馬鹿貝

 三男の雄三の趣味はパソコンの組み立てで有った。64ビットのパソコンの組み立てに挑戦して見た。 大物のフルタワーのパソコンケースや重たい大容量の電源や、高価なデュアルのマザーボード、デュアルコアのCPUのパッケージ等はインターネットで発注した。小物は日本橋まで買い集めに行ったりもした、肝心の64ビットOSはパッケージ版が無くOEM版をハードディスクと一緒に買って来た。メモリーは特殊で高価なレジスタータイプしか起動しない。DVDはカートリッジタイプも使えるマルティドライブを選んだ。マザーボードやCPUは高価で有る。組み立て中に壊しては大変で有る。人体の静電気でも壊れるので有る。ドライバーをマザーボードの上に落としても壊す場合も有るので有る。組み立ては細心の注意が必要で有る。最初に通電しスイッチを入れる場合には、体を清め神に祈りましょう。異常な場合には通電の遮断が直ぐに出来る様にスイッチに手を添える心心算が必要で有る。雄三は神に祈り乍通電しスイッチを入れた、スイッチの不具合かスイッチが入ら無いので有る。サーバー・ワークステーション用の高価なマザーボードもスイッチで不具合有り。長く押して居るとスイッチが入ってCPUファンが廻り出した。スイッチを入れて居無いのに通電で起動してしまったりもするので有った。異常が有ればブザーの回数、長さで原因が分かるので有った。メモリの種類を間違えると起動すらしない。ブザーも鳴らずディスプレーに何やら英文が表示された。Deleteキーを押してBIOSの設定画面に進んだ、月日と時間を確認し起動ディスクをCDに変更した。OSのCDをDVDドライブに挿入して設定画面を終了すると再起動が掛かった。セットアップのプログラムも正常に起動し、OSのインストールも自動的に問題無く出来た。問題は64ビットのドライバーの調達で有る。大部分はマザーボードに添付のCDで調達出来たが、グラフィックドライバーはインターネットのメーカーのホームページで調達出来インストールが完了した。ワープロソフトのOASYSもインストール時に警告が出たが問題無くインストールが出来た。雄三は八台のHDDにOSをインストールしないと気が済ま無いので有った。同じ事を八回行った。マルチブートで有る。其の全部で九台の内部HDDの発熱位で不具合が発生するとは想像もしなかったので有る 初期不良の無料補償の期限の二週間は何んの問題も発生しなかったが。或る日の事、インターネットでで閲覧して居る最中に突然電源が落ちる不具合が発生した。一大事で有る。ワープロの最中なら折角入力した文章のデーターが消える恐れも有る。HDDも読み取り不可に成る可能性も有る。二月分の給料を犠牲にしての高価なパソコンも使い物に成らなく成った。再びスイッチを入れると問題無く起動しチェックディスクが掛かりHDDの検査を始めるので有った。困り果てた挙句に、或る日新聞の広告のチラシにパソコンの修理、インタネット接続、ウイルス駆除、OSの再インストール等万請負ますと言うのが目に入った。原因が何ぼ考えても分から無かった雄三は早速電話を入れた。
 次の日曜日に熟練のエンジニアが来て呉れる物と思って居ったら、変な女が大き目のスーツケースを持って遣って来た。何やら美人だが中国人の様でも有った。何やら下品で有った。
 マザーボードのメーカーは何故か台湾に多い。日本製は殆ど皆無に近い。
 女は早速パソコンの蓋を開け、コネクターの緩み等をチェックし出した。そして蓋を開けた儘スイッチを入れて起動の様子を見て居った。何時まで経っても電源は落ちず、不具合の再現は起こら無かった。
「何もしなくても出張費は頂ますわよ」と言った。女はスイッチを切り、蓋を閉めた。「貴方、私を困らせようと意地悪して居るんでしょ」「そんな筈は」男が再度スイッチを入れると問題無く起動したが暫くして突然に電源が落ちた。「ほれ、観ました」「あら、本真」「何で・・・」絶句する女。
「其れを聞きたくて呼んだんです」「貴方の身体が穢れて居るのんと違うか、一度神社に御祓いに行ったら」女はは御店に携帯電話を掛けたり、難しい漢字ばっかりの中国文のマニュアルを読んだりして居った「直ら無くても修理代は頂ますからね」女も念を押し乍も悩んで居った。
「喉が渇きましたは、コーヒーを頂けません」「インスタントで良ければ」
