やんぴ

 やんぴとは大阪の方言で止める事で有る。子供の頃の楽しかった遊びも何時かはやんぴにして人は大人に成って行くので有るが、中には大人に成り切れ無い人も居る。天女の様な処女の命を狙った重犯罪を犯す犯人が後を絶た無い。大人の女には相手にされ無いから、無垢な心の少女を狙うので有る。罰当たり者達で有る。
 秋子は嫁ぎ先で不始末を仕出来して、実家に出戻されてしょげ返って居って、仕事を探す気も無いのか実家で家事手伝いをし乍ブラブラして居ったので有った。姉は養子様の手前困り果て、恩師でも有る知り合の元学校の先生に秋子の見合いの相手を探してもらった。秋子もやっと其の気に成り出した。厄病神が片付くので有った。
 母親代わりで威張り散らす姉、恩師でも有るかっての教師の仲人様の手前、断る分けにも行かず承諾した。女は緊張の余りか見合いの席でおならを放いてしまい恥ずかしがった。次郎は秋子の可愛いおならの音で、其の時初めて秋子が一つ歳下の同級生で、自分に家庭教師をして居った事を思い出した。悪夢で有った。年下の生意気な生娘に勉強を教えて貰って居ったので有る。秋子は「満点を取ったら御乳を触らせて上げる」と色気を武器に次郎を叱咤、激励し平気で体罰も加えて居ったので有る。秋子は家庭教師に託けて夫婦ごっこを楽しんで居ったので有った。自分の家と他所の家の区別も付かぬ程遣りたい放題の事をして居ったので有った。そんな鼻摘み者の生意気な娘をも嫌がらずに次郎の母は料理や裁縫を嘆き乍も根気良く我が娘の様に教えて居ったので有る。次郎は女の言葉を真に受け其の口車に乗り、心を入れ替え気が狂う程勉強したので有った。英語は悲惨で赤点すれすれで有ったが、好きな理科はそこそこで有った。 次郎は鬱病で病気で勉学が進まず一年落第して居ったので有る。世間体も有り、二年も落第する分けには行かなかったので有った。秋子は怖い家庭教師で有った。秋子の御蔭で辛うじて病気も治り、学業の成績も上がり出し無事に卒業は出来たので有った。次郎は最後に得意の理科で満点を取ったが一度御乳を触らせて貰いたいと言い出すと「阿呆」と一蹴し引っ叩かれてしまった。終に触らせては貰え無かったので有る。騙されたのに其の時初めて気が付いたので有った。嘘も方便で有った。
 或る高級料亭の化粧室で秋子は姉の夏枝に散々叱られてしもうた。
「もう、下品な、一体何考えて居るの、見合いの席でおなら何か放いたり何かして。もう二度とこんな役はせいへん、母親代わりはもう御免や、次郎様は真面目で純情で良い人やさかい、泣き付いてでも嫁に貰って貰い。あんたは出戻りやで、贅沢言うたら罰が当たるで」
「出てしもうた物は仕方が無いやろ」「しっこ垂れしてしもうて、離縁されてしまった何て恥ずかしくて人にも言え無いのんを忘れてしまったんか」散々で有った。
 秋子は子供の頃を懐かしがり、後で近くの佐太天神宮に参りたいと言い出してきかなかった。
「こうして二人連れで御参りして居たら、何やら夫婦に成った様な変な気に成るわね、うちはあんたでもかまへんえ、あんたもうちで我慢しとき、良い事が有るかも知れへんで、仲好くしよな」
 秋子は一度結婚に失敗し辛酸を舐めて居ったので有る、夫は浮気者で変態で有ったので有る。何やら試しに夫婦生活をして観たいらしい、味見をし駄目ならやんぴにする気らしい。とんでもない女で有った。家を見たいと厚かましくも家に上がり込んでしまった「まあ、猫がこんな処で寝て居てるわよ。猫を飼ってらっしゃるの」「隣の猫が時々遊びに来よる」
「まあ、厚かましい猫だ事、ああ、疲れた。私も猫と一緒に横に成ろうと、あんたも此処にへたり」と畳を叩いた。猫が女の御腹の上に載りたがって啼いた。「御前は雄猫やな」猫の臍の下を覗き込んだ。
 女は和服の裾を乱し、座敷の上に大の字に成って寝転がるってしまった。
