土塊の如くに

 人の人生も天気の如くで有る。晴れの日ばかりでは無い、曇りの日も有れば、雨の日も有る、百年に一度の大雨も降り、千年に一度の洪水も起こるので有る。大阪を流れる淀川もかって堤防の上から手が届く程に増水した事も有る。両岸の堤防の高さは誰が決めるの有ろうか。同じなら両方同時に決壊する事に成るが。淀川の主の大真鯉も形無しで有る。流されまいと岸に集まり童の餌食に。土を良く搗き固めた昔乍らの堤防は堅牢で有るが、ブルドーザーで造った最近の堤防は良く決壊するので有る。土っは含まれる水分が多いと何ぼ搗いても締まら無いので有る。度重なる洪水の為に、神の怒りを鎮める為に生娘を人柱にした悲しい悲しい昔の物語も有る。
 土石流は最悪で有る。巻き込まれれば先ず助から無い。人と土塊の区別も付き難い。大岩も浮かぶが如くで有る。鉄砲水と言う言葉も有る。直撃を喰らうと家も倒壊する。
 一旦、洪水に成れば大変で有る。家が流され無くとも、水が引いても、街中が泥田の如くに成ってしまい、唖然とする人も多い。水分を大量に含んだ粘土は処理が大変で有る。乾いてしまうと硬く固まってしまい、土埃が舞い、又大変で有る。大都会のネオンを映す、水の都大阪の川もヘドロが溜まるので有る。浚渫工事も必要と成る。
 其の厄介な土塊も、竹籤を井形に組み、藁縄を巻き、刻んだ藁を混ぜた壁土で壁を塗利込むと雨風を凌げる優れた建材と成る。適度に水分を調整し、コンクリートの壁よりかわ快適で有る。土壁の欠点は雨水で有るが、焼き板で被たり、漆喰を塗り重ねて防いで来た。
 雨の降ら無い、砂漠では昔から日干し煉瓦が使われて来ました。地震には弱いが、雨さえ降ら無ければ日干し煉瓦でも充分で有ったので有ろう。其の煉瓦を使って何階だてもの建物も建てられたりもする。当然一階と最上階では壁の厚さが違って来ます。使用する日干し煉瓦の大きさも違って来ます。日干し煉瓦も日本と違い砂漠では完全に乾燥し可也硬く成るので有ろう。其れを焼くと石の様に硬い煉瓦と成るが、煉瓦を焼く為に森林破壊が起こった例も有る。煉瓦は焼かれて土塊が石の様に硬く成り、其れで造られた建築は文明開化の象徴的な建物でも有ったが、関東大震災で多くが失われてしまった。最近ではコンクリート建築に変わってしまった。
 人類史上一番の転換点は火の使用で有る。火に翳す丈で肉や魚が焼け、くべる丈で硬くて美味しく無かった木の実や芋や穀物も美味しく食べられる様に成り。土塊で色んな形の物を作って、火で焼くと硬く成るので有る。土器の発明で有る。土器で物を煮る事が出来る様に成ったので有る。土塊で人や動物を形作った土偶や埴輪等が多数出土して居る。かって宇宙人と間違われた、雪眼鏡を掛けた珍しい土偶も有る。死者の御供の為に生き埋めされた悲しい物語を避ける為に、土塊で作った、土偶や埴輪に思いを託したので有る。最近ではセラミックの発達で食器の他に刃物の様な硬い物まで造られて居る。
 人生は余りにも過酷で有る、皆最後には死なねば成らないので有る。死ねば昔は地に埋葬する事が多かったので有る。大地に戻るので有る。最近は土葬はし無いで全て荼毘に付す、火葬にする事が法律で決められて居るので有ろう。今でも、世界には神が土塊から人の形を創り、魂を吹き込んで人を作ったとする宗教を信じ、教えを説いて居る宗教も有る。歴然たる生命進化の事実を知って居てで有る。神が偉大で有れば有る程自分が偉大に成った錯覚に陥る為でも有る。
 最近では陶芸を趣味にする人も多い、土塊が茶碗や湯飲み、花瓶に成るので有る。素人なら個性的な物も良いが同じ形、同じ大きさの物を多数作るのは至難の業でも有る。長年の修行を必要とする。
 日常使う食器の陶磁器が安くても出来の良いのが多いのも、機械に拠る大量生産の御蔭で有る。原版が有れば同じ物が際限なく作られるので有る。昔風の茶碗は素朴で未だに人の心を引き付けるものが有る。 朝な夕なに御世話に成る其れ等の大事な大事な瀬戸物を夫婦喧嘩の時に投げ捨てて割ってしまう人も多い。人の怒り、心の不条理が其処に有る。怒りに負かせての仕業でも有る。大事に使えば一生持つものを瀬戸物は割れる為に、需要も多い、古い瀬戸物は少なく骨董的価値も其れだけ高く成る。
 高価な瀬戸物を取り扱いには注意が必要で有る。落として割ら無い様にしなければ成らない。畳の上で落ち挙げずに鑑賞するのが一番で有る。大事な家宝の瀬戸物を割ってしまい成敗された悲話も有る。元は土塊で有る、人より物が大事の間違いに気が付か無い悲劇でも有った。陶芸の秘伝が外部に漏れるのを懼れ、一子相伝で長男だけに伝えたり、窯場の地から外部に出る事も許され無かった悲話も有る。女性の陶工への差別も有ったので有る。夫婦の様に扱き使われたのもので有った。同じ茶器を百個も焼き其の内の良い物数個を撰び、他は全て割ってしまう人も居る、自分の名前、芸術を守る為か。凡人には理解出来無い諸行でも有る。焼き物には窯変という変化が現れ、期待した以上の効果が出る場合も有る。同じ条件で焼いても二度と同じ物が出無い場合も有る。国宝にも成って居る油滴天目茶碗等も有る。元は土塊の瀬戸物に途轍も無い値段が付いて居るのも又事実で有る。滴天目茶碗に挑戦し続けて居る人も居る。陶芸の道は余りに奥が深い。
 最近自殺に因る死に急ぎが目立ちます。死んでしまっては土塊の人形にも劣るので有る。生きて居てこそ花で有る。如何に正当な道理が有ってもで有る。多くの生き物は天敵に殺され食べられてしまいます。個体の死が別の個体の命を支えて居るので有る。弱肉強食の世界で有る。食物連鎖の世界でも有る。森羅万象の輪廻の世界でも有る。其れは本人の意思に無関係に起こるので有る。生きたくても生きられ無いので有る。誰もが年老いてしまうので有る。テレビで若者が老人を馬鹿にしても誰も諭さ無いので有る。自分も年老いる事を忘れてしまって居るので有る。土塊を丸めて磨く人が居ます、つやつやと不思議に光るので有る、心の癒しにも成るのか。心を磨く為には、日々の節制、精進が何よりで有る。
 土塊で作られるオカリナと言う楽器が有ります。古代の旋律が聞こえて来そうな素朴な音色で有る。
陶器の楽器は焼くと大きさが変わり音色も変わる、作るのが難しいので有る。             たかが土塊、されど魂が宿るので有る。芸術で有り。至宝とも成るので有る。火の魔術でも有る。
 同じ土塊が、同じ窯で焼かれ、作家の気紛れな撰別で割られる壺と美術館に展示される壺では余りの雲泥の差でも有る。実に怖ろしきは人の心成り。



          2007−02−18−202−01−01− OSAKA



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