ドクタークイン大西部の女医物語




 『ドクタークイン 大西部の女医物語』(ドクタークイン だいせいぶのじょいものがたり)は、アメリカCBSネットワークが1993年から1998年にかけて全140回に亘り米国内で放映したテレビドラマ。原題『Dr. Quinn, Medicine Woman』。

   概要
 日本ではNHKが1993年〜2000年にかけて、中断や再放送を挟みながら放送した。ただし、日本国内での放映時間の45分に合わせるためにカットされたシーンもあるほか、長時間のエピソードは2回に分けるなどしており、放映されたエピソードの順番はCBSとは大きく異なる。例えばシーズン1の最終話は米国では#18Portraitsだったが、日本では#18Portraits→#17The Secretになっており、17話と18話が入れ替わっている。シーズン2以降ではさらにその傾向が顕著である。
 2008年4月からはチャンネル銀河でシーズン1から放送された。NHK放送時と同じく、第6シーズンの最終話まで完全に放送されたことは無い。日本では2009年4月にNHK放送時の吹替えを収録したシーズン1のDVD-BOXが発売された。シーズン2以降についても順次発売されている。米国ではシーズン1〜6と映画2話を含めたDVD42枚組のメガコンプリートBOXも存在する。
 第1シーズンのパイロット版2話が便宜上、第1話、第2話となっており、レギュラー放送化の第3話以降では一部役者が変更となっている。主要キャストでは「よろず屋ローレン」「床屋ジェーク」「鍛冶職人ロバート・E」が交替した。1998年5月に第6シリーズ最終回が米国で放映され、その4ヶ月後の1998年9月より第7シリーズの放映が予定されていた。しかしCBSが放映契約を打ち切ったため第7シリーズは幻となった。撮影されたエピソードがあるかどうかは不明である。




      あらすじ

 時代は19世紀後半、主人公はアメリカのコロラド州の町、コロラドスプリングスで開業医をする女性。医師公募に応じて大都会のボストンから田舎町に移住する。到着早々ある事件がきっかけで亡くなった友人の3人の子供を引き取ることになる。当時では珍しい女医であることと、田舎では社会的地位の低い未婚の独身女性ということで好奇と偏見の目にさらされるが、持ち前の行動力と意志の強さではねのけ、子供達とともに力強く生きていく。
シリーズを通して、ミケーラとサリーの恋愛関係の進展と子供たちの成長を扱った。個々のストーリーでは、西部の田舎町の庶民の暮らし、女医・未婚女性への偏見、黒人差別、原住民であるシャイアン族に対する迫害、女性達の自立、開発による自然破壊など多種多様に亘るテーマを扱った。




 主な登場人物

 クーパー家

 マシュー・クーパー (チャド・アレン 声:真殿光昭)
ミケーラに引き取られた三人の子のうちの長男。カンザス州生まれ。第1シーズン時16歳。正義感が強く真面目な性格で、後に保安官になり男として成長する。軍のお尋ね者となったサリーの捜索のため保安官のバッジを捨て、後に弁護士になる。
最愛のイングリッドを失い錯乱したが立ち直り、その後エマと出会うが、彼女とも別離する。

 コリーン・クーパー (エリカ・フローレス[〜第3シリーズ]/ジェシカ・ボウマン[第3シリーズ〜] 声:折笠愛)
 長女。マシューの妹・ブライアンの姉にあたる。カンザス州生まれ。第1シーズン時12歳。ミケーラの姿を見て女医を志し、診療所では助手を務めた。新聞小説のヒーローに憧れを抱き、自分を救ってくれたサリーに恋心を抱いた事も。シーズン1の#15Heroesでコリーンは馬車の下敷きになりそうな危機をサリーによって救われている。第5シリーズからは医学を学ぶためデンバーへ。ミケーラの出産の為に訪れ、そのまま移住した医師アンドルーと恋仲になり、最終話で結婚する。

