ティファニーで朝食を





 『ティファニーで朝食を』(ティファニーでちょうしょくを、原題: Breakfast at Tiffany’s)は、アメリカ合衆国の小説家トルーマン・カポーティによる中編小説。1958年にランダムハウスから出版された。ニューヨークを舞台に、自由奔放に生きる女性主人公を描く。1961年にオードリー・ヘプバーン主演でパラマウント映画によって映画化された。
題名は主人公のいう「ティファニーで朝食を食べるご身分」というたとえで、ニューヨーク5番街にあるティファニーは宝石店であり実際には食堂はない。しかし映画版ではその題名を意識してか、冒頭でオードリー・ヘプバーンがティファニーのショーウィンドウを前に朝食を食べるシーンがある。

 監督はブレイク・エドワーズ、主演はオードリー・ヘプバーン、共演はジョージ・ペパード。ティファニーに資本主義の繁栄を象徴させて自由の貴重さを描いてみせるトルーマン・カポーティの原作とは異なり、映画は主人公と語り手の作家との恋を中心に描いている。
カポーティは、マリリン・モンローを主役にすえることを条件に、映画化を了承した。ところが、出演オファーを受けたモンローは、娼婦役を演じることが女優としてのキャリアにマイナスになると考え、出演を断った。セックスシンボルと呼ばれることに強い抵抗を感じていたモンローは、これ以上、イメージが固定化することを嫌ったとされる。こうして、モンローとはまったく個性の異なるヘプバーンが主演を務めることになった[3]。モンローのイメージに合わせて書かれていた脚本は、急きょヘプバーンの魅力が生かされるように書き直された。カポーティはヘプバーンが映画に主演すると聞いて、少なからず不快感を表したと伝えられる[4]。
 ジョニー・マーサー作詞・ヘンリー・マンシーニ作曲で劇中にヘプバーン自身が歌った挿入歌『ムーン・リバー』が有名であるが、原作中の歌とは異なる。映画完成後のパラマウント映画関係者向披露試写会で、就任したばかりのパラマウント映画の新社長は、歌のシーンはカットした方がよいと言い放ったと言うが、オードリーは立ち上がり「絶対にカットはさせません」と言って残されたシーンだったという事を、相手役のジョージ・ペパードが、1993年に発売されたドキュメンタリービデオ「想い出のオードリー・ヘップバーン」中のインタビュー映像で語っている。
川本三郎の『映画は呼んでいる』(キネマ旬報社)には映画評論家のジュディス・クリストの言葉が紹介してある。「この映画で我々は大人になりました」「無垢の時代は終わりを遂げました。突如、時代はセックスに対してオープンになる方向に動き始めました。60年代になりかかっていたのです」。





    悪意に満ちた日本人像

 日系アメリカ人の登場人物・ユニオシは、アメリカ社会におけるステレオタイプで悪意に満ちた日本人像(黒ぶちの眼鏡、出っ歯、低身長、[l]と[r]を混同するなど)を反映して表現されている。ユニオシを演じた白人俳優ミッキー・ルーニーは当時を振り返って、監督の指示通りにコメディ感を演出した演技だったと語っている。
 当時、アメリカ社会の人種差別問題は未解決のままであり、公民権法の制定が視野に入っている時期であった。白人同士の私的な会話で、マイノリティに対するきわどいブラック・ジョークが囁かれることはよくあったが、、映画という公の場面でこのような表現がなされたことは異例である。今日ではハリウッド史上、最も残酷で恥ずべき表現の一つと見なされることが多い。ミッキー・ルーニーには生涯を通して、差別主義的なイメージとスティグマが付きまとい、俳優としての地位を維持するために繰り返し釈明と弁明を行う必要に迫られた。ルーニー自身は、「40年間どこへ行っても賞賛を受け、当のアジア人である中国人からも『傑作だ』と称賛された」と弁解している。



    キャスト

 ホリー・ゴライトリー  オードリー・ヘップバーン      池田昌子
 ポール・バージャク  ジョージ・ペパード   野沢那智        金内吉男
 2E  パトリシア・ニール         沢田敏子   谷育子    初井言栄
 ドク・ゴライトリー  バディ・イブセン  山野史人   小林修    塚本信夫
 ユニオシ, I.Y.  ミッキー・ルーニー    辻親八  緒方賢一
 O・J・バーマン  マーティン・バルサム   稲葉実    阪脩
 ホセ・ダ・シルヴァ・ペレイラ  ホセ・ルイス・デ・ヴィラロンガ(英語版)田原アルノ 納谷六朗
 メグ  ドロシー・ホイットニー          雨蘭咲木子
 サリー・トマト  アラン・リード(英語版) 村松康雄  藤本譲
 ティファニーの店員  ジョン・マッギーヴァー(英語版)




    スタッフ

 監督 ブレイク・エドワーズ
 脚本 ジョージ・アクセルロッド
 原作 トルーマン・カポーティ
 製作 マーティン・ジュロー
    リチャード・シェファード
 出演者 オードリー・ヘップバーン
     ジョージ・ペパード
     パトリシア・ニール
 音楽 ヘンリー・マンシーニ
 撮影 フランツ・プラナー
    フィリップ・H・ラスロップ
 編集 ハワード・スミス
 配給 パラマウント映画
 公開 アメリカ合衆国の旗 1961年10月5日
    日本の旗 1961年11月8日
 上映時間 115分
 製作国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
 言語 英語