吾が愚妻

 当地は昔、佐太村で文楽の「菅原伝授手習鑑」にも出て来る実在の地でも有る。嘗て菅原道真公の領地でも有り、佐太天満宮も有る。近くには幽霊の足跡で有名な来迎寺も在る。昔は田圃や蓮田に囲まれた簡素な村で有った。生駒山や六甲山も良く見えた。晩には二階の窓から京阪電車が走るのが見えた。思い出多い、庭窪中学校や小学校も在る。近くに社名が松下電器産業から世界的なブランドのPanasonicに変わっる中央研究所も在った。Nationalのブランドも有るが。グループ会社も近くに有る。
 当地は吾郷土でも有る。愚妻の郷土でも有る。二人は幼馴染で遠縁の親戚でも有る。祖父同士が法事の席で酔っ払ってふざけて二人の許婚を勝手に決めてしもうた。一美は其れを聞かされてから夫婦ごっこを為出した。私が居無くても勝手に座敷に上がり込んで犬の字に成って昼寝をする有様で有った。其の後時が流れ。一美は二度も結婚し乍、二度も不始末を仕出かして、実家に出戻り女で有った。嫁にも行けぬ一美を不憫に思った寺の和尚が私と見合いを薦めた事から可笑しく成って仕舞った。又、夫婦ごっこを初めて仕舞うたので有る。

 吾が愚妻一美(架空の妻、夢の中の女)妻と言っても未だ籍も入れて居無い。愚妻と言っても愚かな妻の事では無い。或る日、座敷で座布団の上に押し倒し接吻為ようとして仕舞って大変な事に成った。便所を借りるのが恥ずかしくて小用を我慢して居った時に、生まれて初めて接吻されたショックで愚妻が事も有ろうに御粗相を為て仕舞うたので有る。恥ずかしさの余り放心状態で抵抗出来無いのを良い事に私は愚妻を野獣の様に後ろから辱めて仕舞ったので有る。男と関係を持つと結婚しなければ成ら無いと思い込んで居た一美は一晩中泣き徹したが、朝に成って何かを悟ったのか泣き止んだ。一生の不覚で有った。夫婦ごっこも濡らした湯文字(御腰)が乾く迄の約束の筈が未だ乾かずで有る。辱めを受けた事を脅しに遣りたい放題為だした。俗に言う押しかけ女房でも有る。子供が出来たら結婚しようと暗黙の約束は出来て居たが、未だやや子を授からずで有る。神仏に祈っても効果無しで有った。愚妻は動物好きで有った、時々遣って来る野良の泥棒猫が何時の間にか家の家猫に成って、悠然と座敷の上を徘徊為るので有った。座敷の隅に鼠の頭と尻尾の食べ残しが、猫の仕業でも有る。誰もが気嫌う蜘蛛や百足も踏み潰したら可愛そうと文句を垂れる有様で有った。汚れた男のパンツも嫌がらず洗濯為るし、料理も上手だし、滅多に掃除も為無い男の一人暮らしとは大違いで有った。世の中には役所や銀行等休日に門戸を閉ざす理不尽も有る、会社を休まずに用が足せる便利も有った。愚妻は余程恥ずかしかったのか、再び恥ずかしい御粗相をせぬ様に、我慢の練習を為て居る内にしびる寸前の快感を求める、変態性欲異常者に成って仕舞った。我慢が出来無く成り、失敗してしびって仕舞う度にモゾモゾと下穿きを履き替え、態々下穿きの滲みを見せるので有った。呆れた愚妻で有った。御尻を叩かれる御仕置きを期待して居るのか。ワインの壜のコルクを抜くのに壜を又に挿んだり、昼寝をして居ると「好い物を見せてあげる」と言って顔を跨いだりで有る。

 大阪に滅多に降らぬ初雪が降った。初雪や猫の足跡梅の華で有った。猫は寒がって蒲団の中に潜り込みたがった。
「これ、モゾモゾ動くで無い、しっこの我慢が出来ぬで無いか」寒いので不精して便所に行くのを躊躇って居ったので有る。便所を借りたいと言い出すのが恥ずかしくてモジモジして居った娘も今じゃ扉を閉めずに平気で用を足すし、私が大便を足して居る時は朝顔で御尻を巻くって立ち小便で有る。歩いて居る人の足の上に迄載りたがる泥棒猫の厚かましさで有った。私の前でおならを放いて仕舞い頬を赤らめて居った新妻も今や態々傍へ来て放る始末で有った。下品な話で有る。

