胡座を掻く女子

 日本は仏教国で有る。禁欲的な国民性は質素な食事をし、墨染めの衣を纏い、御堂の中で静かに座禅を組み瞑想に耽る僧侶の如くでも有る。結婚する迄は処女や童貞で居るべきだと思って居る人も意外と多い恋等した事の無い人すら居る。しかし例外も有る。
 太一の祖母の幸恵はが夫の実家が大風で傾いた時に大金を貸して修復させてが、夫の実家の母に金を返せとも言えず困り果てて居った。夫の祖父の法事に出かけた時、腰を痛めてしまい親戚の家で寝込んでしまった。三日後に変な娘を介護人に連れて帰って来た。義父は妻の不義の子の末娘を太一の嫁にして借金をチャラにする積りらしい。晶子は高校を卒業したものの、大学にも行けず、就職も出来ず家でブラブラして居ったので有った。祖母の幸恵はすっかり腰の調子は良く成ったが娘は帰る気が無いのか居付いてしまった。他所の家で胡座を掻いてしまって居ったので有った。
「お母はんも到頭老耄されてか、あないな変な娘を太一の嫁にする積りなんやろか」
「夏江、又、愚痴を零して居るのか、所帯を任しても差配迄任した訳では無い、魂まで売り渡した訳では無いぞ」
「女だてらに胡座を掻くような変な女子を連れて来たりして」

「ああ、疲れた、あんたのお母はんの夏江さんは人使いきついな、お婆はんは花嫁修業をさせてあげると言ったのにお母はんに一日中こき使われ、只働きも良いとこや」座敷で大の字で寝て居った。
「あんたは、未だやや子が欲しくは無いのんか、うち催して来てしもうたわ」手が無意識に恥ずかしい処に行ってしまうので有った。
「早よ、便所に行って来い、チビルで」「おしっこの事と違うで」又、胡座を掻いて座敷に座った。
「あんた、うちが嫁さんでは不服見たいやね」「男の前で胡座を掻く様な女子は大嫌いじゃ」
「あんた、未だ女を知らんね、うちが教えてあげる、童貞で有る事は恥ずかしい事と違うで、最初は皆始めてじゃ」「うちで我慢しときて、うちなら五人はやや子を産めるで」

「干瓢見たいな不味い物植えて、如何する気なんやろな、真桑瓜や西瓜やメロンを植えたら良いのにな」「轆轤を廻して鉋で削って紐にして干すねんで」「寿司の具の乾物のあれか」
「なあ、こんな仕事二人で遣って居たら、夫婦に成った様な変な気に成るわね、あんたはうちのやや子欲しくは無いのんか」「お乳は触りたくは無いのんか」「お尻は触りたくは無いのんか」
「あんた、鍬で穴を掘って呉れるか」「何をする」「御便所に行きたく成った」「真逆、此処でする積りじゃ無いだろうな」「家に帰るなり、御便所に駆け込んでは、お外で何か有ったと思われてしまうやろ」 其の時、とんでもない事が起こったので有った。野犬が二人を襲ったので有った。涎を垂らし何やら異常で有った、狂犬病に罹って居るのか、恐ろしくて声も出無い晶子、狂犬が女子に飛び掛った時、太一は鍬の一撃で撲殺してしまった。キャーと一啼きして、絶命した。
「殺してしまったんか」「狂犬病の犬に咬まれたら狂犬病に罹って死ぬねんで、人でも人を咬みと成るねんで、喉が渇くのに水も飲まれへんねんで、生き地獄が始まるねんで」「誰にも言うたらあかんで、犬は明日裏山に葬って遣るよって、成仏し居るやろ」「如何した」「うんこチビッテしもうた」「放いてしもうたんか」

「如何したんや、又、喧嘩でもしたんか、何か臭うわね」「太一、又、ど壷に嵌ってしまったんか」「うちうんこ垂れしてしもうた」「何んやて」「そんなみっともない、そんな恥ずかしい格好の儘で畑から帰って来たんか」「お母はんの世話はせんで良いと思って好い気に成ってたら、娘の下の世話迄させられるとは思てもみなんだわ」

 女子は失態を演じてしまい二三日は借りて来た猫の様におとなしくして居った。猫に背中に載られても静かにして居った。胡座も掻かず、しょげかえって居った。しょげて猫の睾丸を弄んで居ったのだ有る。 四日目の夕食時に、今日は父の給料日か滅多に無い鋤焼きの日で有った、父は美味しそうに、麦酒を飲んで居った。「うち、太一ちゃんのお嫁さんに成ったる」と突然大きな声で皆の前で宣言してしもうた「好きなようにし」「太一、糞垂れするような女でも良いのんか」「姉ちゃんの様な気に成ってしもたで、もう分かれられへん」「あんたも相変わらずやね、姉弟に成るのんと違うで、夫婦に成るねんえ、やや子が出来るねんえ」
「お父はん、あんさんも黙ってんと何とか言いなはれ」「好きなようにさせたりて、未だ子供やがな」

