眠れる森の美女

 『眠れる森の美女』(ねむれるもりのびじょ、原題:Sleeping Beauty)は、1959年1月29日公開のアメリカ映画。ファンタジー映画。ディズニーの長編アニメーション映画。



 概要

 原作はヨーロッパの同名の童話であるシャルル・ペローの『眠れる森の美女』。1953年に作業を開始。だがこの頃、ウォルト・ディズニーはディズニーランドの建設と運営、テレビ番組・『ディズニーランド』に没頭し総監督のケン・ピーターソンにまかせっきりだった。そんな中で彼は音楽にピョートル・チャイコフスキーのバレエ音楽を使用する事を決めていた。それを本作より音楽担当となったジョージ・ブランズが見事に編曲しワルツで彩られた曲がいくつか誕生した。美術面ではアイヴァンド・アールが全体の美しいスタイルを創りだし色彩面ではメアリー・ブレアが退社前にこの作品の為にいくつかの美術ボードを作成した事で後を継いだトム・オレブが見事な色彩を創る事に成功。そして本作の目玉は大型映画ブームにあわせ70mmスーパーテクニラマ方式、6本サウンドトラック・ステレオ音響の使用であった。また、アニメーターの原画をセルにトレスする工程が手作業であった最後の作品でもある。
生前のウォルトが関わった童話を原作とする作品としては最後のものとなり、ウォルト・ディズニーの死後、ディズニーのアニメ映画で童話を原作としたものは本作以降1989年の『リトル・マーメイド』まで現れなかった。
 6年の歳月と600万$の費用をかけ、300人のアニメーター、セル画数100万枚。これはディズニー映画史上最も贅沢で豪華な長編アニメ映画である。だが興行収入は530万ドルにとどまった。ウォルト・ディズニーが、本作に注力出来なかった事が作品の質に悪影響を及ぼしたのではないかと指摘する論者もいる




       あらすじ

 ヨーロッパのある国に待望の王女が誕生し、「夜明けの光」という意味をもつオーロラと名付けられた。国中の人々がお祝いに訪れる中、生まれたばかりのオーロラに3人の妖精から贈り物が与えられる。1人目の妖精・フローラからは美しさが、2人目の妖精・フォーナからは歌の才能が贈られた。ところが、その場に現れた魔女・マレフィセントが呼ばれなかった腹いせに「16歳の誕生日の日没までに糸車で指を刺して死ぬ」という呪いをかけてしまう。まだ贈り物をしていなかった3人目の妖精・メリーウェザーは、贈り物の代わりに「死ぬのではなく眠るだけで、運命の相手からのキスにより目覚める」という魔法をかけた。
 オーロラの父であるステファン王は呪いが実現しないよう国中の糸車を焼却したが、3人の妖精はマレフィセントに気づかれないように自ら魔法を使うことを禁じ、人と同じように暮らしながらオーロラを匿い育てることを決め、彼女にブライア・ローズという仮名を付けて森の奥の家に移り住む。
15年が過ぎ、ローズは16歳の誕生日の日没後に妖精たちの庇護を離れて城に戻ることになっていた。3人の妖精は内緒で誕生日パーティの準備をするため、いちごをつんで来てほしいと言って外出させる。訝しがりながらも外に出た彼女は、たまたま近くを通りかかったフィリップと出会い、お互い相手が誰か気づかないまま恋に落ち、夜に再会する約束を交わして別れる。その夜、妖精たちからオーロラという自分の本当の名前と王女である事、そして既に結婚相手がいるという事実を聞かされ、フィリップに二度と逢えないと知ると、悲しみとショックのあまり泣き崩れてしまう。そこに居場所を突き止めたマレフィセントがつけ込んで呪いが実現し、オーロラは眠りに落ちてしまう。城ではお祝いの準備が進められていたが、3人の妖精はオーロラが戻らないことを知って悲しまないよう城にいる人々に魔法をかけて眠りにつかせた。
 その頃オーロラとの約束に従って妖精達の家を訪ねたフィリップは、呪いを解かれることを危惧したマレフィセントによって拉致され、魔の城の地下牢に閉じ込められてしまう。ヒューバート王の寝言から呪いを解く運命の相手がフィリップだと知った3人の妖精は大急ぎで魔の城に向かい、オーロラを救うために「真実の剣」と「美徳の盾」を授ける。王子が魔の城を抜け出してオーロラの元へ向かった事を知ったマレフィセントは、行く手を阻むために城の周りにイバラを巡らせ、自らもドラゴンの姿になって妨害に行くが妖精の加護を受けたフィリップによって倒される。
フィリップのキスでオーロラにかかっていた魔法が解け、二人は結婚して幸せに暮らした。




