騒音の中で

 建築基準法が変わり、耐震強度に問題有りの建物が数多く出て来た、耐震補強工事が必要にも成る。企業では生産を止める訳にも行かず、費用も掛かる、大変な事態で有る。生産を続け乍の耐震工事と成る。方法は色々有るが、工期と費用が絡んで来る。窓を潰し壁を補強する方法や、柱を鉄板で覆う方法、鉄骨のX字の鎹を取り付ける方法等色々で有る。生産を続け乍の工事は至難の業で有る。粉塵を防ぐ養生が大変で有る。防音対策も必要で有る。工事は土地の境界線上で防音シートは張り廻らすが天空に迄は張ら無い。結局近隣住宅に迷惑を掛ける事と成る。近くに学校や病院が有るビルでは大変で有る。
 騒音の中では集中力が欠く、間違いも起き易い、考えが纏まら無い。実体験の結果で有る。たかが騒音がで有る。都会の騒音が人の判断力を鈍らせ、理性を陰らせて居る。静かな田舎では起き無い様な犯罪が都会では起きて居る。静かな寺院で座禅を組んで瞑想に耽るりたいと思う人も居る。静けさを表すのに遠くの鶏の声や小鳥の囀り、虫の鳴き声等で表現出来るのも不思議で有る。雪がシンシンと降るのシンシンは音では無い、状態を表す擬態語で有る。雪は音を吸収する為に静かで有る。雪の降って居る時は線路は歩かぬ事で有る、列車に轢かれぬ為にも。風の無い森の中で耳が可笑しく成る程の静けさを体験した経験が有る。無音は人にとって健康に良く無いのは確かで有る。木の葉のざわめき、小鳥の囀り、虫の声、小川のせせらぎの音が必要と成る。静寂を破る獅子脅しの音、水琴窟の音色、人工的な音迄も妙なる響きに聞こえる。
 家に帰るなり条件反射的にテレビのスイッチを入れる人も多い。テレビが点いて居無いと時代に取り残され、仲間の話題に付いて行け無く成る恐怖を感じる為でも有る。テレビを観乍、勉学に勤しむ学徒も多い。注意散漫に成って学習効果は余り期待出来無い。義務教育の過程では真面目に勉強する学徒はそこそこ成績も良く成るが、大学受験が人生の登竜門の様な様相を示す。国立大学の入学者の数が高校の評価に利用される。高校の高学年に成ると急に授業内容が難解に成る、当然落ち零れる学徒が出て来る。テレビを観乍の勉強では理解が出来無い。詐欺の様な世界でも有る。大学で四年間勉強した丈で其の高校生が教師に成れる程の人格者に成れるのも不思議で有るが。受験戦争に勝つ技術を身に付けた学徒も多い。受験回答技術を教える学習塾も有る。試験に出無い疑問な事は教え無いので有る。
 都会の騒音の雑踏の中に居て孤独を感じる現代人。救いを求めて珍奇な新興宗教に走る人も居る。大学を出た知識人でも信者の巧みな勧誘の言葉に騙され易い。思い込みが発生する。現代ではインターネットを利用して怪しげな情報を集め信者を集める宗教も有る。地下鉄でサリンを撒いたオーム真理教も名前を変えて未だに解散して居無い。瞑想の為の怪しげなCDも販売されて居る。音楽のCDとしては高価で有る。
 甲板用便勝手良し便所にも行け無い戦争の悲劇で有る。用便の為に命を落とした兵隊も多い。機関砲の砲弾が皮膚を掠め鎌鼬の世界で有る。当って吹っ飛んだ手足は海にすてられる。恐怖と騒音で上官の命令も聞き取り難い。恐怖と騒音の中では判断力も陰る。上官はうろたえてなにも出来無く成っても兵隊は日頃の訓練通りに為る丈で有る。実際に身体を動かして働く現場の労働者の強みが有る。巨艦も弾薬庫に魚雷が命中すると轟沈する。不沈艦等有り得無かったので有る。工事の騒音を聞いて居ると戦時下の様でも有る。考えが纏まら無い恐怖も有る。工事の目的が地震での建物の倒壊を予防し人命を救う為と称す為、労働組合も反対も出来無い、騒音に唯唯我慢する丈で有る。
