言い懸かりを着けに来た女

 此の大阪の私鉄や地下鉄に今だに女性専用車両成る物が走って居ます。如何に以前は痴漢が多かったかが連想されます。世界に恥晒しでも有る。痴漢を為る男も男だが、ミニスカートや御臍の丸出しの服、肌が透けて見える様な服を着て居る女には罪は無いので有ろうか。冤罪で会社を解雇され、前科を着けられた酷い話も世には有る筈。可愛い女が痴漢だ叫ぶと周りの男共は我先にと確かめようともせず男を群がって袋叩きにし取り押さえ様とするので有る。紳士たる者其の様な女子の傍には近づかぬ事で有る。鞄を脇に抱え、本でも手にすべきなのか。女も痴漢されたら其の時に大声言うべきで後から言い懸かりを着けられても困るので有る。
 四郎は或る日痴漢と間違えられて酷い目に遭ったので有った。隣の若者が何やらモゾモゾして居ったが真逆痴漢を為て居ったとは思っても見なかったので有る。変な女が間違えて後を着けて家まで言い懸かりを着けに遣って来てしもうたので有る。災難で有った。
「こんな大きな家に住み、背広を着、ネクタイを締めた紳士が何でうちの御尻を触ったりすねんや」
「良い歳放いて痴漢なんかして恥ずかしくは無いのんか」
「何もしてないですよ」「奥さんに言いつけて遣らないと腹の虫が治まらぬわ」
「奥さんは居らぬのか、帰って来る迄待たしてもらう。上がらせて貰っても良いか」
 女は勝手に上がり込んでしまった。世の中には呆れ返った女子も居ったもので有る。
「何ぼ待って貰っても帰っては来無い」「痴漢で捕まって、女房に逃げられたか、当然じゃ」
「大学の教授もスカートの中を覗く痴漢をする時代じゃ、世も末じゃ」
「あんたは、うちを鬼やと思って居るやろ、警察に突き出され、会社を首に成りたかったんか」
「何ぼ隠してもうちに気が有る事位判って居るねんえ」「契約して触り放題にしてあげる由って私を援助して、パンツの替えを買うお金にも事欠く始末や」
「金を取るのんか」「私への慈善事業や」「呆れ果てた女じゃ」「触らしてあげる」と御尻を突き出した拍子に「御免おならが出てしもうた」「又、来てあげる由って楽しみにな」恥ずかしく成ったか逃げ帰ってしまった。四郎は暫しの間開いた口が塞がら無かった。
「痴漢は居てるか」次の日曜日に又、変な女が勝手に上がり込んで来てしもうた。災難が続くので有った「又、彼の女か」「なあ、あんた、今日は良い物を見せてあげる由って、この前の失礼は堪忍して、心を入れ替える由って」何を見せる心算なのか、何やらモジモジと猥らな。
「見たく無い、御便所へいらっしゃらない」一体便所で何を見せて金をせびる心算で有ろうか。女は便所の前で我慢出来無く成り尿垂れをしてしまって大変な事に成った。余程恥ずかしいかったのか放心気味で有った「如何した、放いてしまったんか」「もう許さん、人の家に勝手に上がり込んで小便垂れなんかし居って」四郎は女を座敷に押し倒し犯してしまったから大変な事に。「此の儘じゃ恥ずかしくて帰れ無い」とスカートとパンツが乾く迄、バスタオルを腰に巻きつけて、何やら台所で勝手に冷蔵庫を覗いては何やら作りだし、しばらくて美味しそうな匂いが漂い出した。間の悪い事に四郎の母親が見合い写真を持って見合いを勧めに遣って来て変な女と鉢合わせしてしまった。
「これ娘、こんな処で何をして居る、何んと言う可笑しな格好をして居る」「尿垂れでもしてしもうたか」「呆れ返った女子じゃ」
「あら珍しや便所の掃除をして居るのか」
「四郎、あの女の名は」「さー」「名前も知らぬ女ともうしてしもうたんか」[売女か」
 口の悪い母は四郎に散々文句を言い、愚痴を零した挙句に帰ってしまった。
「もう後悔しても遅いわよ、私達はもう夫婦に成ってしまったんよ」関係を持ったら夫婦に成るものと思い込んで居るので有った。
「あんたのお母はんて良い人やね、叱られて御尻を打たれるかと思ったのに」
 女は勝手に結婚を決めてしまったのか帰る心算が無い、厚かましい限りで有った。
 四郎が風呂に入って居ると勝手に入って来てしまい。
「うちも入ろと」前を隠す気も無いのか四郎は目の遣リ場に困ってしまった。「背中を流してあげる」と言っては後ろから抱きしめ御乳を背中に押し付けるので有った。四郎も四郎で長年の女日照りで一気に爆発してしまったので有る。「こら、そんな処に接吻してはならぬ又、御粗相をしてしまうで無いか、汚いではないか」
 朝起きて腹具合が悪く成って大便所に駆け込んだら女が入って居た。鍵を掛ける気も無いらしい。女はスカートをたくし上げた儘慌てて出て来て呉れた。
 食事中に。
「喜び過ぎて、おしっこ垂れしなや、うちが結婚してあげる」勝手に結婚を決めて宣言してしもうた。
 四郎は名前も知れぬ女に夫婦の約束をさせられてしまったので有る。
 其の日を境に女はピタリと来無く成った。余りに厚かましい自分の恥に気が着いたので有ろうが、四郎も不思議と会いたく成るので有った。或る休日に初老の紳士と淑女が正装して遣って来て、末娘を嫁に貰って欲しいと頭を下げて頼み込んで来た。可也の名家の末娘らしい。話によると末娘は医者の薬も草津の湯でも効か無い恋の病に罹ってしまったと言うので有る。四郎は断りかね結婚する事と相成ったてしまった。花嫁は是非四郎の家で仏式で挙式を挙げたいと駄々を捏ね、大型のハイヤーで家に遣って来てしもうた。角隠しを着け、金襴緞子の花嫁衣裳の下の何やら御腹が大きいので有る。やや子が出来て居るらしいので有る。痴漢と間違われたばっかしに思わぬ事に成ってしまったので有る。男子たる者、痴漢に間違えられた場合でも本当にして無かったら、して居無いと譬え女房に寝首を馘かれても言い続けましょう。女の嘘は一生吐き通せば本当に成るらしいが。浜の真砂が尽きる時が有っても、世に痴漢の種は尽き無いので有ろうか。
 男を馬鹿にして得意に成って居る女は、天に見向かって唾を吐きかけるて居るが如くでも有る。男と女は仲良くせねば成らぬ者、男を排除すれば問題が解決すると言う物では無い。其の間違いに今だ多くの人が気が着いて居無い。世界に恥晒しで有る。純真無垢な男の子と女の子が一緒に居る丈で卑猥な事を連想してしまう学校の教師、大人の想像の方が遥かに猥褻でも有る。
 女は玉の様な男の子を産み落とした、口の悪い姑も度々孫の顔を見に遣って来る様に成った。四郎は給料を全部取られてしまい、煙草銭にも事欠く始末と成った。既に賞与の使い道も勝手に決めてしまって居るので有った。四郎が口答えすると「痴漢をして置き乍」と言うので有った。四郎は一生尻に敷かれぱなしで有った。




            2006−10−08−01−01−OSAKA




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