 春二番が吹く頃はこぶしの花の蕾も膨らんで来る。春近しで有る。家の猫も盛りが付いて煩い限りで有る。愚妻迄雄猫の小さい睾丸を弄ぶ始末で有った。猫めも猫でされる儘に成って居るので有る。こぶしが咲き桜の花が咲き、花吹雪が舞い、小川に花浮き橋を掛け、土筆坊が頭を出す。ケチの愚妻は土筆坊を摘みに行っては御数に為るので有った。休日には何やらイソイソと和服に着替えて御出掛けで有る、不倫でも為て居るのか鼻歌交じりで楽しそうでも有る。外で何を為て居るのやら。家に帰る成り便所に直行で有る。着崩れを懼れて用も足さずで有る。時には間に合わずしびる事も、羞恥心が無く成ったのかモゾモゾと履き替えては滲みを見せる有様で有った。此の世には季節に依って名前が替わる珍奇な物が有る。牡丹餅で有る、秋に成ると御萩に成る。小豆は冬を越すと硬く成り春は漉し餡を使うのが一般的で有る。秋は小豆も柔らかく粒餡も作れる。濾し餡を牡丹餅、粒餡を御萩と改名しても不具合は少ないのたが。見た目の通りでも有る。言葉の変遷が予測出来る実例で有る。テレビでは経費をケチって再放送も多いし、商品表示の商品名の混乱も有る。愚妻も牡丹餅を作るのが好きで有る。春は花粉症の季節でも有る。私に洟をかませる始末で有った。汚い話で有る。

 憂鬱な梅雨が終わると気が狂いそうな猛暑の真夏が大阪に遣って来る。冷房機の無かった昔は打ち水をしたり、風鈴で気分丈でも涼しくで有る。南国生まれの猫は比較的暑さに強い。休日の午後、本を読みつかれ座布団を二つ折して座敷で昼寝をして居ると決まって猫が何処からか遣って来て片足を御腹に載せて載って良いか聞く、勝手に載ると叱られる事が判って居るので有る。愚妻は今時珍しい蚊帳を吊りたがるので有った。何を考えて居るのか猫迄もが蚊帳の中に入りたがった、人を湯たんぽ代わりに為て無い事丈は確かで有る。確かに蚊帳を吊ると落ち着く事は確かで有る、殺虫剤や香取線香よりは健康に良い。落雷時に助かる可能性も大きい。七月は夏祭りの時期でも有る。天満の大阪天満宮の夏祭りは日本三大祭り一つで、三天神の一つでも有る。勿論他の天神宮も時期を同じくして夏祭りが行われる。昔、儒家林法印道春(林羅山)が「河内国佐太菅廟記」の中で三天神として居る佐太天満宮も夏祭りで有る。正保三年(1646年)の話で有る。昔、淀川を上り下り為る舟の舟人は当地に近付くと舟の上から拍手を打って、一礼して旅の安全を祈願したとか。実在する佐太の地名は文楽で有名な「菅原伝授手習鑑」の中に出て来る佐太村の事で有る。私も中学生の時に祭りの囃子太鼓を敲いた経験が有る。祭りの総代が太鼓を敲く様に差配を為て太鼓を敲か無いと、神輿も勝手には境内から出られ無いので有る。総代の差配一つで有る。伝統の重みを感じた。吾が愚妻も祭りの日には散らし鮨を良く作る。熱い時期丈に冷たい鮓をで有る。酢は腐敗防止にも役立つ。台所用の白木の盥は水分を吸う重宝が有て鮓がべた付か無い。

 秋は美味しい果物や木の実や芋や茸が豊富に収穫出来る時期でも有る。柿や梨や桃や林檎や蜜柑、栗や薩摩芋や柘榴も取れる。木の葉が紅葉し、風に舞うのを見て心が物悲しく成るので気候は良いが嫌う人も多い。多くの野生動物にとっては過酷な冬を迎える為に肥る必要の有る馬肥ゆる秋でも有る。愚妻も何を思ったかやや子が欲しく成ったらしい。金曜日の晩は何故か苧環蒸しを良く作る、何やら催促の如くでも有る。苧環蒸しは大田巻き蒸し饂飩とも書くが茶碗蒸しに饂飩を入れた懐かしい料理で有る。昔は大阪でも良く作られた。今は手間が掛かるので衰退気味で有る。同棲当初に美味しいと褒めたら、事有る度に作るので有った。勿論給料日や賞与の支給日もそうで有る。未だ結婚も為て居無いのに給料はチャント確り取るので有る。金曜日の晩丈何やら特別で。「愛しているわよ」と言って後ろから抱すくめて体を摺り寄せるので有った。何やら催促の様うで有った。私が風呂に入って居ると入って来て、生娘の様に業とらしく恥ずかしがるので有る。猫が中に入りたがったら、前を隠すのも忘れて大童。目の遣り場に困る事態と成る。咽喉が渇居て居る丈なのに、嫌がる猫を無理矢理洗って仕舞うので有った。洗って居る内に童に戻って仕舞い、前を隠すのも忘れて、足の指で鼻を撮むわ、照る照る坊主を作って遊ぶは、水鉄砲で遊ぶはで有った。秋の夜長私が書斎の心算の自室で本を読んで居る頃には愚妻は台所の片付けを済ませ、明日の朝の御米を洗い準備を済ませる。小用を催すと何を思ってか態々書斎迄遣って来て、前を抑え乍モジモジして。
「御不浄を拝借出来ます」未だ籍が入って居無いのをで当て付けがましく言うので有る。何やら卑猥でも有る。私の居無い時は勝手気儘に為て居るのにで有る。
「貴方も御一緒為ません」余程連れ尿が好きな様で有る。放き乍人生訓を垂れるので有った。
休日に小用を済ませて帰って来ると、愚妻の奇行に出会う事が有る。座敷にへたり込んで前を押さえ家鴨の様に御尻を振って居るので有る。具合が悪いのかと聞くと、小用に行きたいが立ち上がると漏れて仕舞うと言うので有る。呆れた話で有る。