「まあ、厚かましい猫たら、この猫、私の手を枕に寝よるわよ、私が悪さをしない事が何故分かるのやろう不思議やわね」「此の家も古いし懐かしいわね、御兄様の一郎様は此の家を継がへんかったんか、其れにしても、あんたの御母はんは一体何を思って、一つ歳下のうち何かにあんたの家庭教師を依頼したんやろ。間違いが起きてやや子でも出来て居たら如何する積もりやったんやろ。そうや、うちらを夫婦にしたかったんやわきっと。あんたの御母はんが生きて居られたら、何時まで経っても結婚も出来無いで人生を無駄に送って居るあんたを見て嘆いて居られるに違い無い。御母はんの願い、うちが叶えて上げる。あんたも喜び過ぎておしっこチビリなや。ああう、うちも、しっこしたくなったわ、御便所借りるえ」勝手知ったる他人の家で有った。女は夫婦を決め込んで何やら帰る気が無い様で有った。女は襷を掛け張り切って夕食の用意に取り掛かってしまった。「さて、何が御座るかな、切干大根に、干瓢と椎茸が在ったえ、麩も在るえ」今宵の夕食の御数は切干大根と干瓢と干し椎茸と出汁昆布と煮干と梅干の乾物と漬物の保存食ばかりで有った。下品な事ばかりして居るのに料理は上手なのも不思議な話で有った。次郎の母に教わって居ったので有る。
「あんた、御風呂沸いたえ、御風呂に入る前におしっこを済まして置くねんえ、御背中を流して上げるよってに、御楽しみにな」まるで子供扱いで有った。
 男が風呂に入って身体を洗って居ると、女が裸に成って入って来てしもうた。男は恥ずかしくて慌てて湯船に飛び込んだ。女は何やら前を隠す気等さらさら無いので有った。男は目の遣り場に困ってしまった「あんたも幸せ者やね、うちみたいな美人で良い女と夫婦に成れて。何恥ずかしがって居るの、あんた真坂未だ女としたこと無いのんか、童貞を恥ずかしがる事は無いえ、結婚して無いかったら其れが当たり前え、相変わらず純情やねえ」女は足の指で男の顔をてんごしだした。「明日、天気になーれ」手拭を御風呂の水面に広げ、泡の照る照る坊主を作っては、弄んだりしだしたので有った。呆れた女で有った。男も女の裸を初めて見て居る内に可笑しく成ったのか後ろから女を抱きすくめてしまった。「秋子」
「これ、今日は悪さをしては成らぬ、御風呂の前に尿をして置くのを忘れた、さっきから我慢をして居ると言うのに]人の事は気が付くのに、自分の事は抜けるので有った。男は女の乳房に手が行ってしまい。込み上げて来る本能的な激情を抑制出来無く成ってしまい、女の陰部を弄ってしまった。そして犬畜生の様に後ろから犯してしまった。学生時代の恨みを思いっきり晴らしてしまったので有った。女も久しぶりに興奮してしまい尿垂れまでてしまい恥ずかしい事に。
「こら、阿呆、呆け、粕、変態、誰が童貞やあんな悪さを平気でしょって、慌て者、見合いの日に夫婦に成ってしまい居って何とする。誰にも言うで無いぞ、私は恥ずかしくて御外が歩け無い。やや子でも出来たら如何する気じゃ」と叱り乍、布団を敷き、枕代わりに座布団を二つに折って並べて置いた。今宵は泊まって行く積もりらしい。
 女は安心しきって寝て居った。十年来の夫婦の様でも有った。初夜だと言うのに、高鼾を掻き、御臀を平気で次郎に向けては、平気で屁を放いたりもしたので有った。夜中に隣の猫が遣って来て寝床の中へ入りたがって鳴いた。
「これ、此処はあんたの家と違うやろ、厚かましい猫や、うちの猫に成ってしまいたいんか」と言い乍も掛け蒲団に隙間を作り寝床へ入るのを許すので有った。
 朝に成って東の空が白み出した。何時もの様に烏が泣き出した。
 次郎は何を寝惚けたか、夢現で秋子の御乳を触ってしまって居る自分に初めて気が付いた。
「何時まで私の御乳を触ったら気が済むのじゃ、他にする事は無いのか」女はずっと触らし続けて居ったので有った。「御乳にしか興味が無いのか、まるで子供みたいじゃのう」引っ叩かれると思ったら以外でも有った。「秋子はブラジャーを着けんのんか」「散々触って置いて何を言い出すのん、窮屈なのは嫌」 最早小便臭い我が儘な学生の頃の秋子では無かったので有った。秋子も良き女に成って居った。
「あんた、何処へ行くのん」「小便」「外に零したら拭いとくねんえ」母の様でも有った。男が戻ると。「うちもしっこがしたく成った」女は手を頭の後ろ当てて甘えた様に男を見つめた。
「秋子は腋毛は剃らんのか」「何の為に、相変わらず、あんたも阿呆やね」剃る気も無いらしい。
「もう少ししたら、給料日やわね、あんたの給料が待ち遠しいわね、うちは給料さえキチット家に入れたら、御臀や御乳や御そそを触った位では怒って引っ叩いたり鞭でしばいたりせいへんで、安心し。電車の中で他所の女の御臀や御乳を触って警察に捕まったら、世間に恥晒しや。此の大阪に女性専用車両の電車が走って居るなんて、世界に恥さらしもええとこや」如何やら何か買いたい物が有るらしい。
