婚約者

 外国語では恋人を婚約者と訳せる場合も有る。恋人とは結婚を前提とした関係で有る事を意味する。肉体関係を求め無い友人とは大きな語義の違いが有る。人目でも平気で接吻為たりで破廉恥な乱れた性、フリーセックスのイメージも有る現代のヨーロッパでは有るが、意外でも有る。古い現地の映画を観ると接吻も人前を憚る恥ずべき事として描かれて居る、ヨーロッパも日本と同じに恥の文化が昔は有ったので有る。女性のスカートは段々に短く成るものと子供の頃には思い込んで居たら、又長く成ったりで有る。くそ暑い真夏でもロングスカートを穿居て居る女性すら居る。科学文明際限無く進歩を為続けるものと思い気や、時に停滞や後退も有る。映画「2001年宇宙の旅」の様な世界が21世紀に成れば実現して居ると思って居たら未だ夢物語で有る。月世界旅行の再開の目処も無い。パソコンのCPUのクロックも際限無く高速化為るものと思い気や、限界が有るらしい。其の為か最近ではクアッドコアのCPUをヂュアルで装備した物も販売されて居る。勿論自分で組む事も出来る、64ビット版のOSも販売されて居るが、売れて居るとは思え無い。アプリケーションソフトの64ビット化は未だ未だで有る。目を見張る程の効果が出無いと安全な方を撰ぶ為でも有る。子供の頃は大人に成れば素敵な伴侶に恵まれると信じて已ま無かったが、待って居る間に婚期を逃す女性も多い。幸福の女神は待って居る丈では中々遣って来無い。見逃した後ろ姿丈が見えるので有る。昔の当初の水晶振動子(クォーツ)時計は真空管のラジオの様に大きな装置で有った。十年後には腕時計の大きいさに成るととんでもない事を言い出した技術者が居たが其の通りに成ったが。携帯電話も空想科学映画以上に普及した。意外なな物が普及する。

 琢磨と鏡子は見合いをした。恩有る仲人様の手前断り倦ねて居る内に話が進んで、婚約する羽目に成った。婚約為たものの善からぬ噂が耳に入って来た。如何やら婚約者は寝小便を垂れて二度も離縁され出戻って居ったので有る。或る日、鏡子は手鍋下げて押し掛け女房に遣って来てしもうた。
「蒲団は何処じゃ」「男臭さ」鏡子は文句垂れ乍蒲団を敷き出した。
「真逆、此処で一緒に寝る心算じゃ、未だ結婚も為て居無いのにふしだらな」
「あんさんがふしだらの事を為無ければ良いでしよ」女は狎れたもので童貞の琢磨とは大違いで有った。「あんさんも此処にへたりなはれ」二人は畏まって向き合って蒲団の上で正座した。
「あんさんはうちら二人連れで佐太の天満宮に御参りし、神前で夫婦を誓ったのをもう忘れて仕舞うたんか、御陰で今日からわてらは目出度く夫婦じゃ、其の前にあんさんに言い聞かせる事が有る。今宵かたあんさんの女房に成るが、あんさんの指図は受けぬ。わての遣りたい様に遣る。・・・」
 酷い女が遣って来て仕舞うた。鬼女も眠って居る時は天女の様な顔で有った。琢磨が便所に立つと。
「あんさん、何処へ行かはりますのん」「一寸小便に」「わてもしたい」困った事に着いて来て仕舞った余程我慢して居ったのか、慎み無く放いて仕舞うので有った。
「のう、あんさん、彼の世は本当に在るのかのう」「在る筈が無い」
「あんさんは夢が無いのう」
「あんさんはやや子の作り方を知らぬのか、やや子は欲しくは無いのんか」花嫁は屁を放って憚りを出にくいがりで有った。

 珍奇な二人の生活が始まった。裏の泥棒猫迄手懐けたのか、自分の家と決め込んだのか座敷の上を悠然と闊歩為出し、昼寝を為て居ると御腹の上に載りたがり、片脚を載せて催促為る有様で有った。

