トロイのヘレン






 物語の舞台となるのは今から3000年前のトロイ。当時ヘレスポントと呼ばれた海峡は、東方との唯一の交易路としてトロイに繁栄をもたらしていたが、そのためにギリシア諸国の侵略の脅威にもさらされていた。そのため、トロイは頑丈な城壁を築き敵の侵略に備えていた。

 トロイの王子パリスは和平交渉し交易を結ぼうとギリシアのスパルタに赴くことにした。しかし、パリスの姉のカッサンドラはこれに強く反対した。彼女は未来を見通すことができ、未来に起こるであろう不吉な影に気づいていたのだ。しかし、それは彼女が心を病んでいるからだと思われていた。カッサンドラの忠告を聞かず、スパルタへと船を出したパリスだったが、航海の途中で船は難破。浜辺にうちあげられたパリスを介抱したのがスパルタの王妃へレンだった。

 何もせずに立ち去るようにという忠告するヘレンだったが、パリスはスパルタ王メネラオスの元に向かう。メネラオスの元には、兄でミュケナイの王アガメムノンやイタケの王ユリシーズ、英雄アキレウスなどが顔をそろえていた。パリスは堂々と乗り込み、和平の話し合いに来たことを告げる。メネラオスは身分の証明をするあらゆるものを失ったというパリスを嘲り、スパルタの英雄アイアスと拳闘で勝負し勝ったなら、パリスと認めて和平に応じることにした。戦いはパリスの勝利に終わる。この時、メネラオスは気づいていた。その様子を見ていた自分の妻へレンのパリスを見つめる瞳に。それに嫉妬したメネラオスはパリスを監禁して拷問をかけようとするが、それを救ったのもヘレンだった。その結果、スパルタ兵に追われることになったパリスとヘレンはトロイへと逃れる。歓迎で迎えられた2人だったが、カッサンドラが問う。「あなたの名前は何?」 そしてヘレンとパリスを追って、メネラオスを筆頭にミュケナイ王アガメムノンをはじめとしてギリシアの同盟者たちが繰り出してきた大船団がトロイに迫る。

 普通に描くと、非があるのはパリスとヘレンである。いかに、ギリシアが最初からトロイを狙っていたという複線を入れようとも、公の人間として取ってはならない行動をとってギリシアに格好の口実を与えたことに違いは無い。メネラオスをいかに悪辣な人間として描こうと、ギリシアをいくら非道に描こうと、そこに何かの違和感が残るの当然に思う。



 紀元前1100年。繁栄を誇るトロイ市は、ギリシャ諸国の征服の対象だった。トロイ王子プライアム(サー・セドリック・ハードウィック)にはヘクター(ハリイ・アンドリュー)、ポリドラス(ロバート・ブラウン)そしてパリス(ジャック・セルナス)と3人の王子がいた。パリスは父を説いて平和使節としてギリシャへ向かった。だが途中、嵐にあったパリスはスパルタ海岸に漂着した。パリスを救い、かくまったのはスパルタ王メネラウス(ナイオール・マクギニス)の妃ヘレン(ロッサナ・ポデスタ)だった。パリスがスパルタの王宮を訪れたとき、宮廷ではトロイ攻撃の軍議の最中だった。アガメムノン(ロバート・ダグラス)、ユリシーズ(トリン・サッチャー)などの顔もみえ、パリスは身分を証明するため勇将エイジャックスと拳闘の試合をして彼を破った。しかし平和への熱意は認められず、パリスは檻禁された。これはパリスへのヘレンの秘かな愛情をメネラウス王が嫉妬したためでもあった。ヘレンはパリスを救い出しトロイへ去ったが、怒ったメネラウス王はトロイ征服の兵をおこした。両国の間に激せんが繰り返され、ヘレンは自分が戦いの原因だと知ってメネラウス王の元に立ち帰っ田が、これを知ったパリスは戦車出敵陣に乗り込みヘレンを奪い返した。一時休戦状態だった両軍は再び戦端を開き、戦は激烈をきわめた。パリスの兄ヘクター(ハリー・アンドリュース)はアキレスに討たれ、そのアキレスも又パリスに倒された。ギリシャ軍の士気は沮喪したが、ユリシーズの計略で巨大な木馬を残して退却した。喜んだプライアム王はパリスの警告にも拘らず木馬を城内に運び込んだ。その夜、木馬の腹から忍び出たギリシャ兵たちは城門を開いて本隊を入れ、不意を衝かれたトロイは遂に陥落した。プライアム王の請いでパリスとヘレンは人混みにまぎれて逃げようとしたが、街角でメネラウスに出会い、激闘の末パリスは重傷を負い、ヘレンに抱かれて息を引き取った。メネラウスに連れられたヘレンはスパルタに向かう船上で、今は亡きパリスの想い出にふけった。(Movie Walkerより抜粋)