 音楽は妙なる音色で人々を魅了する。楽器は何百年も形を変え無い不思議な器具でも有る。形を変えると音色が変わって仕舞う為でも有る。多くの機器が形を変え進化を遂げて来たのにで有る。オカリナの様な素朴な楽器も有る。パイプオルガンの様な巨大な楽器も有る。ストラビバリウスのビオロン(バイオリンの事)の様に古い名機が家が買える高値で取引され博物館に飾られるので無く、実際の演奏に使用される。音色は学生用の練習器と可也違う。其の名機も下手な人が弾くと騒音に成る。オルガンやハーモニカの音は、格別に懐かしい想いも有る。小学生の童謡の物悲しい世界で有る。セピア色の写真の世界でも有る。二度とは帰れぬ懐かしの世界で有る。
 長い演奏曲の中で一度しか鳴らさ無い打楽器も実際に在った。其の大事な一打を打ち損なった打楽器演奏者が居た。何を為に其処に居たのか分から無い。
 オーケストラの演奏で大砲の音が登場する曲が実際に有る。流石に本物の大砲は登場為無いが、火器の代用機が使われて、火薬が実際に使われる。観客は驚愕したに違い無い。物騒な戦争に使う大砲の音が祝砲に使われるのも不思議で有る。昔は大砲の性能も悪く、一度撃ってしまうと砲身を掃除し油を塗り火薬を詰め、砲丸を装填して砲撃出来る迄に可也の時間が掛かる、一斉に撃ってしまうと次の攻撃迄に可也の時間が掛かる。直ぐに砲撃出来無い事の証に成る。敵に攻撃の意思が無い事の証に成る。敵を喜んで向かえ入れる為に大砲を態と撃ってしまったので有る。其れが祝砲の始まりで有る。今でも外国の元首、首相、国王、大統領を迎える時に祝砲が撃たれる風習が残って居る国も有る。江戸時代には御昼を知らせる為に空砲が撃たれた事も有った。半ドンとして言葉に残って居る。ドンとは大砲の音の事で有る。寺の梵鐘の音も遠くで聞くから心が清まるが、近所の人は騒音にも聞こえる。除夜の鐘を聞いて年を越すのも大変に成る。寝た子が起きて仕舞う。
 人は昔から騒音には苦労して来た、国道や線路、工場、空港の傍の住人は尚更で有る。窓を二重にする等の防音対策は出来る、窓が開けられ無いのが難点で有る、冷房装置も必須に成る。当然費用も嵩む。騒音の出る作業場では耳栓の使用も必要に成る場合も有る。難聴に成ったら大変で有る。マンション等の集合住宅ではピアノの練習音が気に成るところで有る。犬も喰わ無い夫婦喧嘩も有る、親に虐待され悲痛な泣き声のをする子供も居る。犬や猫は啼いたり吠えて煩いので飼うのを禁止される。
 落雷時の雷鳴は巨砲の砲撃音にも匹敵するが余り人は驚か無い、稲光が先行為る為で有る。鳴る事の予想が付くので有る。自然現象は野生動物も余り驚か無い、人の鉄砲の音に怯える。其の鉄砲の音も久しく聞か無い、巷の烏は遣り放題で有る。
 昭和二十年の戦時下の夏の八月に人類史上最大の人工の音を聞いた人が実際に居た。火山の噴火や隕石の落下に匹敵する人工の轟音で有る。其の轟音を二度も聞いた不幸な人も実際に居た。原子爆弾の炸裂音で有る。一発の爆弾で何万人もの人が焼き殺され、原爆症に罹った。何の罪も無い妊婦、子供迄で有る。生き延びた人は水を求め巷を彷徨い、ヤット水場を見付け水を飲みホットして、終戦を見る事無く永久の眠りに付居た。政治家の愚行で戦争を始めて仕舞った顛末でも有る。
 戦争は悲惨で有る、戦争は軍人様の仕事で自分には関係が無いと思い込んで居た人も、自分の家がゼリー状のガソリンの焼夷弾で焼かれて初めて気が付くので有る。水を掛けても消え無い爆弾で有る。其の戦争の悲惨さを語り継ぐ人も少なく成った。最早戦後では無いと公然と放言する政治家も居る。戦争の悲惨さは敵からの攻撃丈では無い、軍隊内の虐め、賄賂、兵隊同士殴らされる世界でも有る。上官に嫌われると最前線に遣られる。戦争の悲惨さを忘れた政治家が日本国憲法の改悪や徴兵制度を言い出す。教育基本法を改悪して御国の為に命を捧げる若者を育てる。工事でコンクリートを壊す削岩機の騒音を聞かされて終思って仕舞った。何やら戦争への足音が聞こえて来そうで有る。






          2008−03−03−301−01−01−OSAKA



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