鼻撮み女房

 母者の不倫の子の雪子は四姉妹の中で只一人、雪子丈が大学にも、勤めにも、嫁にも行けず鼻撮み者で有った。良きところに嫁いで幸せな姉達は何度も見合いをさせたが悉く断られて愛想を尽かし此れが最後と言い聞かせて平助と見合いをさせた。
 緊張の余りかおならは放くは、洟はかむは、脚が痺れをきらしひっくり返るわで有った。
 春風が吹いて花粉が飛んで、花粉症の人には辛い季節で有った。雪子は大きなクシャミをした拍子に尿失禁をしてしまった。
「おしっこチビって仕舞った、如何しょう」
「もう、汚い、男の人の前で恥ずかしい事口にしてはしたない」姉の夏枝は呆れ返って仕舞った。
「尿垂れしてお姉ちゃんの着物を汚して仕舞ったら大変や」又、洟をかんだ。
「うち、尿放きと成った、あんたも放き」平助を誘って便所に立った。和服を召した既に結婚して子供も有る上品な姉の夏枝は呆れ果ててしまった。
「こんな事しか楽しみが無いやなんて、二人共情け無いわね」手巾で手を拭き乍雪子は言うた。
「あんたはやや子が欲しくは無いのんか」後の無い雪子は平助で我慢する心算か近くの天満宮に御参りしたいと言い出した。
「こうして二人連れで詣出たら、夫婦に成った様な変な気に成るわね」
拝殿で礼拝の最中に雪子は又おならを粗相してしまった。
「何と言うはしたない女子じゃ」平助は雪子の御尻を叩いて仕舞った。
「あんた、わての御尻を叩いたな」大変な事に成って仕舞った。
「うち、又、尿放きと成った、あんたの家は近くやろ」

 雪子は男の家の男臭さに思わず鼻を撮んでしまった。
「あああ〜うち、ばば籤引いてしもうた」雪子は座敷に寝そべり童の様に脚をバタつかせ悔しいがった。裏の泥棒猫が遣って来て御腹の上に載った。何を思ったかムックリと起き上がり山の様に溜まった臭い下着を洗濯し、台所を片付けだした。やがて夕食の御飯を炊き出し、何かを作り出した。如何やら泊まって帰る気らしい。

「うち、如何為よう、男の人と一緒に御風呂なんか恥ずかしくて入られへん」雪子は一人卑猥な事を想像為て顔を赤らめた。何か勘違い為て居るのか背中を流すのが妻の務めと思って居ったので有る。
「あんた、うちの御尻を触らせてあげる」「うちの御尻では気分はそそらんか」
「ほんなら、御乳を触らせてあげる」「あかんか」 
「何かの呪いか」
「あんたは又阿呆放く心算か、他所の女の御尻を撫でて、又豚箱に打ち込まれたいのんか」
「やや子は欲しくは無いのんか」
「うち、聞いてんねんえ、電車の中で他所の女の人の御尻を撫でてしまって、警察に突き出されそうに成って、土下座して謝って許して貰ったそうや無いか、見っとも無い、恥晒しな。此の大阪に今だに女性専用列車が走って居るのも無理の無い話じゃ、世界に恥晒しじゃ。心配為るで無い、あんたが痴漢の気が有る事は承知の上の縁談じゃ」「そんあ、昔の話」
「着物の裾が綻て居るで」「へー」何やら懐かしい田舎の臭いが。雪子は又御粗相を為て仕舞うたので有る。

「うち、催して来てしもうた、御粗相を為て仕舞いそう」前を押さえモジモジと何やら卑猥な。
「出し惜しみをして居るのか」
「早く、御乳が漏れて胸が濡れる様に成りたい」


「うちの御便所覗かせてあげる」「何を企んで居るのじゃ」
「うちのしっこでは気分はそそれんか」「あかんか」
「うち、聞いてんねんえ、女先生の教職員便所を覗いて退学させられそうに成り、土下座して謝って許して貰ったらしいでないか、見っとも無い、恥晒しな。心配為るで無い、あんなは変態で有る事は承知の上の縁談じゃ」「そんな昔の話」
「あんた、何処へ行くねんや」「一寸小便じゃ」「うちも為よう」
 余程我慢して居ったのか、扉を閉める余裕も無かったのか御尻を捲る成り慎み無く派手に遣りだした、屁迄で放いて仕舞う有様で有った。下穿きを上げ乍出て来て仕舞い、言うた。

「夫婦に成ったら接吻させてあげるよって楽しみにな」
「そんな恥ずかしい事を、しっこはちびらぬだろうな」「何を勘違い為て居るのじゃ」
「洟が垂れそう、あんたかんで」「亭主に洟をかませるのか」呆れ乍も我儘女房の言い成りの亭主。

「如何しよう、男の人と一緒に御風呂に入るの何か生まれて初めてや、うち恥ずかしい」もう初夜の心算で有った「御背中を御流ししますわ」強引に入り込んで来た。濡れ無い様に裾を捲り上げて。
「うちも一緒に入ろ」慌てて帯を解き湯舟に飛び込んだ。
「男の人と一緒に御風呂を入るのんて、うち恥ずかしい、おならを放居て仕舞ったら如何為よう、隠し様が無い」

 裏の泥棒猫が又遣って来て湯殿の中に入りたがった。
「御前も一緒に入りたいのんか」「咽喉が渇いて居る丈じゃろが」雪子は前を隠すのも忘れて嫌がる猫を桶に突っ込んで無理矢理洗い出した。
「あんた、何処を見詰めて居るねんや」

「如何しよう、男の人と一緒に褥を共にする何んて生まれて初めてや、うち恥ずかしい」と顔を手で覆って恥ずかしがった。布団を敷き座布団を二つに折って、並べて置いた。
「真逆、泊まって帰る気じゃ」