 或る日、太一が目を覚ますと側で晶子が犬の字に成って寝て居った。「晶子、寝床を間違えて居るで」「かまへん、かまへん、やや子が出来たら結婚してしもうたらしまいや、好きな様にし」」と言ってな大の字に成るので有った。何と言う女子で有ろうか。女子は腋毛も剃らず、ブラジャーを着ける気も無いのか、見えそうでも有った。「あんたの好きなお乳を触らしてあげる」太一は女のお乳を触って居る内に恥ずかしい処が勃起してしまい、何かが出そうに成ってしまい、晶子を野獣の様に犯してしまったら。晶子は興奮し過ぎて、尿垂れをしてしまった。

「太一、高校生にも成って寝小便垂れなんかしよって」散々で有った。晶子がしでかしたとも言い出せず口篭って居った。「言いたい事が有ったら、はっきり言い」

「これ、娘、昼間から欠伸ばかりするで無い」

「これ、娘、さっきから何処を触って居る、其方は盛りでも憑いてしまって居るのか」

「これ、娘、何と言う格好で風呂から出て来よるか」「一寸、御便所へ」

「これ、娘、又、胡座を掻いて居るのか、女だてらに恥ずかしくは無いのんか、パンツが丸見えでないかはしたない」

「これ、娘、人前でおならを放くで無い、下品な」

「これ、娘、何処でおそそを拭いて居る、男みたいに立って尿をするで無い」「お婆はんもしてるで」
「何と言う口を利くのじゃ」

「あらら、珍しいや、泣いて居るのか、太一と喧嘩でもしたか。家に帰ってお母ちゃんのお乳を吸って来たのでは無かったのか、実家で何か言われたか」「うちは借金の形に連れてこられた人身御供か」「何やて、誰がそんな事を言うた、其方はもう家の娘じゃ、太一の嫁に成り一生うちの面倒を見るのも良し、家から嫁に嫁ぐも良しじゃ余計な事を勘ぐるで無い」「本真か」


「お母はん、喜んで、明日赤飯炊いて」「やっと、メンスでも始まったか」
「やっと、メンスが無く成った、やや子が出来た見たいえ」「何やて」
 次の日に母は言われた様に赤飯をたいて、いわしの丸焼きを添えた。
「如何した、祝日でも無いのに赤飯なんか炊いて、晶子はやっと女に成ったんか」
「やや子が出来てんて、太一は未だ高校生やで、先生に何と言い訳しよう」
「御腹が大きく成る前に祝言を挙げんとな」「あんさんも何とか言いなはれ、未だ子供やと思って、甘やかすからこんな事に成りまんねん、もっとしっかりしなはれ」

 或る日の事、狂犬よりも劣る鬼畜が押し入って来て、部屋の中を土足の儘で金目の物を彼方此方物色して居った。母の夏江は近所の葬式で便所に行きたく成って小走りで帰って来て、草履を揃える慎みも無く便所に駆け込もうとした時に賊と鉢合わせてしまった。機械の太い金属鋸の折れた鋸の歯を研いだ手製の刃物をちらつかせてやりたい放題に悪さをして居ったので有る。変質者で痴漢の強盗で有った。買い物して帰って来た晶子は何やら怪しげな気配を感じ、擂り粉木を背中に隠し持ち居間をソット覗き込んだ。「晶子、早よ逃げ、強盗や」賊は美人の夏江の喪服姿に興奮してしまい。おそそを弄んで居った。「あ、小便垂れしょったな」賊は怒って姑を小刀で刺うとしたので、晶子は擂り粉木で賊を一撃で倒してしまった「殺してしまったんか」「如何しよう、正当防衛やろ」「好かった生きて居った、気が付きよった」「二度と来るな、阿呆、呆け、糟」「お母はんたら、尿垂れしてしもうたんか、うちもチビッテしもうたわ」「黙っとこな、二人丈の内緒やで、良いな」晶子が床を雑巾掛けして居ったら、父が珍しく早く帰って来て「ほう、珍しい、晶子が雑巾掛け何かし居って、尿垂れでもしてしもたか」「あんさんは余計な事は言わんで宜しい」又、母に叱られてもうた。猫が遣って来て一寸臭いを嗅ぐいで何処かえ行ってしまった。

「これ、嫁御、昼間から欠伸ばかりするで無い」

「これ、嫁御、さっきから何処を触って居る、其方は御腹にやや子が出来ても未だ盛りが憑いてしまって居るのか」

「これ、嫁御、何と言う格好で風呂から出て来よるか」「一寸、御便所へ」

「これ、嫁御、又、胡座を掻いて居るのか、女だてらに恥ずかしくは無いのんか、パンツが丸見えでないかはしたない」

「これ、嫁御、人前でおならを放くで無い、下品な」

「これ、嫁御、何処でおそそを拭いて居る、男みたいに立って尿をするで無い」「お婆はんもしてるで」「何と言う口を利くのじゃ」

 相変わらずで有った。

 姑は世間体を気にし、結婚式を延ばしに延ばして居ったが、晶子の御腹は日増しに大きく成って来た、如何にも世間を欺け無く成ってしまった。内輪丈の挙式を自宅でと考え、寺の和尚(おっさん)に頼み込んで仏式で行う事にした。晶子は一旦、実家に帰し、自宅からハイヤーで嫁がせた。白無垢の花嫁衣装を着た晶子は天女の様でも有った。和尚の有り難い長い長い読経の後、晶子は仏壇ににじり寄り先祖の霊に焼香を手向けて両手を合わせて合掌し、何やら願い事でも有るのか、暫くの間、拝んで居った。