 ブライアン・クーパー (ショーン・トゥーベイ 声:小桜エツ子)
 一家の末っ子。コロラド・スプリングス生まれ。第1シーズン時7歳。シャイアン、つまりサリーに憧れており彼らの居留地へ1人で向かい山中で遭難してしまうほど好奇心旺盛で純真な少年。パイロット版後編で家出し行方不明になるが、結果的にその出来事がミケーラと3人の距離を縮めさせることとなった。シーズン1の#16The Operationで、好奇心ゆえ鳥の様に飛べると信じ木から転落して頭を打ち失明はおろか生命の危機を迎えたが、ミケーラが経験のない脳手術を成功させ、危機を脱した。よろず屋のローレンとは親友で甘いものが大好き。ドロシーの新聞社を手伝うようになる。後にセーラというガールフレンドができる。

 シャーロット・クーパー (ダイアン・ラッド 声:沢田敏子)
 三人の子供達の産みの親。自身が16歳の時に結婚したと、シーズン1の#14Rite of Passageのワンシーンでコリーンが発言している。三人を出産後しばらくイーサンと農場を経営していたが、イーサンが家族を捨てて姿を消したため、幼い三人を女手ひとつで育てて来た。その後は町で宿屋兼産婆を営んでいた。ミケーラに深い理解を示すが、パイロット版前編の最後で不慮の毒蛇事故によって死亡。死の間際に遺言として三人の子供をミケーラに託しており、3人の子とミケーラの物語のすべてはここから始まった。死後経営していた宿屋は銀行から差し押さえられるが、入院施設の無い町で唯一多くの部屋数を確保できるため、ミケーラが$1,500で買い取り町の診療所兼病院となった。

 イーサン・クーパー (ベン・マーフィー 声:小林修)
三人の子供の父。家族を捨てて放浪中。シャーロットの死後に突然町に現れては問題を起こし三人の子供の親権をミケーラと争う。
サリーの家族[編集]

 バイロン・サリー (ジョー・ランドー 声:谷口節)
 ミケーラの恋人であり劇中で夫となるハンサムガイ。ミケーラの一番の理解者であり良きパートナー。やや無愛想だが情に厚い。アメリカへ渡る移民船で生まれ、十歳の時に両親を相次いで失う。自身は白人でありながら町の周辺で暮らすシャイアン族インディアンとの親交から、狩猟、大工など数多くの技能や知識に長けている。特にトマホーク(斧)投げを得意としており、劇中何度も仲間達の危機を救った。兄を落馬で失ったために乗馬を苦手としていたが、必死の訓練によりそれを克服。シーズン1の#7Father's Dayで乗馬の訓練に励むシーンが数回ある。馬に乗れたおかげで結果的に悪党を捕まえることができた。
 当初はミケーラに恋心を抱きつつも、亡きアビゲイルへの想いも断ち切れずにいた。シーズン1の#6The Healingでは亡きアビゲイルの墓参りをするサリーの姿を見る事ができる。しばらくミケーラ一家と家族のように接しながらも父親になる躊躇いもあり一定の距離をおいていた。しかしその後訪れた数々の困難をミケーラと共に乗り越えていった結果、二人の愛情が深まりミケーラとめでたく結ばれた。マシュー、コリーン、ブライアンの“キッズ”達からの信頼も絶大である。第3シーズンで結婚後も物語は続いて行く。
 アビゲイル・サリー
 故人。サリーの元妻でありローレンの娘にあたる。自身が18歳の時にサリーと結婚しており、シーズン1の#14Rite of Passageのワンシーンでサリー自ら、彼女が18歳の時に結婚したと言っている。出産の際に子供と共に死去。サリーはシーズン1の#4The Visitorでミケーラの母に向かって「もしもその時ミケーラがこの町に居たら彼女も子も死なずに助かっていたでしょう」と述べている。

 ローレンの家族

 ローレン・ブレイ (第3話からはオーソン・ビーン 声:阪脩)
よろず屋の店主。ジェーク、ハンクらとよくつるんでいる。高齢であることもあり保守的な思想を持ち、ミケーラの先進的な考えに難色を示すことが多い。亡き娘であるアビゲイルと結婚していたサリーは義理の息子にあたる。最愛の娘アビゲイルを失ったためにサリーを認めていなかったが後に和解。ハーモニカが得意。

 モード・ブレイ (バーナ・ブルーム 声:竹口安芸子)
第1シリーズ(パイロット版)に登場。ローレンの妻。心臓発作の持病がある。ローレンが女医を受け入れないため治療ができず、心臓発作で死亡。

