猫を被った女

 太郎は恋等した事も無いあかん垂れで有った。幼少の頃、二つも年下の女子に虐められた忌まわしい過去が有った。よって年下の女は大嫌いで有った。不憫に思ったお婆さまが或る日、縁談を持ってやって来た。太郎は見合い写真を一目見て気に入ってしまった。姉の着物を借りて居るのか、歳の割りには年増に見えた。淑やかで上品そうな娘で有った。
 二人は或る料理屋の二階で見合いをした。女も太郎が気に入ったのか、御不浄に行きたく成り何やらモジモジしだし、太郎を誘った。女は慎み無く気持ち良さそうに用を足し乍。
「あんた、贅沢言うたらあかん、うちで我慢しとき、やや子を産んでやるよって」
 女は気を良くし、近くの天神宮に御参りしたいと駄々を捏ね、家を見たいと言い出した。
「此の家も昔の儘やね」「以前に来た事が有るのか」「あんたとことは遠い親戚やないか、法事の時に何度か」
 太郎は行き成り女を押し倒し接吻してしまったから大変な事に。
「こら、何をしおる」太郎は御尻を叩かれてしもうた。
「呆れた男じゃ、未だ夫婦にも成って居無いのにやや子を作る気か」
「まあ良い、男とはそう言う者じゃ、多くを期待したうちが愚かで有った」
「あんたは未だ踏ん切りが着かぬ様じゃが、うちの言う事を聞き、又子供の頃の様に御尻を叩かれたいのんか」女は馬乗りに成り、太郎に詰め寄った。お婆さまに見つかってしもうた。
「豪い時に来てしもうた、それににても元気な娘じゃ」
「あら、お婆さま、うちら夫婦に成りますよって、宜しゅうに」女は勝手に決めてしもうた。
 子供の頃の忌まわしい記憶に困惑する太郎。
「真逆、泊まって帰る心算じゃ」「もう、手遅れじゃ、さっき夫婦に成ってしもうたじゃないか」
「キスしただけじゃないか」「又、しし引っ掛けるられたいのんか」
 女は式も挙げないで夫婦に成ってしまった。
 やがて、長女の冬子が生まれ、次女の夏子が生まれ、三女の秋子が生まれ、四女の止子が生まれた。
 如何しても男子が欲しい女は近くの天神宮に御参りしては願掛けをして居った。節子は誠にお淑やかで上品な女で有ったが、子供の頃の日記を盗むみ観して、驚愕してしまった。悪夢の女性で有ったので有る其の内、本性を現すのを懼れて居った。或る日、太郎が大便所でしゃがんで用を足して居ると・・・

「あなた、こんな辱めを私にして徒で済むとでも思うてんのんか」「ほほう、でけんのんか」
「あんた、もっと気を入れて遣りなはれ」不甲斐無い亭主の御尻を叩く女。或る日の午後、終に堪忍袋の緒が切れた太郎は野獣の様に女を犯してしもうたところを三女の秋子に見られてしもうた。

「うち、今日、とんでもないものを見てしもうた。真昼間からお父ちゃんとお母ちゃんが犬みたいに盛って居るのをみてしもうた、お母ちゃんたらおしっこ垂れしてしもうたんえ、うち恥ずかしい」「これ、盛るやなんて、はしたない言葉を口にして」と次女の夏子。「こんな話、他所で言うたらあかんで」と釘を刺す長女の冬子。「四人もの娘を産んで置いて、未だやや子が欲しいのんやろか」「うちも弟が欲しい、お母ちゃんの気持ちが分かるわ、もう姉ちゃんのお古ばっかりは嫌や」四女の止子。「又、女の子やったら如何すんねんや」「うちの名前止子やなんてもう嫌や、春に生まれたさかい春子に変える、生まれた子を止子にする」「勝手に名前なんか変えられへんで」「あんたら何、ひそひそ話ししてんねんや、御飯出来たえ」
 暫くして母者の様子が可笑しく成った。何やら幸せそうで有った、時々に鼻歌等歌って。如何やらやや子が出来たらしいので有る。近くの天神宮に願掛けした御蔭か。或る日、赤飯を炊いて祝った。
「何で赤飯なんか炊いたん、何か祝い事でも有るのんか」
「やや子が出来てんえ、止子喜び、あんたに弟が出来るねんえ」唖然とする四人姉妹。
「そんなん、産まれて見る迄わからへんのに」
 やがて母者は待望の男子を出産んした、太一と名づけた。願掛けが叶うたので有る。或る吉日に近くの天神宮に御宮参りに出かけた、何やら自慢げで有った。
 太一は病気もせずスクスクと成長したが、其の腕白なとこは淑やかな姉達とは大違いで有った。
「太一、又悪さして帰って来たんか、又謝りに行かんならんのんか」母者は嘆きの日々でも有った。

 太一は高校生にも成ると大人と変わらぬ筋骨隆々の身体に成った。柔道部の主将を務める程の男子に成った。仕切りに結婚したがる恋人も出来た。或る日、恋人の彩香が家を訪れたら、太一が母者に馬乗りにされて叱られて居った。
「まあ、元気なお母さんや事」彩香は高校を卒業前にやや子が出来てしまい。二人は卒業と同時に夫婦に成ってしもうた。
「あんた、猫被って居るのんと違うやろな、わての目は節穴と違うで」と母者


















          2007−05−07−217−01−01−OSAKA



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