くらわんか

 くらわんかとは食べないかの関西の方言で有る。「酒くらわんか、餅くらわんか」と言っては食べ物等を売って居た。そんな横柄な商法でも、美味しかったら人は買うので有る。仮初にも美しい日本語とは言い難いが、方言が消え去り、訳の分ら無い外来語のカタカナ文字が矢鱈増える昨今では、日本文化の衰退も示唆して居るのか。言葉こそ文化の中心で有り。言葉を大事にしない国は衰退するので有る。
 当地の方言に関しては何やら曰くが有りそうです。人から聞いた話では有るが、昔、或る武将が負け戦で逃げ廻って居った所、当地の民が匿って助け、其の後、武将は天下人と成って、其の時の御礼をしたいと言う話が出た時に、御金では無しに、自由に方言を言える様にしてほしいと言ったとか。御金より言葉が大事で有ったので有る。又、西国の侍が京に上って、謀叛を起こすのを言葉で威嚇する必要が有ったのか、かくして当地の言葉は汚なかったのと言う説も在ります。
 日本語は美しい表現も多いが、其の恩恵を受ける人は少ない。日頃から文章を書く習慣が出来て居無いからで有る、日記すら書か無い人も多い。日頃の挨拶ももっと色々とバラエティーにとんでも良さそうにも思えます。朝の挨拶も、寒い時は「御寒う御座居ます」暑い時は「御暑う御座居ます」と言えば良さそうなのに、たった一つの挨拶しか使わ無い人も多い。映画やドラマのプロポーズの場面は夢の様な会話が続きますが現実とは余りの大違いで有る。
 接客商売の矢鱈丁寧は言葉を聴いては、空しい思いがするのは何故なんでしょうか。
「雪がシンシンと降る」音のしない様を言葉で表現しつくす日本語の表現力の底力を見る思いがします。「藪から棒」「地團駄を踏む」の様に、余にも具体的過ぎる言葉も有る。そのまんまです。
「矛盾」「推敲」の様に中国の故事から来た言葉も多い。
 物理や化学、医学等、自然科学等の専門用語も漢字の恩恵で全部を暗記しなくても、大体の意味が分るのも素晴らしい事で有る、外国語ではそうは行か無い。明治の学者達が外国語を元に、苦労して日本語を作った努力が偲ばれます。外国語を勉強すれば其れが分かります。
 日本語の素晴らしい色彩感覚には驚愕します。色見本の色の数丈、色の名前が着いて居る様です。絵の具、染料、顔料の名前も様々です。山吹(やまぶき)、 鶯色(うぐいすいろ)、 木賊(とくさ)、 浅 葱(あさぎ)、瑠璃色(るりいろ)、江戸紫(えどむらさき)、京紫(きょうむらさき)、茜(あかね)海老色(えびいろ)、柿色(かきいろ)、金茶(きんちゃ)、黒(くろ)・・・・
 形容詞や副詞の中には特に美しい表現が有ります。
「ほっこり」「もっこり」「さっぱり」「ゆったり」「まったり」「もっそり」「むっちり」・・・
しかし、日本語を勉強して居る、外国人には悩みの種でも在る。外国語に訳せ無い表現が多い。
 美味しい料理を食べて居る時に「美味しい」以外の日本語が見当たら無いのが不思議の限りでは有る。 日本語には物の数え方が物に依って変わります。其れを知って居る事が、教養の有る証とも成ります。 箪笥は「1棹(ひとさお)」、鱈子は「1腹(ひとはら)」、蚊帳は「1張(ひとはり)」、蔵は「1戸前(いっとまえ)」等、此れも又、外国人泣かせの一つです。
 小学生の頃、テストの回答に方言を書いてしまい、×に成った苦い経験をした人も多い。皆そう言って居るのにと思ったものです。学校では方言を教え無いので有る。当地の言葉を学校で教え無いのは珍奇の限りでは有る。方言が死語に成る日も近いのか。
 童話や昔話の中に、方言や差別用語が在るからと言って、子供に読ませ無いのは間違いで有る。百害有っても、其れを凌ぐ発見が有る筈。親の思い、判断で子供の夢を奪っては成ら無い。方言の持つ強烈な表現力は標準語では叶わ無い。外国で悪人を方言の一喝で撃退した例も多い。放送局や新聞社では方言、隠語、死語、差別用語等の使用禁止用語リストなる物が有って、日頃勉強して居るので有ろうか、其れは若い女性が読むのも恥ずかしい隠語等は抜いて有るので有ろうか。其れは一般の人でも手に入るので有ろうか。其のリストが手元に無ければ、人は使用してしまうと思うのですが。使用禁止用語が段々に増え高齢者には新しい言葉を次々に覚えて行くのは大変です。程々にして頂きたい物で有る。
 日本語には外国語に無い優れた特徴が幾つか在ります。
  ・縦書きも、横書きも出来る。
  ・外国語の多くが主語の次に動詞が来るのに、日本語は一番最後に一番大事な動詞が来ます。話をして居る最中に気が変っても充分に対応が出来ます。
  ・漢字仮名混じり文の為、初めて目にする物理、化学、医学等の自然科学の専門用語でも、漢字の恩恵で意味が大体分かるので有る。盲腸や虫垂炎は見れば意味が分かるが、外国語では正しいスペルを書くのは大変な事で有る。簡単には覚えられ無い。日本の学生の学力が高いのも、漢字の恩恵の受けて居る所が多いに有る。
  ・幼児に対しはひらがなでの教育が可能で有る。漢字の国の中国では大変で有る。
  ・外国語をカタカナ表記でで簡単に日本語に取り込める。欠点でも有るが。
  ・「ガサガサ」「ゴゾゴソ」等リアルな擬音語や擬態語が多い。
  ・日本は南北に長く、四季に関わる美しい言葉が多い。
  ・冠婚葬祭に関する言葉は古風な伝統を感じさせる言葉が多い。
  ・カレンダーの月も簡潔で明快です、世界の中での、日本方式の併用を進めたい物です。
  ・助動詞を変化させる丈で所有時制に対応出来る。
 女性がくらわんかなんて言ったら引っぱたかれ兼ねません。くれぐれも御注意の程を。
              2005−04−29−27−OSAKA


                     HOME
                  −−戻る 次へ++