 オリーブ・デービス (ゲイル・ストリクランド 声:麻生美代子)
第1シリーズ(第3回から)に登場。ローレンの妹。シャーロットの親友。牛飼いの仕事をしている。町の掟に厳しくしばしばミケーラと対立するものの情に厚い一面も。町で初めて出来た学校の教師の代行も務めた。グレースを料理人として雇い、町のダンスホールも主催した。飼っていた牛を遺産として雇っていたマシューに残した。

 ドロシー・ジェニングス (バーバラ・バブコック 声:谷育子)
第2シリーズより登場。ローレンの義妹。夫の虐待から逃げコロラド・スプリングスへ訪れる。夫殺しを疑われるが無罪を証明され、以後町の住人となる。ミケーラとは親友同士に。ローレンの店を手伝うが。後に小さな新聞社を設立する。ジェークに思いを寄せられるが、最後はクラウド・ダンシングを愛するようになる。


   コロラド・スプリングスの住人


 ジェーク・スリッカー (第3話からはジム・ノベロッチ 声:若本規夫)
 床屋の店主。ミケーラが来るまで町の医師代わりでもあった。幼少の頃に両親が失踪、その孤独からか屈折した性格を持つ。強がりな一面の割に臆病で白目を剥いて気絶することもある。アルコール中毒になった時、ミケーラに愛の告白をした。読み書きがあまりできないことにコンプレックスがあり、アルコール依存症だったがミケーラや町の人々の協力で徐々に克服し、後に選挙で町長になる。ドロシーに思いを寄せた事もあったが、第6シリーズでモラレスと結婚。
 レギュラー放送化からジェーク役を務めたジム・ノベロッチは当番組企画と制作総指揮を担当した女性脚本家ベス・サリバンの実の夫だった。

 ハンク・ローソン (ウィリアム・ショックリー 声:立木文彦)
 酒場サルーンの店主。乱暴で野蛮な性格でミケーラと対立する事も多い。美貌のミケーラに興味を持ったが性格に嫌気がさし諦める。他界した最愛の女性との間に生まれた一人息子(隠し子)が居る。粗暴な性格だが町のために立ち上がる粋な一面も。

 ホレス・ビング (フランク・コリソン 声:幹本雄之)
 郵便局の電報係。気は弱いが優しい男。恋心を抱くマイラを巡りハンクと争うが度々返り討ちに遭う。自身を看病してくれた事をきっかけに酒場の娼婦マイラと結ばれるが、結婚生活がうまくいかず別居してしまう。鉄道開通後は駅長を兼任する。

 マイラ (ヘレネ・ウディ 声:さとうあい)
 ハンクの酒場サルーンで働く娼婦。店を辞めホレスと結婚、娘のサマンサをもうけるが、別居のちに離婚。

 ロバート・E (第3話からはヘンリー・G・サンダース 声:麦人)
 鍛冶職人の黒人。劇中設定では奴隷制は廃止されている時代で、逃亡奴隷だった過去があり胸には奴隷時代に受けた多くのムチの傷を持つ。名字がEと1文字だけなのは奴隷時代の名残。子供がいたが、暗い過去故それを話したがらない。逆境に負けない忍耐力を持つ。ミケーラの二番目の患者。理不尽な度重なる侮辱にも我慢を貫いていたが、最愛のグレースを守るために1度だけハンクを殴り倒した事がある。

 グレース (ジョネル・アレン 声:弥永和子)
ロバート・Eの恋人。料理の上手な黒人女性。町に定住後、手作りのお菓子が評判となり広場を利用してレストランを開く。第2シリーズでロバート・Eと結婚する。

 ティモシー・ジョンソン牧師 (ジェフリー・ロウアー 声:大塚芳忠)
 教会の牧師。医師を必要としたため広告を出しミケーラを町に呼んだが、当初女であるミケーラに戸惑う。その後ミケーラの医師としての技術や行動力に理解を示し力を貸すが、牧師としての立場上力になれない事も多い。マシューに頼まれてミケーラと馬車デートに出掛けた事があるが進展せず。元ギャンブラーという過去を持つ。第5シリーズで目の病気にかかり失明する。

