関西電力の憂鬱

  関西電力は06月22日、火力発電所の取水口付近にクラゲが大量発生したため、出力を落として運転すると発表した。
 22日午前時点で、姫路第二火力発電所(兵庫県姫路市)など2か所で、最大90万キロ・ワットの供給力が失われた。クラゲは、例年7月中旬頃までには減少するが、関電は、節電要請期間(7月2日〜9月7日)の需給への影響は見通せないとしている。ただ、原子力発電所1基分にも相当する出力低下だけに、電力供給面の懸念材料になりそうだ。
 関電によると、今月15日頃からミズクラゲが大量発生し、出力を調整して運転している。クラゲの被害があるのは、姫路第二火力4号機、5号機、南港火力発電所(大阪市住之江区)2号機、3号機。クラゲは、冷却水として使う海水の取水口付近に押し寄せており、十分に取水できなくなると発電用タービンを回した蒸気を冷却できなくなる。
 関西電力は2日、火力発電所「姫路第二発電所4号機」(兵庫県姫路市)が故障し、同日午前7時47分に運転を止めたと発表した。この日の関電管内のピーク時の電力使用率(予想)は81%から86%となったが、「安定した需給状況」に変わりないという。関電は10日ほどで復旧できるとみており、「予定通り進めば安定的な需給状況は保てる」としている。
 関電によると、2日午前3時21分にボイラー内の温度上昇を示す警報が鳴った。作業員が確認したところ、ボイラー内の配管から蒸気が漏れ、水量が減っていることが分かった。過去の故障例から、運転再開には10日ほどかかるという。
 この緊急停止で、関電の2日の供給力は約150万キロワット減少。4号機の出力45万キロワット分に加え、余波で揚水発電も減少するためだ。ただ、今月上旬は、仮に需要が大きく上昇しても、ほかの停止中の火力発電所を再開できるため、需要に見合った供給力は確保できるとしている。
  関西電力の大飯原子力発電所3号機が再稼働し、42年ぶりの「原発ゼロ」という異常事態は、とりあえず解消された。だが、電力の安定供給態勢の確立には他の原発の再稼働が欠かせない。
 政府は9月に発足する原子力規制委員会に新たな安全基準の策定を任せる意向だが、それまでの間は現在の原子力安全委員会がしっかりと業務を継続すべきだ。原子力行政に空白は許されない。
 東京電力の福島第1原発事故に伴う全原発停止から2カ月にして初の再稼働となる大飯3号機は、5日に送電を開始する。9日にも本格運転に入り、今月下旬には4号機も動き出す予定だ。
 だが、これら2基を加えても、関西圏をはじめとした電力不足はいぜん深刻だ。関電管内の電力需給が綱渡り状態にあることは心しておかねばならない。
 安定した電力供給には、最低でも常時、3%程度の供給余力が必要とされる。大飯3、4号機がフル稼働に移行しても余力は1%未満にとどまる。
 一方で電力各社は停止した原発を補うため、火力発電をフル操業している。なかには老朽化した設備もあり、故障発生の懸念が強まっている。2日には関電の姫路第2火力4号機がボイラーの蒸気漏れで止まったばかりだ。大規模停電の恐れは消えていない。
 政府は、夏の電力需給対策として、沖縄を除く全国9電力で節電要請を始めた。とくに関西、九州、北海道、四国の4電力管内は需給が逼迫(ひっぱく)している。突発的な停電を防ぐため、電力供給を強制的に止める計画停電を準備しているのは当然だ。
 ただ、家庭や企業に負担を求める節電では、根本的な解決にならない。安全を確認した他の原発の再稼働がなければ、今後も慢性的な不足が続く。節電頼みでは国力の低下を招くのは必至だ。
 そのためには、原発のストレステスト(耐性検査)の結果を審査して、再稼働に向けた手順を進める必要がある。規制委の発足を急ぐとともに、それまでは原子力安全委が与えられた役割を果たさなければならない。時間を浪費すべきではない。
 大飯原発の再稼働をめぐっては、反対派が連絡道路を一時閉鎖するなどの騒ぎも起きた。違法な示威行動には警察当局も毅然(きぜん)たる対応を取るべきだ。
  関西電力が月内にも数百億円の社債の発行を検討していることが4日、分かった。大飯原子力発電所3、4号機(福井県おおい町)がともに月内にフル稼働する予定で、市場の信用を回復できると判断したもようだ。財務基盤強化のため、東京電力福島第1原発事故後初の起債を目指す。
 電力各社は原発の停止に伴う火力発電の燃料費増で経営が悪化。関電は銀行からの借り入れより低金利で資金調達できる社債を、2010年12月以降発行できておらず、銀行からの融資頼みの状態が続いている。福島事故後では東北電力が発行している。
 関電は数百億円の調達を図る方向で調整し、過去の社債の償還などに充てる方針。ただ大飯に続く原発の再稼働に見通しは立っていない上、電力会社の信用が回復できていないとの見方も根強く、起債を取りやめる可能性もある。
 関電は火力発電の燃料費増などにより、12年3月期の連結最終損益が過去最悪の2422億円の赤字となった。13年3月期は大飯3、4号機が再稼働しても、火力発電の燃料費の負担は大きく、5000億円程度の赤字となる見通し。
  関西電力は8日、大飯原発3号機(福井県おおい町、118万キロワット、加圧水型軽水炉)の原子炉 のフル稼働に向けた作業を進めた。9日未明にフル稼働に到達した。昨年3月の東京電力福島第1原発事故後、定期検査で停止した国内の原発が運転を再開し、フル稼働するのは初めて。これを受け、8月の関電管内のピーク時における電力不足は14.9%から9.2%へ縮小する見込み。
 政府はフル稼働を確認した上で、2010年夏に比べた関電管内の節電目標を15%から10%に緩和する。関電への電力融通を見込んで5%の目標を設けた中部、北陸は4%に、同様に5%の中国は3%に引き下げる方針だ。
 関電は8日夕、3号機の海水取水口付近でクラゲが大量発生し、電気出力が約1.7%低下したと発表し たが、同日夜までにクラゲは減り、出力は回復した。
 大飯3号機は1日夜に約1年3カ月ぶりに起動し、翌2日早朝に核分裂の連鎖反応が持続する臨界に達した。5日に関西などへの送電を始めた後、段階的に電気出力を上げ、8日までに100%に達していた。  8日の検査で問題がなければ、さらに1次冷却水中のホウ素濃度を下げて加熱し、原子炉がフル稼働する「定格熱出力一定運転」に到達。これで3号機は、本格運転と同じ状態で送電しながら、検査を続ける「調整運転」の段階に入る。
 今後、約1カ月間、原子炉の安定状態などを確認して経済産業省原子力安全・保安院の最終試験に合格すれば定検が終わり、正式に「営業運転」となる。
 関電は大飯4号機でも再稼働準備を進めており、早ければ18日に起動し、25日以降にフル稼働する。
 米系格付け会社のムーディーズ・ジャパンは1日、中部電力や関西電力の長期格付けを引き下げたと発表した。東京電力の福島第1原子力発電所事故の影響で、他の原発も停止期間が長期化するリスクがあると指摘。原発事故の賠償を支援する機構に対する東電以外の電力会社の負担金額も不透明として格下げした。
 中部電と関西電、中国電力、九州電力、北海道電力、北陸電力の格付けを「Aa2」から「A1」に2段階引き下げた。原発を保有していない沖縄電力と、建設中で未稼働のJパワーの2社は「Aa2」から「Aa3」に1段階引き下げた。





























            2012−07−09−537−01−01−OSAKA  



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