盆踊りの後で

 日本人は禁欲的な国民性か、余程楽しい事が有っても、ラテン系の人の様に、日常では滅多に踊り出したりはしませんが、盆踊り丈は夜遅くまで踊り明かす人まで居る。盆踊りには、御盆に帰って来た御先祖を霊を慰め、無事に送る為の行事でした。又、故人が供養のおかげで成仏できた喜びを表現して居るとも言われて居る。
 盆踊りの帰りに、夜陰に乗じてか、立夫は道端で小用を足して居たら、幼馴染の変な女の千恵子に見付かってしもうた。
「あんた、何処でおしっこしてんねんや、恥ずかしくは無いのんか」「男の人は良いな、何処ででも出来て、うちも催して来たけどあんた見たいに此処でする訳には行か無いしな、あんたの家は近くやろ、御便所貸して」女はモジモジしだした。
「ああ気持ち好い、スーとしたわ、ああ疲れた」用便を済ませ女は疲れて浴衣の裾の乱れも気にせず、座敷に大の字に成って横に成ってしもうた。
「この家も懐かしいわね、あんたに宿題を散々させれれ、業と下手な字で書いて居たら、本当に下手な字に成ってしもうたわ」「ええ、あの時の猫、未だ生きて居るの」「生きて居る訳無いだろ、三代目じゃ」「そらそうやわね」「家に来る人は皆家族と思って居る」時が流れて居ったので有る。二人共其うは若 くは無かったので有る。
「お母はんの夏枝はんは未だ元気か」「親戚の家の法事に泊まり掛けで行ってる」
「うちが蒲団を敷いてあげる」
「男臭い蒲団や事」「相撲取れへん、うちに勝ったら夫婦に成ってあげる」敷布団を敷くと相撲を取りたがるので有った。
「あああ、又負けてしもうた、あんた見たいな男の女房にさせられてしもうた」子供見たいに脚をバタつかせて悔しがった。「あんた、寝る前にはおしっこしとくねんで」母親の様でも有った。
 何やら帰るのが面倒臭く成ってしまったらしい、座布団を二つ折して立夫の枕に並べて置いた。
「言うとくけど、変な事した拳骨で叩くで良いな」怖い女で有った。

 朝に成って立夫は千恵子の寝相の悪さに唖然としてしまった。犬の字に成って寝て居ったので有る。
 腋毛も剃る気も無いのか、ブラジャーも付ける気も無いのか丸見えで有った、何やら猥褻で有った。女の乱れた寝姿にムラムラと成って犯してしまって居る最中に女は目を覚ましてしまった。
「こら、あんた、今何して居るのや」「静かにしろて」
「夫婦に成ってしまって居るのか」「煩い」
「やや子を作って居るのか」「黙れ」突然サイレンが鳴り響いた。一度丈の時は訓練だが、訓練では無いらしい。「あんた、火事と違うか、出動しゃん成らんのと違うのんか」射精の極快感の最中で有った。
「何考えてねんや、其れでも消防団員か、続きは後でさせてあげるよって、我慢し」御尻を散々叩かれてしもうた。
「ええか、帰って来る迄留守番しとくねんで」立夫はもう亭主気分で有った。
 立夫は慌てて制服に着替えた。「あんた、帽子、ズボンのチャック開いてんで」女房気分の女。
 半長靴を履いて分団のポンプ小屋の前に駆け足で集合した。