    トロイ 2004年

 ストーリー
 トロイとスパルタの間に和平が結ばれた日、トロイ王子パリスはスパルタの王妃ヘレンと禁じられた恋に落ち、駆け落ち同然にトロイへと彼女を連れ帰ってしまう。パリスの兄ヘクトルは激怒するが弟可愛さに彼を守ることを決意し、トロイ王にして彼らの父であるプリアモスもヘレンを受け入れる。
ヘレンの夫であるスパルタ王メネラオスはこれに激怒し、ギリシアの諸王国の盟主にしてメネラオスの兄であるミュケナイ王アガメムノンを頼る。アガメムノンはこれを口実にトロイを征服しようと、ギリシア連合軍によるトロイ侵攻を決定する。
 ギリシアの勇者アキレス は自分や兵士たちを駒としか見ていないアガメムノンに対して不満を抱いていたが、親友オデュッセウスの頼みを受け、歴史に名前を残すため参戦を決意。家臣のミュルミドン達を率い、自分を尊敬する従弟のパトロクロスを伴ってトロイへと赴く。
最初の戦いはギリシア軍有利に進められた。先陣を切って飛び込んだアキレスとミュルミドンは瞬く間に浜辺を守るトロイ軍を蹴散らし、アポロンの神殿へと攻め込む。パリスの従妹である巫女ブリセイスはアキレスに捕らわれてしまい、アキレスは救援に駆けつけたヘクトルにまたの再戦を約束して引き上げる。
 アキレスは自分の物になることを拒むブリセイスに興味を抱き、徐々に彼女へ惹かれていく。ブリセイスもまた自分を丁重に扱うアキレスに、心を許すようになる。しかしアキレスが自分の指示を無視した事に腹を立てたアガメムノンはアキレスからブリセイスを取り上げ、兵卒達へ慰みものとして与えてしまう。怒り狂ったアキレスは強引にブリセイスを取り戻すが、これによってアガメムノンとの関係は決定的なものとなり、アキレスは戦闘を放棄する。
パリスは戦争を終わらせて故郷を救うため、メネラオスとの一騎討ちに挑むことを決意する。両軍が息を呑んで見守る中で二人は対決するが、パリスは防戦一方に追い込まれ、ついに窮地に陥る。足元に縋って助けを求めるパリスの姿にたまりかね、ヘクトルは約定を破って助太刀し、メネラオスを殺してしまう。激怒したアガメムノンは一斉攻撃の命令を下すが、アキレスとミュルミドンを欠いたギリシア軍はヘクトル率いるトロイ軍に打ち負かされる。
自軍の窮状にも関わらず戦わないアキレスが批判され、さらに帰郷まで決意したことに耐えかねたパトロクロスは、アキレスの鎧兜を身に纏い、影武者としてミュルミドンを率いて戦場に赴く。その見事な戦いはギリシア軍の士気を取り戻し、ついにはトロイ軍もヘクトルが出撃して迎え撃つ。パトロクロスはヘクトルへと挑むが敵わずに討たれ、ヘクトル、トロイ軍、ギリシア軍は、アキレスと思っていた人物の正体がパトロクロスであったことに衝撃を受け、戦いを止める。
 パトロクロスが殺されたことを知ったアキレスは激怒し、たった一人でトロイ城門の前まで戦車を走らせる。幾度も自分を呼ばわる声を聞いたヘクトルは、死を覚悟し、父と妻、弟に別れを告げて決闘に挑む。激戦の末にヘクトルを討ったアキレスだが、怒りが収まらぬ余りヘクトルの死体を戦車で引きずり回して自軍へと持ち去ってしまう。
 その夜、危険を冒して単身でギリシア軍の陣地までプリアモス王が訪ねてくる。息子の遺体を返して欲しいという彼の涙ながらの懇願を受けて、アキレスは自分がしでかしてしまった事の罪深さに後悔し、苦悩する。やがてアキレスはヘクトルの遺体と共にブリセイスをトロイへと送り返す。ヘクトルの遺体は荼毘に付され、両軍は彼を弔うため一時の休戦を約束する。
 度重なる敗戦にギリシア軍は勝算なしと見て撤退の準備を進めていた。しかしオデュッセウスは兵士が子供の土産にと作っていた木彫りの馬を見て、起死回生の作戦を思いつく。トロイへの供物として巨大な木馬を造って撤退したと見せかけ、木馬がトロイに運び込まれたら中に隠れた兵士が門を開け、待機していた軍勢で攻め込もうというのだ。アキレスはミュルミドンたちを帰還させ、ブリセイスを助けるため木馬の中に乗り込む。
木馬の策略に騙されたトロイは、瞬く間に炎上する。ギリシア兵による一方的な略奪が市民を襲う中、アガメムノンはプリアモス王を殺し、ブリセウスまで手に掛けようとする。ブリセウスを探し求めるアキレスはアガメムノンを殺し、彼女を助け出す。しかしそこに兄ヘクトルの復讐に燃えるパリスが現れ、アキレスは踵を射抜かれて崩れ落ちる。パリスはアイネイアスにトロイの宝剣とブリセウス、ヘレンを託して脱出させ、自らは炎の中へと消えていった。
 生き延びたオデュッセウスは、やがてこの戦いは伝説となり、男たちの名が英雄として語り継がれていくだろうことを確信する。