鹿脅し

 着物と言う名の着物が有る。和服の衣服の事で有る。和服は洋服と違って畳んで箪笥に重ねて収納出来る便利が有る。解いて洗い張りも出来る。体形が変わって仕舞っても着れる融通が有る。晴れ着の振袖は特別に袖が長いが、袖が邪魔な時は襷掛けも有る。着物を汚さ無い様に割烹着等も有った。湿潤多雨の風土の東洋人には着物は通気性も良く最適でも有った。仕事を為るには作業性は洋服に劣る、便所で用を足すのが大変でも有る。しかし、着物を召すした御婦人の色香は洋服の比では無い。時子は遠縁の女で出戻りで有った。平助の母の華枝が時計を合わせようと脚立に載た時に、足を滑らせて落ち腰を打って寝込んで仕舞った。寝小便を垂れて仕舞い離縁されて仕舞ったので有る。人に言え無い因果な遺尿症を病んで居ったので有る。華枝は時子に介護に来て貰い事無きを得た。時子は着物の良く似合う女で有った。泊り込みで介護をして居る内に嫁成った様な変な気に成って仕舞ったので有る。結婚も為て居無いのに遣りたい放題為て仕舞った。幼馴染を良い事に世帯を自分の物に為て仕舞い。平助は煙草銭にも事欠く始末で有った。嫁御は処女をと決めてた平助には不本位な女で有った。羞恥心が無く成って仕舞ったのか。一緒に風呂に入り、一つ蒲団で寝る珍奇が有った。華枝も時子が格別に気に入り、平助の嫁にと勝手に決めて仕舞い。平助の気持ちを無視し時子は其の心算に成って仕舞った。

「寝小便位我慢せー」華枝は平助に言い聞かせる毎日で有った。

 添水とは農業等に被害を与える鳥獣を威嚇し追い払う為に、水で動き大きな音を発てる鹿脅しの事で有る。奈良には鹿を殺し石子詰めの刑に有った三作の悲しい物語も有る。天下の悪法の生類憐れみの令の頃はさぞかし煩かった事で有ろう。谷川の水を引いて来て動かす為に御金が掛から無い。鹿脅しの音等屁とも思わぬ裏の泥棒猫が時々遣って来ては座敷の上を王者の如くに悠然と闊歩し、腹を上にして昼寝を決め込んだりで有る。平助が座敷で昼寝をして居ると何処からか遣って来て片足を載せて催促で有る。
「わても昼寝しようと」時子も座布団を二つ折にして並んで昼寝を始めた。
「此れ、ミー子、こっちにおいで」他所の三毛の雌猫なのに勝手に名前を付けて仕舞って居った。猫も猫で呼ばれて腹を乗り換えた。
「あんたも阿呆やね、お寝小為た位で離縁する男も阿呆やけど、傍に好い女が寝てても何も為んあんたも阿呆やね、勿体無い話や」「あんたも変わって居るね、男は皆女の御尻は触りたがるし、御乳は揉みたがるし、裸は見たがるのに、あんたは催したりせんのんか、不能か」
「お母はんはどこへ行った」「腰痛が治ったのは良いが、前より元気に成って遊び呆けて居るえ、あの歳で有馬に温泉へ出かけたえ」
「暢気なものや」
「わてを嫁と今だに勘違い為て居るえ」
「あんた、覚えて居るか、此の前私の御手水を覗いたやろ、わて恥ずかしくて顔から火が出たわ」
「便所の鍵も掛けぬ御前が悪い」「寝小便垂れの女房に変態亭主か、割れ鍋に綴じ蓋か」
「わて、催して来てしもうたわ、あんたの想いを叶えてあげる、付いていらしゃい」
「させてあげる」「なんて恥ずかしい事を女子が口に為るか」時子は前えお押さえ乍童の様に甘えた。