「此れは何じゃ、茶碗蒸しか、饂飩か」「あんさんは苧環蒸しも知らぬのか」作る料理まで珍奇で有った
「御背中を御流し致しますわ」もう女房に成った心算か入って来て仕舞った。恥ずかしそうに前を隠して居ったが、裏の泥棒猫が中に入りたがって扉を爪で引っ掻いた。
「御前も一緒に入りたいのんか」嫌がって喚く猫を無理矢理桶に浸けてシャボンで洗い出した。
「咽喉が渇いて居る丈じゃろが」雌猫を洗うに前を隠すのも忘れて大童で有った。琢磨は目の遣り場に困って仕舞った。

「あんさん、何処を見て居るねんや」「あんさんも先の亭主の様に尿を引っ掛けられたいのんか」難儀な女房で有った。裸に成ると亭主を無視しし童に戻って仕舞い、照る照る坊主を作ったり、水鉄砲で戯れる有様で有った。

 夏でも裏の泥棒猫迄蚊帳の中に入りたがり川の字に成って寝る有様で有った。猫は一体何を考えて居るのか、眠って居る間に何を為れるか判ら無いのにで有る。裏の雌猫が事も有ろうに二人の枕元で御産をして咽喉をゴロゴロ鳴らして居った。琢磨は其の時、猫も目から泪を流す事を知ったので有る。

「此れ、何時迄御乳を触ったら気が済むのじゃ」夢現で障って仕舞って居ったので有った。
「鏡子は腋毛は剃らんのか」「何処を覗いて居るのじゃ」

 季節に由って名前が変わって仕舞う珍奇な食べ物が有る。春の牡丹餅に秋の御萩で有る。小豆は冬を越すと硬く成る為、昔は春の牡丹餅は漉し餡が普通で有った。秋は採り経ての為小豆も柔らかく粒餡も出来る。当然漉し餡も有り得るので煩雑でも有る。テレビ放送では再放送も多く、季節が合わ無い珍奇も発生する。また、春は花粉症の季節でも有る。
「あんさん、洟が落ちそう、かんで」汚い話でも有る。

 有名な人形浄瑠の文楽の出しものに「菅原伝授手習い鑑」が有る。鑑とは手本の事。佐太村が登場為る三天神にも撰ばれたあの佐太村天満宮の佐太村で有る。実在の地が物語に登場為るのも珍しい。此の大阪で正月元旦に初雪が降るのも珍しい。初雪や、猫の足跡、梅の華で有る。台所の冷たい板の間を素足で歩く猫は足を冷たがり歩いて居る人の足の上に載りたがる有様で有った。未だ結婚も為て居無いのに鏡子は夫婦気分で佐太天満宮に初詣に出かけた帰り、淀川の堤防の椿の大木の近くに来た時、鏡子は急に小用が為たく成り我慢が出来無く成った。
「あんさん、誰も来ぬか見張ってて」「真逆、こんな処で為る気じゃ」「放いて仕舞ったらもっと恥ずかしい」御尻を捲くる女房の端た無さに呆れ返って仕舞った。

「あんさん、もう直給料日やわね、待ち遠うしいわね、給料日には接吻させてあげるよって楽しみにな」未だ結婚も為て無いのに給料を独り占めし、僅かの小遣いしか与え無いので有った。煙草銭にも事欠く始末で有った。
「日本男子はそんな恥ずかしい事は為ん」鏡子は守銭奴で小便迄出し惜しみを為る悪癖が有った。前を押させて何やらモジモジと淫らな。其の下品な事。亭主の前でも箕で悪籾を簸り乍、平気で屁を放る有様で有った。箕屋の子の琢磨も形無しで有った。

 憂鬱な梅雨が終わると賞与の季節でも有る。鏡子は又ソワソワしだした。何やら欲しいい物が有るらしい。
「あんさん、もう直賞与やわね、待ち遠うしいわね、支給日には接吻させてあげるよって楽しみにな」
「日本男子はそんな恥ずかしい事はせん」「そやわね、ああ恥ずかし、おしっこちびって仕舞ったら堪忍え」鏡子は顔を覆って恥ずかしがって便所に駆け込んだ。