「お母ちゃん、何やら身体の調子が何時もと違う、此の儘死んでしまうのんやろか」「これ、何て縁起の悪い事を口にするか」「晶子さん、帯がきついのんと違うか、奥で緩めさせて貰い」「晶子、御手水に行きたいのなら行かして貰い」「おなかが痛いねん」「真逆、陣痛や無いやろな、予定日より一月も早いで」「奥で横に成らして貰い」「夏江、早く蒲団を敷き」「救急車を呼ぼか」「もう手遅れじゃ、破水してしまって居る、此処で産んでしまえ」「此処でお産をするのか」「お母はん如何ないしょう」「太一御湯を沸かし」「あんさん、酔どれ先生を呼んどいで」「彼の獣医のか」「此の際しゃないやろ」花嫁は花嫁衣装を汚してしまい「一寸待って、お産の前にお便所へ」「便所でやや子を産み落としてしまった大変や、構わぬ此処で放いてしまい」と言って居る内に御産が始まってしまった。産まれてしまてから、やっと獣医が遣って来て下さった。「これ、其方は昼間から酔ぱらって居るのか」呆れ果てる夏江。「濃い珈琲を何も入れずに」後産も無事出たのに、何やら可笑しいので有った。又、陣痛が始まったので有る。「未だ産まれるのんか」晶子は双子を産み落としてしまった。二人共女子で有った。母子共に元気で有った。

 お七夜も無事に済み。一月程経った或る吉日に近くの佐太天神宮にお宮参りをした、何やら晶子は誇らし気で有った。晶子の子を抱いた母の夏江は自分の子の様に喜んだ。


「これ、晶子、昼間から欠伸ばかりするで無い」

「これ、晶子、さっきから何処を触って居る、其方は御腹にやや子を産んでも未だ盛りが憑いてしまって居るのか」

「これ、晶子、何と言う格好で風呂から出て来よるか」「一寸、御便所へ」

「これ、晶子、又、胡座を掻いて居るのか、女だてらに恥ずかしくは無いのんか、パンツが丸見えでないかはしたない」

「これ、晶子、人前でおならを放くで無い、下品な」

「これ、晶子、何処でおそそを拭いて居る、男みたいに立って尿をするで無い」「お婆はんもしてるで」「何と言う口を利くのじゃ」

 相変わらずで有った。

「あんたらのお父ちゃんとお母ちゃんはあんた等をほったらかして雑魚取りに遊び呆けてるで、困った者やなあ。お母ちゃんのお乳ほしいわな、牛の乳ではな、うちのお乳吸うてみるか」「夏江、何をして居る、其方のお乳が出る訳無いやろ」「お母はんも何とか言ったって、このうちにやや子の襁褓を返さすわ、洗濯させて置き乍、自分達は子供みたいに雑魚取りで遊び呆けて居るねんで」「未だ子どもやがな」若夫婦は小川を堰き止めて水をかい出しての雑魚取りをして居ったので有る。側を通る村人は「まあ、仲の良い事」と言い乍も呆れ返って居った。村中を流れる小川でも鯉や鮒、鯰や台湾泥鰌が住んで居ったので有る。昔は生活水にも使って居ったので有る。昔の小川は想像する以上に豊かでも有った。
「如何しよう、おしっこ垂れしてしもうた、我慢が出来ん様に成ってしもうた」「放いてしもたんか」「やや子を産んでから締まりが無く成ってしもうた」「もう帰らないと、やや子にお乳をあげる時間よ」晶子のお乳は溢れる程良くでたので有る。二人は日が暮れてやっと家に帰って来た、びしょ濡れで泥だらけで有った。「まあ、そんなみっともない、恥ずかしい格好で帰ってきたんか」呆れ返る母。「早よ二人共風呂に入り」太一は高校を卒業後は親戚の酒造元に勤め、やや子も元気に育った。相変わらずの女で有った、乳離れが済んだと思ったら、又、やや子が出来たらしい やや子も若夫婦も元気で、父も母も達者であった、祖母も未だに口達者で有った。晶子は頑張って五人ものやや子を産み落とした。庭の池の台湾泥鰌も大きく成り池の主と成った。晶子は相変わらず胡座を掻いては夏江に叱られて居った、呆れ返った女で有った。猫は座敷で新聞を読む晶子の背中で昼寝をしたがるので有った。寒い日の板の間は歩いて居る足の上にも載りたがるので有った。天下泰平で有った。




            2006−09−02−155−01−OSAKA



                     HOME
                  −−戻る 次へ++