 小用を催した姑が小走りで帰って来て便所に駆け込もうとした。
「二人で憚りで何をして居るのじゃ」「お母はん御手水が詰まった丈よ」言い訳上手の時子。

「お母はん、時計が狂って居ても、脚立に載って合わさんといて居て下さいよ、今度落ちたら一生寝込む事に成りますえ」「本に、又何時か夏時間に成ったら困った事じゃのう」「本に余計な事を」「お母はんの子供の頃はサマータイム遣ってンやろ、何で已めてしもたん」
 二人の夫婦ごっこは相変わらず続居た。裏の泥棒猫が時子にの足に纏わり着き甘えた。熱帯夜の夏の夜も裏に帰るのを忘れ、枕元にっ来て寝床に入りたがった。                     
 人形浄瑠璃の文楽の切符を華枝の実家から戴いた。三人で出かける事に成った。
「時子、御茶は我慢せ、嫁が御不浄通い為て居たら愛想を尽かされるえ」
貰った以上行か無い訳にも行かず。出しものは余りにも有名な「菅原伝授手習鑑」で有った。鑑とは手本の事で有る。
「時子、御不浄は済ませたか」「さっき御手水に」矢鱈便所を気に為る姑の華枝。
「なあ、あんた、佐太村って、佐太天満宮の在るあの佐太の事か」
 文楽や歌舞伎の物語に実在の地名が登場するのも珍しい。道真の領地の佐太村の忠臣、白太夫と其の子の末王、梅王、桜丸三兄弟の物語で有る。実際に白太夫を祀って有る社が在る。最近では道真は学問の神と崇められ、受験の前には多くの学生で賑わう。

 大阪には夏の七月の末の一番暑い時に日本三大祭りの天満の天神祭りが始まる。八月に成ると朝晩は大分凌ぎ易く成る。時期を同じうして佐太天満宮も夏祭りが始まる。昔は太鼓の山車を担いで村中を練り廻ったもので有った。神輿も太鼓の合図で境内を進んだり戻ったり揺さ振ったりで暴れ廻ったもので有る。最近は担ぎ手の若者が少なく成り、子供神輿に変わって仕舞った。

 裏の住人が三毛が帰って来無いのに気を悪くし、シャム猫を番で買って来て飼い出した。子を産まして稼ぐ心算らしい。三毛の帰る所が無く成って仕舞ったので有る。女性は一旦嫁いで仕舞うと二度とは実家に戻り辛いところが有る。
「あんた、猫の何処を覗き込んで居るねんや」「雌猫か」
「男は如何しようもないのう、猫のあそこ迄見たがるか」時子は嫌味を言うた。

「あ、未だ入って居ったのか」時子が上がたものと思って湯殿に入って行ったら未時子が未だ入って居った。
「あんな事を為て置き乍他人行儀な」平助はソソクサと掛かり湯を済ませて湯船に入った。猫が何処からか遣って来て湯殿の中に入りたがった。
「御前も御風呂に入りたいのんか」嫌がる猫を捕まえて無理矢理桶に突っ込んで洗い出した。前を隠すのも忘れて大童で有った。
「あんた、何処を見詰めて居るねんや、そんなに見詰めたら恥ずかしいでは無いか」
「咽喉が渇いて居る丈じゃろが」
 平助は時子の裸を見て居る内に、盛が憑いて仕舞い、遺精を為て仕舞いそうに成り矢庭に時子を四つ這いに為て後ろから野獣の如くに犯して仕舞った。
「あんた、何為るのんえ、猫が見て居るでないか」二人は夫婦に成って仕舞った。


 時子は文楽の切符を貰った御返しに法事の序に御萩を作って華枝の実家に持って行く心算で御萩を作り出した。季節に由って名前が変わる言葉の珍奇が有る。春の牡丹餅に秋の御萩で有る。小豆は冬を越すと硬く成り、春の牡丹餅は漉し餡が普通で有った。秋は小豆も採り立てで柔らかく粒餡も作れる。勿論漉し餡も作られる。テレビ放送の再放送、録画作品の放映時に不都合が発生する懼れも有る。漉し餡を牡丹餅、粒餡を御萩と決めれば良いものを、粒餡は萩の花のイメージでも有る。漉し餡は牡丹の花にも見える。辞書の語意を替えるは百年掛かる至難の業でも有る。菓子業界が取り決めれば実現の可能性も有るが。
「あんた、洟が落ちそう、擤んで」時子の下品な事と言ったら、御萩を作り乍甘えた。未だ結婚も為て居無いのに、主人の前で屁を放くわ、朝顔で立ち尿は放くわ、便所の扉は開けた儘放くわで有った。御風呂では童に戻って仕舞い照る照る坊主を作ってあそぶわ、水鉄砲で遊ぶわで有った。猫が足に纏わり着き甘えた。

