姉さまのおもよおし

 兄の太郎は或る総合商社の海外支店に長く赴任して居た。アンナはスペインから大阪の大学に留学して居った時に太郎と知り合ったのか、変な大阪弁を話すので有った。如何やらアンナと現地の教会で式を挙げて結婚してしまって居ったので有る。次郎の二人の姉の春子と夏子は既に嫁ぎ子供も出来て居たが、末の次郎丈が未だに結婚も出来ずに居た。恋等出きる筈も無い不器用者で有った。見合いをしては何時も断られて居ったので有った。未だ元気な婆さまは呆れ果てて親戚、知人中に容姿は問わず兎に角元気な娘を探す様に頼みこんだもので有った。
 父の善三は定年退職してから色呆けしてしまい。大阪の地下鉄で女子のお尻を触ってしまい、痴漢で警察に捕まってしまった。母の嘆きでも有った。家の恥晒しでも有った。
 不幸は続くのか、長男の太郎はスペインのバラハス空港の自爆テロの巻き添えを食って亡くなってしまった。葬式も済み、四拾九日の法事も済んだ或る日、変な外人娘が遣って来てしもうた。遺産目当てと思うてか嫁いだ次郎の二人の姉達も気が気で無かったので有る。色呆けしてしもうた父は嫁御と女房の区別が付か無いのか御尻を撫でるわ、御乳を触るわ、前を触るわで有った。嫁御も嫁御で母者の手前か我慢してか触らして居ったので有った。
 太郎の嫁御のアンナの悩みは日本式の大便所の不便さで有った。しゃがむと脚が痛むので有った。或る日の事、大便所に父の善三が用を足して居て困った時に婆さまが朝顔で奇妙に小用を足すのを見てしまい、誰も居無い日に試して見たら、病み付きに成ってしまた。下品な恥ずかしい話で有る。或る日の朝、大便所で次郎が用を足して居ると急に小用を催したのか嫁御のアンナは慌てた、如何にも我慢出来無く成ってしまい、矢庭ににスカートを捲くり朝顔で小用を足してしまった。
「姉さま、御待たせ」「もう、済ませましたわ」唖然としてしまう次郎。
「御父はん、又、嫁の御尻なんか撫でて。あんたもあんたや、御尻を撫でられたら引っ叩いたり」
「お父さまを叩くやなんて」其れを見て居た次郎は或る日兄嫁の御尻を撫でたら。
「こら、何をしおるか」痛い拳骨が頭に三発も飛んで来た。
「あんた、最近肥たんと違うか、見っとも無いで」
「お母さん喜んで、私に子が出来たみたいやねん」
「え、何やて」「やや子が出来ましてん」
 生まれて来る子供の行く末を案じ、婆さまは次郎と夫婦にする事を勝手に決めてしもうた。母も婆さまが病気で倒れた時に自分が介護するのが嫌なのか婆さまの言う通りにした。嫁御は嫌がって断るるかと思ったら「かまへんえ」と一つ返事で有った。婆さまは次郎を自分の部屋に呼び寄せて、兄嫁のアンナと夫婦に成る様に言い聞かせた。
「女伊達らに平気で立小便をする様なあんなアンナと夫婦にするんか」「立って尿はわてもする」
「兄者の子を自分の子として育てるのか」「世間には良く有る事じゃ、珍しいことでは無い」
 或る夜の事、嫁御のアンナが一人で御風呂い入って居ると、妻のしのぶと勘違いしたか、父が裸に成って湯殿に忍び込んで、身重のアンナを襲ってしまった。アンナはバスタオルを腰に巻きつけた丈で浴室を飛び出し次郎の部屋に助けを求めた。
「姉さまたら何てはしたない格好で」
 父に愛想もこそも尽き果てた母は或る恐ろしい謀の計画を立てた。
 或る真夜中にアンナが次郎の寝間に忍び込んで来た。
「姉さま、はいたない夜這い等」「お母さまの様子が可笑しい、お父さまの寝首を掻く気らしい」
「何んやて」「白帷子何か纏たりして、死に装束の心算ですよキット」
 母は父を殺そうと寝間に忍び込み見つかってしまい、逆に犯され父は興奮しすぎて妻の上で心臓麻痺で死んでしまった、所謂腹上死で有る。
 無事に葬礼も済みんだ或る朝目が覚めたら側に兄嫁のアンナが寝て居ったので有る。
「姉さま、はしたない」「かまへん、かまへん、もう夫婦やし」
「姉さまは腋毛は剃らぬのか」「何処を覗き観居るか、此の阿呆垂れ」痛い拳骨が又頭に飛んで来た。
 父の四拾九日の法事に二人の娘も帰って来て、文句百垂れ。
「次郎も可哀想や、お古ばっかり宛行われて」
「お父はんもお父はんや良い歳放いて色呆けしてしもうて、見っとも無い」
「次郎、あんな毛の茶色い外国人のアンナを本真に嫁にする心算か」

 婆さまが腰が痛いので温泉場に湯治に行きたいと言い出し母を連れて有馬へ行ってしまった。
「あんたのお母さんも暢気やわね、間違いでも起きたら如何するきなんやろな」
 二人きりで夕食を取って居た。
「嫌ややわ、私ったら、食事中なのにもよして来てしまいましたわ」ともじもじと何やら猥褻で有った。「姉さまたらはしたない」
 次郎が風呂に入って居ると。
「お背中を御流し致ますわ、御一緒させて下さい」
 アンナは前を隠す気も無いのかスポンポンで入ってきてしまった。次郎は目の遣り場に困ってしまった「嫌やわ、又催して来てしもうた、さっきしたとこやのに、困ったわ此処でしてしまおかしら」
「姉さまったらはしたない」間違いが起きてしまったので有る。

 朝に成って次郎は散々言われてしもうた。
「そなたは病気か、身重の兄嫁を辱めるか」
 婆さまの腰痛が癒え、母者も帰って来たが二人は既に夫婦と成り一つ蒲団で寝て居ったので有った。婆さまの心配も消えたので有る。二人は自宅に親戚を呼び、仏壇の前で古風に仏式で婚礼を挙げた、式の最中に急に「もよしてきましたわ」呆れた花嫁で有った。
 やがてのかアンナは玉の様な男の子を産み落とし、或る吉日に母者と一緒に近くの佐太天神宮に宮参りに詣でた。何やら自慢気でも有った。家に帰る成り何やらもじもじと如何したのか、又、もよしてしもうたので有る。憚りに駆け込んだら婆さまが使用中、慌てたアンナは着物の裾を捲くって朝顔で小用を足してしもうた。相変わらず下品で有った。









          2007−02−10−200−01−01−OSAKA



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