 当地に木枯らし二番が吹く頃に成るともう歳の瀬で有る。大掃除や餅搗きや、御節料理で愚妻も便所に行く間も惜しんで大忙し有った。餅搗きは夫婦の和合の共同仕事でも有る。杵は男根の象徴でも有る、臼は女陰の象徴でも有る。上手な捏ね手なら餅も底にくっつか無い。餅は餅屋と言う諺も有る。小餅は素人にも作れるが見事な鏡餅は可也の技術が居る。元旦には愚妻と近くの佐太天満宮に初詣に出掛けるのが恒例に成って居た。参拝を済ませてから屠蘇で祝い、雑煮を戴くので有った。雑煮は関西風に丸餅を使い、餅は焼か無い、最後に味噌で味を調える。精進風で鶏肉や海老等は普通は入れ無い。白板昆布や油揚げを入れると美味しく成るが其の家の伝承も有る。祝い事用に元旦しか炊か無い美味しさを期待為無い不思議な料理でも有る。金時人参や細い大根も丸い儘切るのが関西風で有る。泥芋(里芋)も丸の儘で、慈姑も芽を取らずで有る。全て丸く納まる様にと願いを掛けての事でも有る。

 人は何故か極寒の真冬や激暑の真夏より気候の良い春口や秋口に亡く成る人が多い、寒さ暑さの地獄を乗り越えてホットして気が緩む時が危ないので有る。愚妻の不倫の浮気の相手が亡く成った。底冷えのする真冬の日曜日で有った。時折小雪が舞う生憎の日和で有った。愚妻は読経の最中に小用を催し難儀な事に、焼香丈でも済ませて帰ろうと我慢をして居った。人生の不可解に喪服未亡人の魅力が有る。叶わぬ人妻への想いの反動か。愚妻は何時もの様に家に帰る成り、草履を揃える余裕も無しに便所に小走りで駆け込んだが便所の前ま来て気が緩んで仕舞ったのか又御粗相を為て仕舞った。余りの恥ずかしさに放心気味で有った。愚妻の失態の痴態を見て仕舞った私迄可笑しく成って仕舞い、又野獣の様に愚妻を辱めて仕舞った。割れ鍋に綴じ蓋で有った。綴じ蓋とは修理した蓋の事で有る。男と女の関係は不可思議でも有る。
 或る朝、目が覚めたら夢現で愚妻の御乳を触って仕舞って居る自分に気が付居た。
「此れ、何時迄わての御乳を触ったら気が済むのじゃ、貴方はやや子か、尿の我慢が出来ぬで無いか」叱られてしもうた。

 或る朝、目が覚めたら夢現で愚妻の御尻を触って仕舞って居る自分に気が付いた。
「此れ、何時迄わての御尻を撫でる事にかまけて居るのじゃ、おならをかましても良いのんか、我慢が出来ぬで無い、貴方は痴漢か、此の大阪に女性専用列車が必要なのも道理じゃのう、世界に恥晒しじゃ」」又、叱られてしもうた

 或る朝、目が覚めたら夢現で愚妻の股間を弄って仕舞って居る自分に気が付いた。
「此れ、何時迄わてのおそそを弄ったら気が済むのじゃ、尿をしびって仕舞っても構わぬのか、尿の我慢が出来ぬで無いか、貴方は変態か」又、叱られてしまった。

 或る日、愚妻に足蹴に為れて目が覚めた、愚妻は怒って便所に駆け込んだ。二人向き合って朝食を摂り乍、散々に叱られて仕舞った。
「今度、あんな悪さうを為ょったら、しっこを顔に引っ掛けて遣るよって覚悟為や」酷い事を言うので有った。

 或る朝、愚妻が寝間で御粗相をして仕舞い、蒲団の大きな世界地図を描いて仕舞った。遺尿症(夜尿症)では無い。愚妻を叱り付けると。
「貴方が夢現で変な事を為るからや」と言うて悪びれず、何やら嬉しそうで有った。夢現で恥ずかしい事をして仕舞って居ったので有る。

 暫くして愚妻が身篭った。約束通り籍を入れる羽目に成った。やがて愚妻はやや子を産み落とし。或る吉日に近くの佐太天満宮に御宮参りに出かけた。地味な着物を着ると孫に間違われると言ったが、一向に気に為る様子も無かった。何やら自慢げでも有った。母者に年齢は無いので有る。心配する程の事も無かったので有る。



            (一美は架空の女性で、実在の愚妻の事では無い)


           2008−05−26−331−02−01−OSAKA



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