 猫が腹を空かして脚に纏わり付き餌を強請った。「御前は暢気で良いな、近くで火事が起きて居ると言うのに」
 女は時間を持て余し盆踊りの練習をして居ったら、母が帰って来てしもうた。
「これ娘、こんな処で何をして居る、あんたは千恵子ちゃんか、もう夫婦に成ってしもうたんか,このふしだらな売女めが」御尻を叩かれてしもうた。恋等一度もした事の無い意気地無しの立夫で有った。
「火事の為に初夜は中断してしもうた」「うちの家は古くて広いが、恥ずかし乍、我が家の台所は火の車じゃ、其方がやや子を産んでもしたら又物入りじゃ」「お母はんは歳いって寝込んだら誰に下の世話をして貰う積りですか」嫌味を謂うた。「あんたなら、わての尿糞の世話まで嫌がらずにして呉れるのんか」 火事は消防分団の賢明の努力で消防車が来た時には既に勢いも収まって居った。やがて火事は鎮火し後は消防に任せて消防分団は引き上げた。最近は小型の消防自動車を構えた消防分団も多いが以前は移動式のポンプ車で頑張って居ったもので有る。人が火事場迄引っ張って行ったので有る。ポンプを動かすにも一寸した技術が要った。小川の側の道端で団員達は鎮火し安堵してか連れもって小便をして居たら、又千恵子に見付かってしまった。
「又、こんな処で制服を着た儘、おしっこ何かして、恥ずかしくは無いのんか、出初式の積りか」
「あんた、あの続きは何時するねんや、結婚してからか」皆の前で言うてしもうた。
「お母はんに何とか言って、うち御尻を叩かれてしもうたわ」「売女(ばいた)と言われてしもうた」

 立夫も母の夏枝にに叱られ「責任を取って結婚する」と言い出してしまったから女は遣りたい放題にしてしまった。婚礼も挙げぬ内に家に押し掛けて来て仕舞った。
「千恵子ちゃん又来てるのんか」女の下品さに母は唖然としてしまった。
 座敷に新聞を大きく広げて読んで居ったら、猫が遣って来て背中に載った。「何時まで載って居るのじゃ」腰を前後に揺すって払い落とそうとするので有った。食事中に平気で鼻をかむわ、処構わず屁を放くわ、前掛けの前を淫らに弄るわ、朝顔で起ち小便わするわ、犬の字に成って寝て居るわ、便所の扉も閉めずに用を足してしまうわ、変な踊りを踊るわ、急に催してわ、嚔をした拍子にパンツを濡らすわ、不精して便所にも行かず我慢出来無く成ってから駆け込むわ、風呂では照る照る坊主を作って遊ぶわ、水鉄砲で遊ぶわで有った。

「あんた、今夜は続きをしましょ」平然と催促をするので有った。
「又、相撲取ろ、うちに勝ったら夫婦に成ってあげる」「ああ、又、負けてしもうた」
 そんな女にも子供の頃からの悩みが有った。
「彼の最中におしっこチビッテてしまったら如何しよう、うち恥ずかしい」恥ずかしがって顔を両手で覆うので有った。

 又、暑い盆踊りの夏が遣って来た、やや子が出来て御腹の大きい女は其れでも盆踊りに出かけて行って踊ってしまうので有った。女子相撲の大関の様でも有った。盆踊りが終わり。家路に付く二人。
「ああ、疲れた、喉も渇いたし、おしっこもしたく成ったわ」
「ああ、もう我慢出来へん」女は身重の為か我慢が出来ず道端で御尻を捲くって起ち小便を始めてしまった。「あんたもし、うち、恥ずかしいやないか」ふたりは連れ尿をして居った。満月の月夜の晩は恥ずかしい程に明るいので有った。堤燈を買う御金も無かった貧乏人の多かった昔は、月光丈が重要な明かりでも有った、夜祭や盆踊りも満月の日を選ぶ必要が有ったので有る。
「あんた、この大阪に女性専用列車が今だに走って居るのん知ってた、世界に恥晒しも良いとこやわ、あんたは痴漢なんか絶対したらあかんで、女の御尻や御乳を触りとう成ったら何時でもうちが触らしたるよってな」
 女は女の子を産み落とした、次の歳には、やや子を姑の夏枝に任し切りで盆踊りを踊り呆けて居ったので有る。「あんたの、お母ちゃんはあんたをほったらかして盆踊りに踊り呆けるて居るで、困った者んやな、わての御乳を吸わしてあげよか」嫌味をやや子に言うた。
 千恵子は盆踊りの晩は家に帰るなり便所に駆け込むのが常で有った。時には御粗相をしてしまい又姑の夏枝に叱られるので有った。其れでも懲り無いらしい。次の歳も次の歳も同じで有った。真に踊り好きで有った。呆れた女で有った。





            2006−08−20−154−01−OSAKA



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