接吻

 一寸前迄夏で有ったのにもう紅葉が一部に見られる季節は廻って居るので有る。やがて木々の葉は紅葉しやがて落葉する。見事に紅葉して居た葉っぱも地に落ちると茶色に変色して仕舞い人々を失望させる。濡れ落ち葉は厄介な物でも有る。見事な紅葉した葉っぱを本の栞代わりに本には挿んで置いて、後日に茶色に変色した葉っぱをみて狐に化かされた様な気に成る人も多い。植物標本は学術的には貴重な資料では有るが失色が激しい。写真の無かった昔の見事な植物の図が有る。画家が芸術的に画いた物では無い。植物学者が精確に資料と為て写し取ったので有る。色も褪せて居無い。落ち葉もやがて分解され大地に戻る自然界の輪廻でも有る。
 有れ程煩く鳴いて居た蝉も鳴き已み、寒蝉が鳴き出すと夏も終る。秋の虫が鳴き出し野生動物の中には寒い冬の到来の前に準備を始める。栗鼠の中には木の実をセッセと貯える時期でも有る。冬眠に備えて太る時期でも有る。動物にやがて寒い冬が遣って来る事が判るのも不思議で有る。判ら無くても獣の身体は冬毛に生え変わる。
 十月一日は衣替えで有る。学生はワイシャツの上に黒い学生服を着る。半袖の夏服から長袖の冬服に衣替えする企業も有る。半期が終る時期でも有る。学校では運動会や遠足の行事も有る。秋は収穫の時期でも有る、美味しい果物や茸や木の実が収穫出来る。柿の実が夕暮れの日輪の様な鮮やか赤に色付くころはもう秋真っ盛りで有る。干し柿の為の柿の収穫も始まる。小鳥の為に全部は取って仕舞わ無いのが慣わしでも有る。五穀豊穣を祝って秋祭りも始まる。柘榴は手榴弾の名の由来にも成って居る物騒な印象の果実では有るが、自ら実を破裂させて赤い小粒の実を小鳥に提供為て居る。豊穣の象徴では有るが、エロチックな連想もそそる。猥褻でも有る。
 犬は良く飼い主の顔を舐めるが如何やら愛情の表現では無い様で有る。汗の塩分を舐めて居るので有ろう。犬畜生も吾が子には体を舐め廻し清め、母性本能の強さは人も及ば無い。猫の舌は鮫の皮の様で舐められて気持ちの良いものでは無い。子猫の間は餌と人の指を間違えるのか咬まれて痛い時が有る。其の後は指を動かすとジャレて遊ぶが間違って噛み付く事は決して無い。
 日本では昔から人前で接吻するは恥ずべき事と思い。巷で見かける事は皆無で有った。西洋でも一寸昔迄は人目を気にして居たので有る。昔の映画等に出て来る。現代は西洋の影響を受け巷でも見掛けたりも為る、映画やテレビドラマでも登場為るが其処にカメラが有れば誰も為無いだろうで有ろうから、何故か不自然でも有る。接吻や口づけと言う言葉自体が余り使われ無く成った、カタカナ表記の外来語のキスが主流で有る。今では接吻や口づけは死語に近い。
 独逸映画「朝名な夕なに」の中で美人の女教師が授業中に聖書の一節を出来の悪い生徒に読ませるシーンが登場する「驚くべき答えを成す者に接吻あれ」で有る。正解を期待する自分の愚かを覚えて生徒をからかうシーンで有る。教師への許されぬ愛は何時の時代の芸術のテーマでも有る。独逸映画「制服の処女」で女生徒と女教師との許されざる愛が描かれて居るが同性愛と観るのは間違いで有る。母親の代用でも有る。
 回教徒にとって聖地メッカへの巡礼は生涯の内で重要な通過儀式でも有る。多くの信徒が巡礼で訪れる、聖地メッカには聖なる石が安置されて居る。回教徒はアラーの神に祈りを捧げ聖なる石に接吻する。軟らかい人の唇が触れる丈なのに其の石が磨滅して凹んで仕舞って居るので有る。落語の寿限無の五劫の擦り切れが思い起される、水滴が岩を穿つ原理でも有る。
 西洋では手に接吻したり挨拶の一部に成って居る。日本人には理解し難い部分でも有る。知り合いなら兎も角赤の他人でもで有る。外国旅行では外国の事でも有る余り気には成ら無いが、日本で巷で見掛けると不道徳の感は禁じ得無い。夜の事を連想して仕舞う為でも有る。下品な連想でも有るが。妊婦に変な連想をするのと同じでも有る。
 欧米で大事な試合の前に神の御加護を願い接吻を贈る仕種を為る事が多いが、日本人は手を合わせて祈るに似て居るが西洋の人でも希う時は手を合わせる時が有る。仏教やキリスト教には偶像崇拝が有るが回教はコーランの経典が全てで有る。
 太陽には男性のイメージが有り、月には女性のイメージが有る。太陽の傾き、月の満ち欠け、潮の満ち引き等農業や漁業に大きな影響が有った為でも有る。潮の満ち引きが御産に影響して居ると言う人も居る夕日は死のイメージが有る。やがて闇夜が訪れる為でも有る。人は死ぬと大地に帰る言われる。昔は土葬も多かった為でも有る。母なる大地で有る。多くの作物が大地に稔る。法王が初めて訪れる地に立った時神に感謝して大地に接吻するは驚きを持って報道される。威厳の頂点に位置する法王が大地に跪いて接吻為る為でも有る。メキシコオリンピックで走り幅跳びの選手が驚愕の記録が出た為に神に感謝して母成る大地に接吻為たのが印象的で有った。オリンピックで勝ち取った金メダルに接吻を贈るは今でも良く目に為る事では有るが。
 子供を授かる喜びで胸を震わせ性の法悦の表情を浮かべ男子の前に女体を曝け出す女性が居る。男子は新な命を授かる喜びを神に感謝して女体に接吻を贈る。アダルトビデオの虚構の世界の話で有る。生きとし生きる者の性の性でも有る。









          2008−10−14−375−01−02−OSAKA



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