写真家クレール、その「モデル」アンヌの3人によって展開される、倒錯と女性の性を描いた性愛文学。
下記の10章から構成されている。また、冒頭にはポーリーヌ・レアージュが序文を寄せている。
 X…家の夜のパーティ
 バガテル庭園の薔薇
 お茶と、その結果
 偽りの行動
 写真
 贖罪の供物
 試着
 浴室にて
 ゴチック様式の部屋
 すべてがもとどおりになる

  ジャン・ド・ベルグ(Jean de Berg)著, 行方未知訳『イマージュ』(“L'Image”)富士見書房 1985 富士見ロマン文庫 -107- 61-1

 金子國義の装丁で有名な富士見ロマン文庫だけど、本書のカバーは佐藤和宏という人によるもの。すみれ色のマーブル模様に裸婦と薔薇を配した、本編の内容にぴったりなものになっている。挿絵も同人の作で、ハンス・ベルメールの銅版画の雰囲気。
 この作品の原書は1956年にフランスで発行されている。で、すぐに発禁になったらしい。著者のジャン・ド・ベルグは、カトリーヌ・ロブ=グリエ(Catherine Robbe-Grillet)って女優のペンネームなんだとか。ロマン文庫の一連の本をはじめて読んだのは、あまり大きな声ではいえない年頃だったんだけど、当時の自分に「これ書いたの女の人で、しかも女優さんだってさ」と教えてやりたい。もしそれを知ってたら、心のランキングにも何らかの変動があったろうと思う。(不動の一位はセレナ・ウォーフィールドの『少女ヴィクトリア』)

 登場人物は主人公のジャン・ド・ベルグ、その女友達のクレール、二人にもてあそばれる少女アンヌ。あるときは二人、あるときは三人で、薔薇園やランジェリーショップ、カフェなどを舞台に、露出プレイをしてまわる。このパーティを主導しているのはクレール、辱めを受けるのはもちろん、常に可愛らしいアンヌだ。屋外での放尿を強要されたり、鞭の傷跡の生々しい尻を店員に晒されたりする。鞭や掌による打擲もまた、彼らの主要なプレイである。
 面白いのは一連のプレイを通して、主人公がアンヌではなく、クレールの情動を常に追っているところ。そのため虐待されるアンヌの描写が表面上の愛らしさに止まるのに比べて、クレールはその振舞いから汲みとれる微細な感情の起伏が、フランス文学っぽく事細かに描写され、奇妙だけど奥行きのある人物となっている。

 かなり早い段階からばれちゃってるような気もするが、クレールはどMである。近寄り難いほどに美しく、つとめて女王さま然と振舞いながらも、随所で欲求を押さえきれてないところがすごくいい。激しく焦れてる様子が、文章からひしひしと伝わってくる。クレールはどんな思いでアンヌを虐待し、ジャンに差し出したのだろうか。単にntr的な状況を作り出して興奮を得ていたのかもしれないし、自らをいたいけなアンヌに投影していたのかもしれない。多分、その両方だろう。
 この三人の構成は、SMレズビアンのカップルに男が一人混じっているという形ではない。表面的にはジャンとクレールが二人して、M役のアンヌを虐待しているように見えるが、実のところ、アンヌを挟んで二人が激しく求めあい、クレールは間接的にジャンの辱めを受けたり、また焦らされたりして歓喜に打ち震えている。 

 この作品のキーアイテムである薔薇の描写は、「中心へとたどるに従って濃さを増してゆく柔らかな肉色をしており、その中心部には、半ば左右に開きそめた花弁が陰影をはらんだひとつの深い井戸のような穴を形作っていた。穴の内部はさらに生身に似た薔薇色を呈していた」(p.37)って感じで、ここだけ抜き出すと誤解を招きそうな生々しさだが、この薔薇を執拗に愛撫するシーンもあったりする。
 クレールが自らを少女に投影していたとして、薔薇の花を少女の性器になぞらえ、それを愛撫してみせるというのは、上級者すぎるプレイでなかなか理解し難い。しかしタイトルから推測されるように、この重なりあい連鎖するイメージ、自らを万華鏡のなかのひとつのオブジェとするような陶酔、恍惚感は本作の主要なテーマであり、当然のように直接的な性交の描写はぎりぎりまで削ぎ落とされている。

 この作品は1975年に『イメージ』 (“The Image”)というタイトルで映画化もされている。
 著者は夫によってがっつり調教されていたらしいが、真偽は不明。しかしこれも初読のころの自分に教えてやりたい情報ではある。