 梅の花が咲き、椿の花がさき、桃の花が咲き、こぶしの花が咲き、桜の花が咲き乱れれる頃は春爛漫である、桜吹雪が舞い、小川の淀みに花浮き橋を掛ける。位人臣を極め、此の世お栄華を極め、大茶会を催した偉人も寿命は買え無い、極寒の真冬より気候の好い春にホットして亡く成る老人も多い。気の緩みが命取りで有る。鏡子の遠縁の親戚の人が亡く成り葬礼に参列した。喪服に着替える鏡子を見乍、喪服の女が何故美しく見えるのか不思議で有った。微風が吹き桜吹雪が舞って居ったが、鏡子は小用を催し困った事に焼香を済ませソソクサと帰って仕舞った。家帰るなり、草履を脱ぎ散らかし便所に駆け込んだ。
「帰ったのか」便所の前迄来て気が緩んだか御粗相を為て仕舞った。恥ずかしいところを亭主に見られて仕舞った。
「何と言う端た無い事を」琢磨は何を思ったか、鏡子を四這に為て後ろから野獣の様に犯して仕舞った。「結婚してあげるから誰にも言わ無いで」余程恥ずかかったのか、二三日は借りて来た猫の様に大人しく為て居ったが直ぐに元に戻って仕舞った。如何やらやや子が出来たらしいので有る。

 姑が病に倒れた、実の娘達は介護を嫌がって見舞いにも来なかっ。未だ結婚も為て居無い鏡子が駆り出すされた。
「又、小便か、さっき行ったとこではないか、まあ良い、身重の身では無理も無い、わてに遠慮して尿垂れされては恥晒しも良いとこじゃ。其方も不幸な女子じゃのう、寝小便を垂れた位で二度も離縁されるとはな、琢磨には充分に言い聞かせて有るので心配致すな。実の娘も嫌がる事を赤の他人の其方が為るとは皮肉じゃのう、わてが斃れたら其方にも遺産が廻る様に気張ってする事じゃ」姑が斃れ鏡子にも遺産が廻った。しかし、鏡子の憂鬱は続居た、預金の金利は世界の高金利通貨に比べたら無いに等しい日本の公定歩合、金利は上がらぬのに、消費税率はドンドン上がる。大阪に痴漢が多い事を世界に知らしめて居る女性専用列車が今だ走って居る。国民全員に無作為に半強制的に法律用語も判らぬ素人を、忌まわしい事件も有る憂鬱な裁判に参加させる裁判員制度が間も無く始まる。資格試験を実施為れば何の問題も無いものを、職業として採用為る手も有った筈。自衛隊が国際貢献、人道支援、復興援助で派兵して自衛隊員の戦死者が多数出ると、自衛隊に志願為る若者も減る。徴兵制度の再施行を言い出す政治家も出て来る。最早戦後で無いと言い出す政治家も居る。原子爆弾を落とされ蜘蛛や百足迄皆焼殺された事を忘れて仕舞って。頭を垂れて尻尾を振って近付く犬の如くでも有る。世界に誇れる平和憲法の日本国憲法を改悪する目論見も有る。既に草案も出来て居る。国の為に死ねる若者を育てる為に教育基本法も変わって行く。徴兵制の再施行の為の布石の一つか。現代は昔は無かった犯罪も有る、インターネットや携帯電話での詐欺等で有る。天変地異が起きる度に一斉に携帯電話を掛けて遠くの知り合い助けを求める。傍に居る人と相談為ようとも思い付か無い愚かが有る。

 近くの寺の和尚の勧めも有って、御腹の膨らみも隠し切れ無く成り到頭身内丈で簡単な仏前結婚を挙げる事に為た、金襴緞子の帯を締め、文金高島田に髪を結うって、打掛姿も御腹の膨らみは隠し切れ無い。臨月の一月も前なのに式の最中に産気付き困った事に、已むを得ず自宅で御産を為る羽目に成った。鏡子は玉の様な男の子を産み落と為た。太郎と名付けた。或る吉日に近くの佐太天満宮に宮参りに出掛けた。何やら自慢げで有った。

 何時の間にか家の猫を勝手に決め込んだ裏の泥棒猫は今や座敷の重ねた座布団の上で昼寝三昧で有った安心為切って腹を上にして寝る有様で有った。天下泰平で有った。







          2008−07−01−339−02−01−OSAKA



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