 女房の時子の下品さは相変わらずで有った。
「あんた、何処へ行くねんや」「一寸、小便」「わても為たく成った」
「なあ、あんた、何で金木犀の匂いは極楽浄土の匂いが為るの、誰も行って帰って来た人は居無いのに」「便所の脱臭剤の臭いの事か」「あんたってロマンを感じ無い人やわね」慎み無く派手に放き乍言った。屁まで垂れてしまう有様で有った。

「好い物を見せてあげる」と言ってはスカートを翻し、平助の顔を跨ぐ有様で有った。
「アクメは接吻で得られるのんで有ろうか。接吻させてあげる」
「日本男子はそんな恥ずかしい事は真でもせん」
「そやわね、汚いわね、しっこちびって仕舞った如何しょ、わて恥ずかし」時子は前掛けで顔を覆うて便所に駆け込んだ。其れを陰で盗み聞き為て居た華枝は唖然と為て仕舞った。

 或る秋の日の朝、尿意を催して便所に立とうとした時子に平助は盛りが付いた野獣の様に変な事を始めて仕舞った。
「今はあかん」二人は激しく愛し合い。時子は派手に寝小便を垂れて仕舞い困った事に。コッソリ蒲団を干して居ると華枝に見付かって仕舞った。
「時子、寝小便垂れ為て仕舞ったんか、何と言う尻癖の悪い女子じゃ、離縁されたのも無理は無いのう」「あんたの息子の平助が変な事為るからや」「何と言う減らず口をたたくか」時子は御尻を叩かれてしまった。やがてやや子を身篭り、遺尿症ピタッと治りやがて可愛い女の子を産み落とした。夏に生まれたので夏子と名付けた。やがて乳離れも済んだ或る日。又、やや子が欲しく成って。平助の足を足で突いて甘えた。
 或る春日の朝、尿意を催して便所に立とうとした時子に平助は盛りが付いた野獣の様に変な事を始めて仕舞った。
「今はあかん」二人は激しく愛し合い。時子は派手に寝小便を垂れて仕舞い困った事に。コッソリ蒲団を干して居ると華枝に見付かって仕舞った。
「時子、又、寝小便たれ為て仕舞ったんか、何と言う尻癖の悪い女子じゃ、離縁されたのも無理は無いのう」「あんたの息子の平助が変な事為るからや」「何と言う減らず口をたたくか」時子は御尻を又叩かれてしまった。やがてやや子を身篭り、遺尿症ピタッと治りやがて可愛い女の子を産み落とした。冬に生まれたので冬子と名付けた。やがて乳離れも済んだ或る日。又、やや子が欲しく成って。平助の足を足で突いて甘えた。
 或る夏の日の朝、尿意を催して便所に立とうとした時子に平助は盛りが付いた野獣の様に変な事を始めて仕舞った。
「今はあかん」二人は激しく愛し合い。時子は派手に寝小便を垂れて仕舞い困った事に。コッソリ蒲団を干して居ると華枝に見付かって仕舞った。
「時子、又又寝小便たれ為て仕舞ったんか、何と言う尻癖の悪い女子じゃ、離縁されたのも無理は無いのう」「あんたの息子の平助が変な事為るからや」「何と言う減らず口をたたくか」時子は御尻を又又叩かれてしまった。やがてやや子を身篭り、遺尿症ピタッと治りやがて可愛い女の子を産み落とした。春に生まれたので春こと名付けた。やがて乳離れも済んだ或る日。又、やや子が欲しく成って。平助の足を足で突いて甘えた。
 或る冬の日の朝、尿意を催して便所に立とうとした時子に平助は盛りが付いた野獣の様に変な事を始めて仕舞った。
「今はあかん」二人は激しく愛し合い。時子は派手に寝小便を垂れて仕舞い困った事に。コッソリ蒲団を干して居ると華枝に見付かって仕舞った。
「時子、又又寝小便たれ為て仕舞ったんか、何と言う尻癖の悪い女子じゃ、離縁されたのも無理は無いのう」「あんたの息子の平助が変な事為るからや」「何と言う減らず口をたたくか」華枝は時子に愛想が尽きたのか御尻を叩く元気も無く成った。やがてやや子を身篭り、遺尿症ピタッと治りやがて可愛い男の子を産み落とした。寝小便の恥ずかしい噂は世間に知れて仕舞ったが、時子はきにもせずで有った。近くの佐太天満宮に宮参りに出かけた。なにやら自慢げでも有った。