朝に成って。
「これ、何時迄御乳を触ったら気が済むのじや。あんたはやや子か」雪子は犬の字に成って寝て居った。元気な童の様で有った。
「雪子は腋毛は剃らんのんか」「何で」
「あんた、何処へ行くねんや」「一寸小便」「わても序に為よう」又はしたない連れ尿を為たがった。

 雪子は起きた序に起きて仕舞い。台所で朝食の用意を遣り出した。子供の頃に聞いた懐かし音が聞こえ美味しそうな味噌汁の匂いが流れた。                              

 平助の捺し掛け女房の雪子は鼻筋が通って美人でも有った。他所では貴婦人の様にも見える、素敵な女性だが、家では変態女房で有った。雪子は恩師の一人娘で有った。最初の一年は貞淑な妻を演じて居ったが次第に本性を曝け出したので有る。猫を被って居ったので有る。高慢で我儘の為放題で有った。
 教育一族の血族の筈なのに下品な事と言ったら。何か欲しい物が出来たら、寝物語に亭主の鼻を撮んで甘えるので有った。御風呂に二人で入って居る時は童に戻って仕舞い、照る照る坊主を作ったり。水鉄砲で遊び呆け、ふざけて素足で奇妙に鼻を撮むので有った。休日に亭主が座敷で裏の黒猫の泥棒猫を御腹の上に載せて昼寝をして居ると近付いて来てはスカートを翻し、中を覗かせて鼻を撮むので有った。猫も呆れ顔で有った。

 雪子には変態の気が有った。結婚式も挙げずに夫婦に成って仕舞った為か、親戚の結婚式に参列した日に乱れて仕舞うので有った。着飾った留袖の帯を解く間も無く取り乱して仕舞うの有った。式が終わって帰りに平助は腹具合悪く成り便意を催し、家に着く成り便所に抱え込んだ。雪子も小用を催して居ったのいかソソクサと後を追った。先起こされ困り果てた雪子は矢庭に留袖の裾を捲り朝顔で派手に用を足して仕舞った。慌ててズボンを上げ乍出て来た平助は妻のはしたない格好を観て催して仕舞った。便意の事では無い。野獣の様に後ろから盛って仕舞ったので有る。

「阿呆、良い歳放居て、恥ずかしい事為よって」散々で有った。

 やがて、やや子が出来て仕舞い。野獣の雌は妊娠すると発情は為無いが、雪子は益々盛んで有った。臨月に成っても一緒に風呂に入りたがり、足で平助の鼻を撮む有様で有った。


 平助は高慢ちきで洟をかませるし、一度高慢ちきな鼻を圧折って遣ろうと思って居た。為て居無い結婚式を挙げよう言い出した。如何やら平助は義理の姉の夏枝と不倫の恋をして居るらしいので有る。

 或る日の事、思わぬ珍事が起きた。雪子は遠縁の親戚の葬式に参列した帰り、身重の雪子は小用が近く成り、家まで我慢が出来無く成って仕舞い、已むを得ず公園の茂みの中で足す事にした。誰も見て居無い事を良い事に喪服の裾を大きく捲り悪戯心を出してか、立ち小便を始めて仕舞った。迷惑なのは時成らぬ驟雨に襲われた草葉の雨蛙で有った。下品な話で有る。其れを最高学府に在学の大学生が見て仕舞い欲情が抑え切れ無く成って仕舞い、雪子の後を付けて行き家に着居たら闖入して雪子を後ろ手に縛り、欲情の儘に猥褻の限りを為て仕舞った。喪服の裾が乱れ、真っ白い長襦袢が見えた。
「いけません、この様な事御腹のややに障ります
「奥さんが好きだ好きでたまらん様に成って仕舞った」



「大学生がこんな悪さして許されるのか」
「・・・」
「もう直、主人が帰って来ます、見付かったら大変です」
「・・・」

 大学生は乱れた喪服の雪子の乳房を揉み、御尻を撫で、陰部を弄り、雪子を散々辱めて猿轡をして、公園で読んでいた哲学書を忘れて逃げ帰った。カントの純粋理性批判で有った。
 平助は上品な雪子の姉の夏枝と不倫の恋を楽しんで帰りが遅く成った。猿轡を為れ後ろ手に縛られた雪子は苦しみに悶えて居った。猿轡を外すと。
「もうおしっこ我慢出来へん、早よう御便所に連れて行って」便所に入り夫に喪服の裾をたくし上げるて貰って居る間に放いて仕舞った。

「遅かった無いか、又、姉ちゃんと不倫したたんか」


 やがて、雪子は元気な玉の様な男の子を産み落とした。
 何年か経って子供も乳離れした。前から憂鬱に思って居った、裁判員制度が始まった。(未来の話で有る)或る日裁判員に選ばれた事を示す書類が届いた、半強制的に国民を無差別に選ぶ国家権力の暴挙で有る。資格試験合格した人の中から撰べば良いものを、徴兵制の再施行の布石の一つか。日本国憲法を改悪する目論見も有る。何やら戦争への足音が聞こえて来そうだと雪子は思った。
「又、ババ籤引いてしまた」と言って童の様に座敷に寝転がり脚をバタ付かせて悔しがった。
 忌まわしい母親殺しの裁判で有った。裁判が未だ此れから始まっると言うのに、既に死刑と決め込んで居った
 法廷で裁判官の顔を見て唖然としてしまった。あの忌まわしい事件の強姦魔の大学生で有った。思わず鼻を撮んで仕舞った。裁判官は何も憶えて居無いのか知らん顔で有った。忘れて帰った哲学書を最後の日に返され始めて自分が犯した罪を思い出したので有った。










          2008−04−01−309−02−01−OSAKA



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