蛮法



 新聞を読めば猫が邪魔しに遣って来て、叱ると背に乗り喉鳴らす。立憲民主党が原発ゼロ法案を提出したニュースが載って居た。

 立憲民主党は9日にも、「原発ゼロ基本法案」(全25条)を、社民党などと国会に提出する。「原発廃止・エネルギー転換の実現は未来への希望である」。法案はこう高らかにうたい、同党の枝野幸男代表は「国民が『おかしい』と関心をお持ちいただくことに役立つ材料を提起できるかが、野党の責任だ」と述べる。法案を見ると、電力供給網の維持など、脱原発後の具体像は見えず、確かに「おかしい」所ばかりだった。 (中村雅和)

 中東で戦争が起き、ホルムズ海峡が封鎖されたら如何する心算で有ろうか、法規制付きの節電や計画停電の計画をさせるので有ろうか。炭酸ガスの排出での地球温暖化を如何して防ぐのか。

 九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)をはじめ、国内の原発の総出力は4148万キロワットで、全電源の15%に当たる。これがすべて停止した状況を、日本国民は経験している。 関西電力大飯原発4号機が停止した平成25年9月から、川内原発1号機が動く27年8月まで、原発稼働はゼロだった。電力供給に支障がないよう、電力会社は巨費を投じて石炭や石油、天然ガスを輸入し、発電所で燃やした。借金を重ねた電力会社は値上げに追い込まれる。九電は家庭用で6%、引き上げ幅最大の北海道電力は、2回で計24・28%もの値上げになった。
 経済産業省資源エネルギー庁によると、家庭用電気代の全国平均は、東日本大震災前の22年度の20・4円(1キロワット時当たり)から、28年度は24・6円になった。産業用も13・6円から17・4円にまで上昇した。

 原発ゼロ法案が施行されれば再び、電気料金値上げの時代がやってくる。しかも、前回の原発ゼロ期間中、電力会社は所有する原発が数年後に再稼働することを前提に、値上げ幅を決めた。二度と原発が稼働しないということになれば、より大幅な値上げは避けられない。 中小企業や低所得者への悪影響が予想される。「草の根からの民主主義」が立憲民主党の金看板だが、安易に原発ゼロを進めれば、草の根が枯れてしまう。法案は原発ゼロを補うために、省エネと再エネを挙げる。耳に響きの良い言葉だが、到底、論理的とはいえない。22年の電力総需要は約1兆キロワット時だった。法案の省エネ目標は、42年に30%減の約7千億キロワット時にする。一方、経産省が27年7月にまとめた「長期エネルギー需給見通し」は、42年度の見通しを9808億キロワット時と、25年度の実績(9666億キロワット時)並みと設定している。試算は、年1・7%の経済成長を前提とする。放っておけば1兆1769億キロワット時に膨らむ電力需要を、高効率化や省エネによって9808億キロワット時に抑える計画だ。原発ゼロ法案は、さらに2千億キロワット時もの省エネ上乗せを求める。 家庭を含め、乾ききった雑巾を、さらに絞る努力を強いるものといえる。 もちろん、経済成長どころか経済衰退を前提とするなら、実現可能だろう。再エネについても、法案の数字を真に受ける訳にはいかない。28年度の実績で、電力供給量に占める水力発電を含む再エネの割合は約15%だった。政府の長期エネルギー需給見通しでは、42年度に再エネ割合を22〜24%にまで引き上げるとする。経済産業相の諮問機関、総合資源エネルギー調査会の試算では、出力100万キロワットの原発1基が年間に起こす電気を太陽光発電でまかなうには、58平方キロメートルの土地に、パネルを敷き詰める必要がある。東京の山手線内側とほぼ同じ面積だ。全原発(総出力4148万キロワット)をカバーするには40倍、約2300平方キロメートルの土地が必要となる。佐賀県1県分と同じ面積だ。風力発電では、太陽光の3・4倍と、さらに広大な敷地が必要となる。
 「自然環境の保全との調和に配慮しつつ、再エネ供給量を増加させる」(3条3号)どころか、環境の大規模破壊が予想される。さらに再エネの固定価格買い取り制度(FIT)による、国民負担がある。経産省の試算では、42年度のFITによる買い取り費用は、3・7兆〜4兆円となる。現在の7〜8倍にも達する。この費用は最終的に、国民が負担する。しかもこの数字は、再エネ比率が22〜24%を前提とする。原発ゼロ法案にある再エネ比率40%では、負担はさらに膨らむ。それでいて、太陽光も風力も、発電量は天候に左右される。「夜は停電しても構わない」。立憲民主党がこう考えているならいざ知らず、大規模な蓄電池や、非常用の火力発電所などへの設備投資も欠かせない。そもそも、施行5年後に原発を停止しながら、省エネや再エネの目標達成時期は平成42年度。その間については、「安定供給の確保を図る」と唱えるだけだ。無責任な態度と言わざるを得ない。再エネは「輸入」産業と化している。特に太陽光パネルは安価な海外製に押されている。一般社団法人「太陽光発電協会」(東京)によると、28年の国内のパネル出荷量は、26年に比べて3割も減少した。昭和シェル石油グループは今年2月、太陽光パネルの販売伸び悩みに対応するため、国内3カ所のパネル生産拠点を国富工場(宮崎県国富町)に集約したと明らかにした。約50人の希望退職も募集したという。風力発電用の機器なども、海外勢との競争にさらされている。さらに、原発ゼロが季候変動問題、すなわち温暖化防止に寄与するという説明を、額面通り受け止めることはできない。

 環境省所管の「国立環境研究所」によると、日本における二酸化炭素排出量は、平成22年の3億7612万トンから、ほとんど原発が稼働していなかった27年は、4億3663万トンに増加した。

 原発ゼロがもたらすものは、希望ではなく絶望ではないか−。法案の実現性を詳細に見ていけば、その不安をぬぐい去ることはできない。

■第8条 この法律施行後5年以内に、すべての発電用原子炉等の運転が廃止されることを目標とする(要旨)

■8条2項 政府は電気の年間需要量について、平成42年までに平成22年の需要量から、30%に相当する量以上を減少させることを目標とする

■8条3項 政府は電気の供給量に占める再生可能エネルギーの割合を、42年までに40%以上とすることを目標とする

■前文 原発廃止・エネルギー転換の実現によって原発輸出に代わる新たな輸出産業を創出し…実現による低炭素化の促進は、地球規模の緊急課題である気候変動問題の解決に資する(産経新聞より)

 法案が通ると日本共産党等が中心と成って行って来た脱原発訴訟が無駄に成る。本来は法律で停めるのが筋、裁判官が替わると決定が替わる可笑しな事も無くなる。

 当時民主党の首相の菅直人氏が無法に原発を停めて日本から流出した国富は25兆円以上に上る。政府が原発を停めたのに、法規制付きの節電や計画停電の計画をさせた前例が有る。関西電力では計画丈で実際には計画停電は無かった。施行後は原発差し止め仮処分訴訟が無く成る利便性は有る。