 映画

 1975年に、『イメージ』 (The Image)の題で映画化された。89分、監督はラドリー・メツガー。原作に沿った10章から構成される。

 謎に包まれた作家ジャン・ド・ベルグが一九五六に書いた「イマージュ」の映画化。製作はマーティ・リチャーズとジル・チャムピョン、監督はラドリー・メッガー、脚本はジェイク・バーネン、撮影はルネ・ルフェール、音楽はジョージ・クレイグが各々担当。出演はマリー・メンダム、カール・パーカー、マリリン・ロバーツ、イヴェット・ヒヴレなど

 原題:The Image
 製作国:フランス
 製作年:1975
 配給:ジョイパックフィルム

  フランス発禁文学の最高峰「L'IMAGE」を鬼才ラドリー・メツガー監督が完全映画化した官能ドラマ。裕福なサド女とそのマゾ女奴隷、観客視点としての一人の男を絡ませながら倒錯的な世界を官能的に描いたSMポルノの名作です。野外放尿や行きずりの相手とのレズプレイ強要、公衆でのオナニー羞恥プレイ的な責め、拘束&打擲をメインにしたSMプレイまで、バラエティに富んだ気品あるエロ場面が続々登場。いわゆるハードコアな結合シーンはないものの、噴水や尖塔建築などパリの風景を暗喩的にうまく取り入れながら全編エロティックなイメージを喚起させ続けることに成功しており、異物挿入シーンや長々と繰り広げられるフェラシーンなどは後のポーンシック派に大きな影響を与えたと言われております。

 1:Xでの夜...
 2:バガテル・ガーデンのバラ
 3:あまりにも多くの水とその結果
 4:誤った開始
 5:写真
 6:Expiatory Sacrifice
 7:フィッティングルーム
 8:バスルームで
 8:ゴシックチェンバー
10:すべてが解決する




              あらすじ

 俳優のようなマスクの持主ジャン(カール・パーカー)は、今売れっ子の作家だ。ある日、一流有名人が集まる家のパーティに招待され、そこで数年ぶりに妖艶な美女クレール(マリリン・ロバーツ)と再会した。彼女は美人だが、高慢で男に従うことを嫌う女だった。そのクレールに、ジャンは若く美しい娘アンヌ(マリー・メンダム)を紹介された。アンヌは折目正しい、クレールの愛人であり下僕でもあった。パーティの翌日、三人は公演を散歩した。まだ少女っぽさが残るアンヌは、まさにクレールの従順な下僕だった。規則違反にもかかわらず、アンヌはクレールの命令ともあればバラの花をもぎとり、更にバラのトゲで自分の大腿を刺した。アンヌの白い大腿に流れる真紅の血……。クレールはその大腿に優しく口づけをする。ジャンは二人の関係が理解出来ず、呆然とみつめるだけだった。しかし、ジャンはそんなアンヌを自由にしてみたいと思った。翌日、偶然町でアンヌに会ったが彼女の態度は冷たかった。屈辱感にさいなまれるジャンは、クレールの家を訪れ、アンヌへの想いを打ち明けた。クレールはジャンに対するアンヌの無礼な態度をいましめ、彼女を全裸にしてムチで打った。ジャンはこの日からアンヌを下僕のように扱い、三人の不可思議な性生活が始まった。ある夜、いつものようにサディスティックな行為の末、ジャンはアンヌを犯した。アンヌの表情は、性の快楽の全てをあらわしており、それを見たクレールは気が狂ったようにジャンに対してムチをふるった。翌朝、ジャンはクレールにおこされた。彼女は部屋に入るとコートを脱ぎすて、全裸になった。クレールは気が狂ったようにジャンに挑んだ。今まで、男に征服されることも、従うことも拒否してきたが、前夜のアンヌが見せた表情を見て一変したのだ。それを読みとったジャンは彼女を暴君のように犯すのだった。クレールはジャンがいうままに従い、男に服従される喜びに心の底から浸っていくのだった。




   スタッフ

 監督:Radley Metzger ラドリー・メッガー
 製作:Marty Richards マーティ・リチャーズ
    Gill Champion ジル・チャムピョン
 原作:Jean De Berg ジャン・ド・ベルグ
 脚本:Jake Barnen ジェイク・バーネン
 撮影:Rene Lefeure ルネ・ルフェール
 音楽:George Craig ジョージ・クレイグ

   キャスト

 Mary Mendum マリー・メンダム (Anne)
 Carl Parker カール・パーカー (Jean)
 Marilyn Roberts マリリン・ロバーツ (Claire)

 監督  ラドリーメッツガー
 によって生産ギルチャンピオン
 によって書かれたRadley Metzger
 (「Jake Barnes」として)
 Catherine Robbe-Grillet
 主演  カール・パーカー、マリリン・ロバーツ、レベッカ・ブルーク、ヴァレリー・マロン
 映画撮影  ルネ・ルフェーブル・ ガストン・ミュラー
 分散  シナプスフィルム
 発売日 1976年2月
 上映時間 89分
 言語  英語、フランス語
 (Wikipejiaより、自動翻訳使用)