狂真

 ☆宝珠
 昔、昔、屋根職人の真一は宝物殿の雨漏りの修理の委託を受けた。 屋根は雨漏りが酷く天井の梁も腐って居て真一は宝物倉に落ちて仕舞った。金銀珊瑚の山の上に落ちた為に大した怪我もし無かったが。宝物殿の宝物を役人が調べたら国宝の宝珠が無く成って居る事が判った。真一の屋敷は隅々まで家宅捜索されたが宝珠はでて来なかった。代官は屋敷の庭に埋めた疑いとそこいらじゅうを掘り返させたが何も出てこなかった。畑に隠したに違いないと言っては畑を掘り返させた。畑の底から石器や土器や埴輪や人骨が出て来たが宝珠はでて来なかった、代官は宝珠は出て来無いが世間を騒がした大罪で死罪にせざる得ないが余にも慈悲の心は有る自宅に火を放ち何も隠し持って居無い事を証明すれば免罪だと言った。真一は自宅に火を放ち水を掛けずに消えるのを待って役人は宝珠を探したが宝珠は出て来なかったので放免に成ったが、体の中に埋め込んだと言う薮医者の告げ口を代官は信じ真一は処刑されて仕舞い屍は晒し者にした、蠅が集りやがて蛆虫が死肉を食べ尽くして仕舞って白骨丈と成ったが宝珠は出て来なかった。
 四拾九年が経た、異常な程に巨大な天災地変が起き、飢饉や疫病や戦が有り人々散り散りに成り一の事等知る人も居無く成った、空の宝物殿に雷が落ち焼け落ちて仕舞ったが何故か国宝の宝珠丈が燃え残りの中から見つかった。目出度し目出度し。