 或る日、四人の母に成ったのに今だ結婚もして居無い事に気が付いた、ふしだら話で有る。天満宮で身内丈の簡単な子連れの結婚式を挙げ事に成った。平服の儘の珍奇が有った。
「時子、御不浄は済ませたか」相変わらずの姑で有った。

 最近時子は口の締まりが無く成ったのか、文句百垂れ言い出した。何か良い夢を見てか涎を垂れて枕を濡らす有様で有った。四人の子供の育児に負われて母者は便所に行く間も無いのか、我慢出来無く成るまで前を押さえ乍モジモジと淫らな。四人も子を産み乍、未だやや子が欲しいのか淫らな事をして平助を挑発して楽しんで居ったので有る。

 時子を悩ませる憂鬱は時計を1時間調整する為に脚立から落ちて怪我する懼れの有るサマータイム丈では無い。此の大阪には痴漢が多い事を世界に曝け出して居る恥晒しの女性専用列車や、刑法を読んだ事も無い素人を半強制的に参加させる憂鬱な裁判員制度も有る。資格試験を設ければ問題は皆無で有るのにで有る。誰もが嫌がる徴兵制度の再施行の為の布石の一つの心算か。台所を火の車に為る消費税率の引き上げが又又有りそうでも有る。家計に与える影響を無視し、数値さえ変えれば全てが解決為ると思い込んでしまう政治家の愚かが有る。消費税込みの価格表示を義務付けられ、国民は消費税を計算して支払う煩わしさから開放され騙されて仕舞って居る。重税の為の国民の疲弊も有る。最早戦後では無いと放言し、世界に誇れる平和憲法の日本国憲法の改悪の目論見も有る。国の為に命を捧げる若者を育てる為に教育基本法も替えられて行く。政府が進める定年延長は聞こえが良いが実際は嘱託としての再雇用で有る。給料が下がるが仕事が楽な仕事に回れる訳では無い。企業は低賃金で以前と同じ収益を上げる事が出来る。定年間近い人を配転さす企業の無慈悲も有る。人件費の削減で慢性的人手不足が現場には有る。順番に止めての自転車操業で有る。インターネット上の犯罪も多い、無く成ら無い悪質なウイルスや大手検索サイトにもリストに上がっているサイトのワンクリック詐欺や架空請求や迷惑電子メール等数多でも有る。制度に年齢を定め高齢者を見捨てる制度が罷り通って居る。死に行く高齢者を見捨て、若者の人気を得た方が選挙に有利の為でも有る。後期高齢者医療制度も其の一つで有る。戦後の復興に全力を尽くして来た高齢者への恩が感じられ無い。町全体を消滅させた忌まわしい記憶の憂鬱な原爆忌が八月には二度も訪れる。此の世の地獄の日を記念日に為る珍奇が有る。天女の様な心の娘が誘拐され犯され殺された。鬼畜的な重犯罪で有る。犯人が死刑に成っても殺された娘の無念の想いは癒える事が無い。遺族の無念の想いを逆撫で為るかの如くに死刑廃止論を言い出す弁護士や政治家も多い。人道主義を強調して選挙の票を集める狙いが有るのか。死刑を望む犯人に死刑を言い渡すしか術の無い愚かが有る。
・・・

 口に締まりの無い時子の愚かな愚痴が又始まった。何代目かの黒猫は平助の腹の上で昼寝中で有った。平助も相変わらずで有った。天下泰平で有った。







          2008−07−22−343−03−01−OSAKA



                     HOME
                  −−戻る 次へ++