「ああ、疲れた、分からへん、もうやんぴ」女は絨毯の上にヒックリり返り足をばたつかせ子供みたいに地団駄を踏んだ。男は呆れ返ってしまった。
「一寸憚りを拝借しますわよ」「ええ」「御不浄、御手水、御手洗い、御便所・・・」「トイレですか」「なあ、貴方、御腹空かへん、もう直ぐ昼よ、昼食を御馳走して下さらない」「インスタントラーメンなら」「昼休みは一時間頂きますわよ」女は昼食を取って座布団を枕代わりに昼寝を始めてしもうた。飼い猫の三毛猫が何処からか遣って来て、初めての客なのに気にする気も無く御腹の上に載って昼寝を始めた「御免、男の人の前でおなら放いてしもうた」呆れた女で有った。
「うちの御店はパソコンの修復、ウイルス対策以外にも万相談にも応じて居りますのよ、一人暮らしでの御不自由は御座居ませんの」何やら春を売る心算らしい。パソコンの修復は隠れ蓑で有ったので有る。春を売って法外な修理代、出張費を請求して居ったので有った。
「うんこがしたく成ったわ、又、憚りを拝借しますわよ」相変わらず下品な女で有った。
「修復が出来なんだ御詫びに良い事させて上げる、嬉しくておしっこチビリなや」
 女は春を売って居ったので有る。正体を出し出した。
「なあ、貴方、電車に乗って前に座った女のスカートの中に手を入れたいと一度も思った事無いか」
「一度位は」「さして上げる」「えええ」女はとんでもない事を言い出した。
「欲情を抑えられなくて痴漢をしてしまう人迄居るねんえ、この大阪に女性専用電車が走って居るなんて世界に恥さらしや」
「おしっこチビル程気持ちの良い事一度してみたい」女は真昼間から発情してしまって居った。
「其れでもプロなのか、パソコンの修復は如何する気か」
「原因が分かっても教えて上げ無い」女は意地悪をした。男はあきれ返って居った。
「BIOS設定を変えたら直るので有ろうか」「おしっこさせて」
「BIOSのアッパーデートをした方が良いので有ろうか」「やや子が欲しい」
 女が粗相をしそうなので雄三は慌てて便所に連れて行きはしたない事をしてしまったので有る。女は恥ずかしさの余り放心気味で有った。間の悪い事に実家の遠い親戚の葬式の帰り、便所を借りに立ち寄り便所に駆け込んだ喪服の母は出て来た雄三を見て「腹でも壊したか」入ろうとすると思いも掛けない女が大便所から続いて出て来るのを観て仰天してしまったので有る。
「真昼間から二人で憚りで何をして居ったのじゃ」
「この女は何をしに此処に来て居るのじゃ」「この人はパソコンのプロのエンジニアじゃけん」
「技術者が其方の前で尿垂れをしよるのか」「其方は慰謝料でも請求する心算か」
「こんな辱めを受けてはもう恥ずかしくて御家には帰れ無い」「其方迄なんて事を」
「其方がしっこがしたいと駄々を捏ねるからパンツうを脱がせて上げ丈じゃが」
「そんな恥ずかしい事をしてしもうたんか」「女の名は」「・・・」「名も知らぬ女にあんな事をしよったんか、阿呆たれ」「もう何も言わぬ、此れ娘、わても泊まるよってあんたも泊まり、晩御飯の用意をせんとな、あんたも手伝い」なにやら可笑しな事に。女も女で有った、母親の誤解を良い事に夫婦に成った様な気に成って居ったので有る。女は澄まし顔で夕食を頂、雄三が風呂に入って居ると女が入って来てしもうた。
「御母さんが一緒に入りて」澄まし顔で何でもしてしまう女。前を隠そうともせぬ女。雄三は女の陰部を見てしまい、馬鹿貝の事を思い付いた。パソコンの蓋を開けた儘使用すれば電源は落ちぬかも。
 女は蒲団を敷きだし枕代わりの座布団を持って来て、一緒に並べて置いた、一緒に寝る心算らしい。
 女の寝相の悪さと来たら、大股開きで寝て居った。三毛も何やら呆れて居った。
「心配しな来週の日曜日も来て遣るよって」                            蓋を開けた儘では二度と電源は落ちなかったが、女は次の日曜日も其の次の日曜日もパソコンの修理にと遣っては遣って来た。其の内御腹が膨らんで来た。やや子が出来たので有った。男は結婚する羽目に成った。やがて女は女の子を産み落とした。相変わらず下品では有ったが良き母親で有った。
 油断して居ると母屋まで乗っ取られそうで有った。



            2006−03−19−112−01−OSAKA



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