夏の嵐

 日本は台風の多い国でも在る。世界の地域によって台風は呼び名が違います。アメリカのハリケーン、インドのサイクロン、オーストラリアのウィリー・ウィリー等で有る。日本では秋の来襲が多いが時には梅雨時に遣って来る場合も有る。梅雨と重なって大雨に成る場合も有る。
 或る日、超大型の台風の直撃を受けた。弟と二人暮らしの女は、停電に成り蝋燭の光で台風が過ぎ去るのを待って居ってが。裏の公園の合歓の樹の巨木が長雨と年老いて朽ちて居た為か暴風の為根こそぎ倒れ女の家が半分壊れてしまい大変な事に。弟は嵐の中を命からがら自力で向かいの男の家に助けをもとめた 女は気を失って居たが怪我は大した程では無かった。男は二人を自宅に避難させたので有る。
 二人は幼な馴染みで在ったが、最近は顔を遇わせると喧嘩ばかりして居ったので有った。子供の頃は二人は仲良しで在った。男子が合歓樹の下で立ち小便をしだすと女子は透かさず傍にに遣って来ては「うちもしようと」と言ってはしゃがんで用を足してしまうので有った。しながら。
「あんた、大きく成ったら夫婦に成って上げるよってに楽しみにしときな」と何時も言うのであった。
 祖母が縁談を持って来て居て、女を着替えさせて呉れた。男は女の寝顔を見て居る内に何やら愛しく成ってしまった。「何時もはあんなに憎たらしい口を聞くのに、如何して寝顔はこんなに可愛いんだ」
祖母は男を部屋の外へ追い出してまった。
 嵐が治まったと思ったら、今度は大水で有る。水防団と消防団の隊員が避難を触れて廻った。女も毛布を羽織り男に介添えられ乍、堤防の上に逃げたので有る。向こう岸が見え無い程の大水で有った。堤防の上から手が届く所迄水は来て居たので有る。「堤防が切れたら如何しょう」「向こう岸の方が低いから大丈夫よ」「何で向こう岸が低いのん」何時もは大河の主の大鯉も大水の時は形無しで有る。岸の流れの弱い所に集まって来るので有った。此んな時にも網で掬い捕る不届き者も居ったので有る。雨も止み、満潮時も過ぎ、大河の水の泡も減って来て。やがて水も引き出し人々は安堵したので有った。
 朝に成って夏の嵐が嘘の様に空が晴れ渡り。自分の家を見た女は唖然としてしまった。倒れる筈の無い筈の合歓の巨木が根こそぎ倒れてしまって居たので有る。とんでも無い暴風で有った。やがて野次馬も集まって来て大騒ぎに成ってしまった。市の職員も処理に困り果てて、如何やら伐って仕舞うらしい。
 住民達の合歓の樹の救出作戦が繰り広げられた。小学校で綱引き用の大綱を借りて人力で巨木を起こす積もりらしい。中型のシャベルカーと人力の起重機の協力でやっと合歓の樹は起きたので有る。人々は久しぶりに歓喜を味わったので有った。
 女は恥ずかしいそうにモジモジしながら男の傍へ遣って来ては。
「命を助けて頂いた上、更に厚かましい事を御願いするのは心苦しいんですけど、家の便所が壊れてしまって使え無いのでもう少しの間此処において下さいまし、あ、もう駄目、チビル・・・」女は便所に駆け込んだ。
 或る日又、 女は恥ずかしそうにモジモジしながら又男の傍に遣って来ては。
「命を助けて頂いた上、更に厚かましい事を御願いするのは心苦しいんですけど、家の便所が壊れてしまて修理費に御金を使ってしまい、生理用品を買うのにも事欠く始末、何とかしてくださいまし」男に御金を貰って嬉しく成り抱き付いて居たら。「あ、もう駄目、チビル・・・」又、女は便所に駆け込んだ。
 一週間が経ち、女はもう夫婦に成った様な気に成ってしまって居った。
「何処へ行くの」「一寸便所に」「うちもしようと」一緒にしたがるので有った。