「接吻させて上げる」女は突然に蒲団を蹴り上げ、何時もの淫らな大の字に成った。隣の猫は驚いて逃げ返ってしもうた。女は総てを許し、盛りが憑くいてしまって居ったので有る。
「言って置くが、接吻の最中にうちが御粗相を放いても叱るで無いぞ」女には変態性性欲の気も有った。「阿呆、早よ、小便して来い」と次郎に御臀を叩かれて叱られてしもうた。
 朝、二人で朝食を摂り乍。
「なああんた、こんな麩の御澄まし丈では、身体が持た無いで、あんたの給料日迄の繋ぎを入れて頂戴」小遣い迄せびり取るので有った。
「給料日には接吻をさせて上げるよって、楽しみにな」御金を挟んで拝み、大事に胸元に仕舞い込んだ。 或る日、男が大便所で用を足して居ると、女が駆け込んで来て。
「あんた、早よして、洩れてしまう」女は前を押さえ乍地団駄を踏んだ。「此処でしてしまうわよ」
 女は御臀を捲くって朝顔で小用を足し乍。「なああんた、何で人の心には悪魔が巣食うので有ろうかのう、あんたの心の中にも、うちを虐めて見たい気が起こるのんか」何時もの嘆きが又始まった。
 未だ参週間の仮夫婦の期間中だと言うのに女は遣りたい放題しだした。給料は一人占めしてしまい、次郎は煙草銭にも事欠く始末で有った。夏の賞与も既に手薬煉を引いて狙って居るので有った。何やら欲しい物が有るらしい。其の下品な事と言ったら。腋毛は剃る気も無く、ブラジャーも着ける気も無く、殿方の前で鼻はかむわ、手が塞がって居る時は平気で殿方に鼻汁をかますわ、殿方の前でも平気でおならは放わ、殿方が居てても便所の扉は閉める気は無いわ、殿方の様に朝顔に平気で用は足すわ、平気で殿方の御腹の上に馬乗りに成るわ、逆立ちはするわ、殿方の前で、手淫はするわ、寝言は言うわ、鼾は掻くわ、歯軋りはするわ、猫の睾丸を弄ぶ悪戯をするわ、で有った。不精なのか或種の快感を楽しんで居るのか、我慢出来無く成る迄中々便所に行かず。「しっこをチビッテしまったわ」と言っては殿方の前で平気で下着を履き替えて小さい滲みを態々見せてたりするので有った。呆れ帰った婦人で有った。
 女が自ら言い出した、参週間の試験期限の最後が近付いた或る日、次郎は女に臀に敷かれぱなしの悲惨な生活を送って居ったが、堪りに堪り兼ねた男は突然「結婚はやんぴや」と終に言い出した。「嫌や嫌や、嫌や嫌や、今更もう別れられ無い、あんたが好きで好きで堪らん様に成ってしもうた。実話、あんたの心を試す為に態と下品に振舞ってしもうた、女子の浅知恵や、堪忍え、許したって」女は泣き付いて夫婦に成りたがった。やんぴと言われたのが余程ショックで有ったのか、錯乱し尿垂れ迄してしまい恥ずかしい大変な事に成った。
「何と言うはしたない女子じゃ、下品さを叱られて居る最中に小便垂れ何かしよって」呆れ帰り乍も恥ずかしさの余り放心状態の女を寝間に連れて行き犯してしまう男。台所の床は呆れ返る程の大洪水であった 隣の猫も臭い匂いに堪りかね、呆れて自分の家に帰ってしまった。
「はしたない尿垂れ女でも、一生我慢するのんか、後悔せいへんのか、うちはやや子が欲しい丈や、悪意は無い因って堪忍や許したって」女は両手を着いて泣いて許しを請うた。
 散々叱られて暫くの間はしょげ返って猫を被って上品に振舞って居ったが、其の内、やや子が出来てしまい。男は仕方無しに婚礼の挙式を挙げ正式に夫婦に成った。女は元気な女のやや子を産み落とし、暫くすると女は元の下品な女に戻ってしまった、相変わらずで有った。次郎の心を試す為に態として居ったのでは無かったので有る。次郎は後悔しても、もう二度とやんぴとは言え無く成ったので有る。次郎は二度も秋子に騙された事に気が付いたので有る。真に阿呆で有った。女は強かで有った。
 秋子は其の後も男の子二人と女の子一人を産み落とした。四人の御子は母親には似ず、其れわ其れわ上品な、利発な御子達で有った。佐太天神宮に御参りした御蔭で有った。次郎は子供と言う宝を終に手に入れたので有った。幸せ者でも有った。




            2006−06−17−134−01−OSAKA



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