  登場キャラクター

 オーロラ姫/ブライア・ローズ(Princess Aurora/Briar Rose)

 本作のヒロイン。日の光のように輝く金髪、バラのように赤い唇、長身、スリムなスタイルの美しい王女。青いドレスを着ている[5]。“16歳の誕生日の日暮れまでに糸車の針で指を刺さして死ぬ”という呪いを魔女マレフィセントにかけられてしまう。そこで呪いを避ける為、3人の妖精(フローラ、フォーナ、メリーウェザー)によって、森の奥の小屋にかくまわれ、農家の娘ブライア・ローズという名で育てられた。16になって城へ戻ることが決まるが、彼女の存在を嗅ぎつけたマレフィセントに操られ、呪いが成就してしまう。
 ディズニープリンセスの一人。

 ステファン王(King Stefan)

 舞台となる国の国王でオーロラの父。ほっそりとした体型に黒髪に黒い口髭を生やしている。作中での言動を見るにかなりの心配症の様である。

 リア王妃(Queen Leah)

 ステファン王の妃でオーロラの母。容姿がオーロラにそっくり。新訳版以降はただ「王妃さま」と書かれているだけになっている。

 フローラ(Flora)
 三人の妖精の一人。リーダー格。オーロラ姫の隠蔽を提案した。赤い服が特徴でピンク色が好き。メリーウェザーとはよく喧嘩をする。オーロラの誕生に際しては「美しさ」を贈った。

 フォーナ(Fauna)
 三人の妖精の一人。おっとりした性格で涙脆い。緑の服が特徴。フローラとメリーウェザーの仲裁によく入っている。料理好きだが腕前はかなり下手。オーロラに「美しい歌声」を贈った。

 メリーウェザー(Merryweather)
 三人の妖精の一人。ずんぐりむっくりとした体型で、他の2人がグレーの髪なのに対して1人だけ黒髪。何かと不平不満が多く、フローラとはよく喧嘩をしている。マレフィセントの呪いを修正した。青色を好み、自分も青い服を着ている。怒ると腰を振る癖がある。

 マレフィセント(Maleficent)
 本作の悪役。黒くねじれた2本のツノと、炎のような黒い服を着た魔女。自らを「悪の頂点に君臨する者」と呼ぶ。2014年、このマレフィセントを主役にしたスピンオフ映画が公開された。

 フィリップ王子(Prince Phillip)
 隣国の王子。オーロラ姫の許婚。幼い頃は金髪だったが、成長後は茶髪になっている。幼少時に父ヒューバート王と共にオーロラ姫の誕生祝いに訪れたことがある。成人後に森で暮らしていたブライア・ローズ(オーロラ)と出逢いお互いが婚約者同士とは知らずに恋に落ちる。後に呪いの為に倒れた姫を救うべく魔女との戦いに向かう。

 ヒューバート王(King Hubert)
 隣国の国王でフィリップの父。白髪に白い口髭を生やした恰幅の良い体型をしている。作中ではステファン王とは「古くからの友人」と紹介されている。性格はかなり陽気だが少々気が短い様子。

 サムソン
 フィリップ王子の愛馬。黒いたてがみの白馬。賢くはあるが主人のフィリップを勢い余って木に引っかけて投げ飛ばしてしまうなど調子に乗りやすい所がある。

 ディアブロ
 マレフィセントのペットで黄色いくちばしの大きなカラス。オーロラの隠れ家を真っ先に探し当てたり、妖精の存在にいち早く気がつくなどかなり賢い。フィリップが逃げた事をマレフィセントに知らせようとした際、気配を察したメリーウェザーから逃げ回った末に石像に変えられた。

 グーン
 マレフィセントの手下。鎧を着た豚の姿をしている。たくさんの数がいるがオーロラを赤ん坊のままだと思い揺りかごばかりを探し回るなど全員おつむが悪く、マレフィセント自身も頭を抱えている。