「なあ、あんたもう序でに夫婦に成って仕舞わへん、うちやや子が欲しく成って仕舞うたわ」女はスカートをたくし上げた儘出て来てしもうて。「なあ、うちを抱かして上げるよって」「抱いても良いのか」男は女をお抱きすくめてしもうた。「あんた、何か勘違いしてへん」「此んな所で何してんの」弟に見つかってしもうた。
「健太、おしっこして小父ちゃんに御風呂入れて貰い」「あんた、頼むし」もう女房に成った気で居った「うちも入ろと」と言っては入ってしまうので有った。前を隠す気等更々無いので有った。
 目のやり場に困り、烏の行水の男。
 祖母が又縁談話を持って遣って来てしもうた。長湯をしすぎて湯あたりの女はバスタオルを腰に巻き付けた丈で出てきて仕舞い祖母と鉢合わせてしまった。
「未だあの女が居るのか」「向かいの家が半壊して仕舞って家に避難して居る丈じゃが」
「良からぬ噂はやはり本当で有ったか。弟の面倒を見て居るらしいが、自分の子じゃないかと言う人も居る」「幼な馴染みじゃけん、追い出す分けにもいかんじゃろが」「惚れて居るのか」「人道上の問題じゃけん」「其れにしても、厚かましい女子じゃのう」「もう女房に成った積もりで居る様じゃが」
 或る日の午後、男は女げ愛しく成ってしまい、モジモジして居る女を抱すくめてしまい事も有ろうに、接吻をしてしまった。女は接吻されたショックの余り尿垂れをしてして仕舞ったから大変な事に。余りの恥ずかしさの余り放心状態の女を男は欲情が抑えられ無く成り、犯してしまったので有る。
「姉ちゃんたら小便垂れなんかしてしもうて」弟が其の始末をさせられてぼやいて居る最中に、運悪く祖母が又又縁談を持って押しかけて来てしまい。「此んな所で何をして居る。小便垂れして仕舞うたんか」「僕と違うがな姉ちゃんやがな」「其方に愚痴を零しても仕方が無いが、姉御は盛りでも憑いて仕舞って居るのか」「かもね」「其方とは歳が離れ過ぎて居るが本当意は母御ではないのか」「かもね」「姉御は何処じゃ、今何をして居る」「呆れた果てた者達じゃ、真昼間から盛り居るか。今日は京の呉服屋の娘の良き縁談を持って来たが、其れは其れは美人の上品な娘御で有ったがのう。盛りの憑いた、尿垂れをする様な女の方が良いかのう」祖母は愛想を尽かして帰ってしまった。
 或る日の朝、女は寝呆けて「健太、何時まで姉ちゃんのお乳を触って居るのじゃ」「僕と違うがな、小父ちゃんやがな」
「何や、あんたか、他にする事が有るだろうに」「お京ちゃんは腋毛は剃らぬのか」「何の為のに、四郎ちゃんたら、変な事に興味が有るのんね」女は安心しきって又寝てしまうので有った。
「最近、姉ちゃんたら太って来たん違うか、御腹も出て来たし。オレンジの食べ過ぎと違うか」
 祖母が祖父と揃って、又又縁談を持って遣って来てしもうた。妻でも無い女が何時まで居ると間違いが起き兼ねないと、世間体も悪いと、家の修復の御金だと言っては、手切れ金を持って。女は嫌じゃ嫌じゃと駄々を捏ねて居ったが、突然吐いてしまった。如何やらやや子が出来てしまったらしい。
「其方身篭って居るのか」
「此の御金は受け取る分けには・・・」「其れは家の修繕費だと言って居るではないか・・・」
「四郎、妻でも無い女を何時迄も此処に置く分けには行かぬ、世間体も悪い、早く式を挙げる様に」
男は叱られてしもうたので有った。やがて二人は真の夫婦と成り、京子は女の子をを産み落とした。
 女は子供の頃言った約束事をやっと果たしたので有る。


              2006−01−15−90−OSAKA



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