 イングリッド (ジェニファー・ヤング 声:亀井芳子)
 マシューの恋人。スウェーデンからの移民で兄弟がいる。興奮すると喘息を発症する。マシューとのキスの現場をミケーラに見つかった際、興奮のあまり喘息を患った。第4シリーズ開始間もなく、ブライアンの飼い犬パップに噛まれマシューとの結婚を目前に狂犬病で命を落とす。

 プレストン・A・ロッジ三世 (ジェーソン・リーランド・アダムス 声:堀之紀)
 第4シリーズより登場。ミケーラと同じボストン出身の銀行家で策略家。町に銀行を設立する。その後、ホテルを建設を行いアンドルーを専属医に雇う。ボクシングが得意。最終回で銀行の経営に失敗し町を去る。

 アンドルー・クック (ブランドン・ダグラス 声:柴本浩行)
 第4シリーズより登場。ミケーラの出産に立ち会うためボストンからやって来た若手医師。産休中のミケーラの代理を務め、後にプレストンのホテルの専属医になる。最終回、恋仲となったコリーンと結婚する。

 アンソニー (ブレンデン・ジェファーソン声:坂本千夏)
 第4シリーズより登場。不治の病を患う孤児の黒人少年。ロバート・グレース夫妻の養子になり愛されるが、第6シリーズで病気のため他界。
エマ(シャーロット・チャットン声:紗ゆり)
第4シリーズより登場。ハンクの売春宿で働く。マシューと恋に落ちるが、第5シリーズで街を離れる。

 テレサ・モラレス(第5シリーズミシェル・ボニーラ声:弘中くみ子/第6シリーズアレックス・メネセス声:沢海陽子) 
 メキシコから夫婦で街へやってくるが、夫がクーガーに襲われ亡くなり未亡人となる。生活のため教師の職に就く。のちにジェイクと結婚。


   その他の人々

 クラウド・ダンシング (ラリー・セラーズ 声:中田和宏)
 白人に友好的なシャイアン族インディアンでありこの物語を象徴する重要なキーパーソン。シャイアン族に伝わる薬草の知識が豊富で、病に冒された瀕死のミケーラを薬草で救った。シーズン1の#3The Epidemicでミケーラの持っていた薬が底をつき、治療の施し様がなくなったが、彼の調合した薬草を飲むことによって他の患者の命までも救われた。ミケーラ曰く「命の恩人」。ミケーラ達の強い味方であり度々窮地を救う。ハンターに半殺しにされたサリーを助けたのも彼だった。シーズン1の#11Running Ghostで瀕死のサリーをミケーラの家まで背負って来た。サリーとは兄弟のように強い友情で結ばれている。仲間に危機が起こった際にはシャイアン族に伝わる祈りを捧げる。

 スノーバード (タントゥー・カーディナル 声:竹口安芸子)
 クラウド・ダンシングの妻 。後に米軍によるシャイアン族虐殺事件(ウォシタ川の戦い)により死亡。

 ダニエル・サイモン (ジョン・シュナイダー 声:野島昭生)
 第5シリーズで登場。サリーの昔からの友人だが、ミケーラに想いを寄せてサリーと仲たがい気味になるが和解。第6シリーズに町の住人になり、信頼される保安官となる。
 なお、演じたジョン・シュナイダーは、シーズン1の#10A Cowboy's Lullabyではダニエルではなくローレンのよろず屋に強盗に入るカウボーイの役を演じている。

 キッド・コール (ジョニー・キャッシュ 声:小林清志)
 コロラド・スプリングスを訪れたガンマン。町の保安官を務めた事がある。シスター・ルースと結婚。
シビントン大佐(テーラー・ニコルズ[パイロット版])
実在の人物。他の資料ではチビントン大佐と表記されることも。白人が開拓するフロンティアの実現のためならばインディアンを殺す事に何のためらいも持たない思想を持ち、実際に虐殺を行った人物。その考えはおかしいと指摘したミケーラを邪見にする。

 カスター将軍 ( ダレン・ダルトン[第1シリーズ]/ ジェーソン・リーランド・アダムス [第2シリーズ〜]/声:堀之紀)

 ジョージ・アームストロング・カスターは実在の人物。これも実在のインディアン虐殺者であるチビントン大佐に代わってコロラドに着任。実物と同様にインディアン虐殺を行う。第1シリーズより登場し長らくインディアンやミケーラ達を苦しめ、第3シリーズで出番を終える。